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多重世界の旅人  作者: りゅう
創造者の世界編
96/128

96 タイムシフト分離1

 ここで、ホワンが休憩を入れた。

 驚くべき話の連続だったからだ。じっくり考える必要がある。ちょうどいいので食事を取ることにした。メディカルチェックを通っているので、彼らも俺たちと一緒で問題ないことは分かっている。


「この多重世界の狭間で、ああ『無限回廊』ですか。ここで、このような食事が出来るとは思いませんでした!」


 神海意次は、並べられた料理を前に言った。この人、こんなに明るい表情をするんだなと思った。


「いや、この白球システムあってのことですよ」とホワン。

「でも、この料理は素晴らしいです」これは、神海希美だ。


 世界ゼロの一流シェフによるものだからな。ホワンは胸を張る。まぁでもホワンが作った訳ではない。

 ほかのメンバーも満足してくれたようだ。食事の後はコーヒーと紅茶を振舞ったが、夢野妖子という共感エージェントが痛く感激していた。


  *  *  *


 食事の後も神海一族との会合は続いた。

 そして、いよいよ世界の分離現象を引き起こした『創造者の世界』のいきさつが語られたのだった。


「タイムシフト分離ですか!」


 神海一族の研究者、今宮信二の説明にホワンは思わず口を挟んでいた。

 今宮は、現在の『創造者の世界』が『タイムシフト分離』している状態だと説明したのだ。


「はい。聞いたことのない言葉だと思います。我々も最近古文書で知りました」


 今宮がそう言うと、他の神海一族の面々も頷いていた。


「ですが、この『タイムシフト分離』を知るにあたっては、その前にまず『共感能力』を知ってもらう必要があります。何故なら『タイムシフト分離』は『共感能力』の派生技術だからです」と今宮信二は続けた。派生技術?

 

「そもそも、『共感能力』は白球システムのために作られた技術です。この『共感能力』には、『共感転移』と『共感遷移』という二つの大きく異なった能力で出来ています」


 ここで、今宮は言葉を切った。


「まず一つ目の『共感転移』は、皆さんも知っている転移能力のことです」

「私たちは白球システムとリンクして、頭の中で考えるだけで別の世界へ転移することが出来ます。これこそが『共感能力』本来の力であると言えます」


「凄い」思わず、ホワンが言葉を漏らした。


「そして、もう一つの能力の『共感遷移』ですが、これは転移とは直接関係のない能力です。付随的に発見された特殊な現象だったのです」今宮は続けた。


 俺は、そういう話ってよく聞くよなと思いつつ聞いていた。


「この『共感遷移』では、未来へ意識を飛ばすことが出来ます」


 ここで、今宮は言葉を切って一同を見回した。


「なっ」とホワン。

「マジか」


 この反応を予測していたように今宮は一つ頷いて続けた。


「私たち共感エージェントは、この『共感遷移』を使って未来の自分に憑依することが出来るのです」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。未来だと?」ホワンは額の皺を指で伸ばしつつ、軽く手を挙げて言った。


「はい。最長で十年後の自分に憑依することが出来ます」と今宮。


 これは、さすがに予想外の話だった。皆、呆気に取られている。今までの話でも十分驚いているが、これはさすがに次元が違う。いや、どんな次元だと言われても困るが、そう言いたくなるレベルだ。


「ほ、本当か? いや、本当なのだろうが、ちょっと予想以上の展開で頭がくらくらする」とホワン。


 確かにな。俺もだ。さすがに会議室はどよめきに包まれた。


「それはタイムリープというものでしょうか?」


 少ししてレジンが確認するように聞いた。この男は冷静だな。さすが支援隊のトップだ。調査隊のトップは頭がくらくらしてるので頑張ってほしい。


「あぁ、確かに似ていますね」


 そういって、今宮はちょっと考えて応えた。


「ですが、『共感遷移』の場合は、完全に乗っ取る訳ではありません。自分自身ですので、ちょっと憑依を許してやるといった感じですね。もう一人の自分の目を通して未来を見るようなものです」と今宮。


 それ、何でもないような顔で言われてもなぁ。


「つまりそれは、憑依される人間の意識もあるということか?」とホワン。

「そういう事です」

「ああ、なるほど。未来の自分から情報を貰う訳ですね。面白い」とレジン。


 さすがレジンだ。分かりやすい。


「はい。そういう非常に特異な現象です。ですが、さらに特異なことに、この『共感遷移』を使うと時間軸がズレるということが判明しました」と今宮。


「時間軸がズレる?」

「はい。端的に言うと、共感エージェントが未来で時間を過ごすと、少しだけ時間が短くなります。効果としては共感エージェントの寿命が延びます」


「うん?」とホワンは首を傾げる。

「未来で十時間過ごして、戻ってみると九時間しかたっていないということでしょうか?」とレジン。


 なるほど。やっぱり、この男がいると助かる。


「その通りです」と今宮。

「ふ、不思議な現象だな」とホワン。ちょっと呆けたような顔をしている。


「ただ、我々のご先祖様は、さらに特異な現象を発見しました」


「またさらに特異な現象?」とホワン。


 つばを飲み込んで聞いた。


「はい。十年以内の場合は本人のみの時間のズレで済むのですが、十年を超えた未来へ進むと、世界の時間軸がズレることが分かりました」と今宮。


 とんでもないことを言っていることは分かる。だが、ちょっと想像できない。そんな現象があると言われても、「そうですか」としか言えない。


「世界の時間軸がズレる? どうなるんだ?」とホワン。

「はい、『未来へズレる世界』と『過去へズレる世界』の二つに分離します」なんだと~っ!


 さすがのホワンも、ちょっと反応に困った顔をしている。

 未来の自分に憑依出来るという話だけで、ちょっと思考停止気味なのだ。脳が、その先に行きたくないと駄々をこねているような状態だ。まぁ、無理やり納得してその先を聞くしかないんだか。


「世界球が分離するのか?」とホワン。

「世界球については詳しくありませんが、世界の分離現象の一種だと考えています」


「で、それが何の役に立つんだ?」とホワン。


「『タイムシフト分離』をすると、浮遊恒星が通過する時に我々の星はそこに存在しなくなります」と今宮。

「なにっ? 何故だ?」とホワン。


「ああ、なるほど。未来と過去へズレるから、そのズレた時間分の銀河系内の位置がズレるんですね!」とレジン。

「そういうことです」と今宮。


 未来へズレる世界球と過去へズレる世界球に分離するだと~っ?


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