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多重世界の旅人  作者: りゅう
創造者の世界編
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88 創造者の世界

 数日後、俺たち無限回廊調査隊は、まだ使っていない白球に向かった。

 無限回廊の一時撤退が決定されたが、俺たちが撤退する前になるべく多くの監視装置を設置したいからだ。何が起こっているかは分からないが、最低限の監視を継続するためだ。


 無限回廊での移動速度は遅いので俺たちは手分けして監視装置を設置したのだが、出来たのは調査隊本部を中心にばらまくことだけだった。


「創造者がメンテナンスをしなくなったのって、いつからかしらね?」監視装置を白球に置きながらメリスが愚痴る。

「さあな。白球に聞いてみたら?」

「白球さん、最後のメンテ日はいつ?」


 すると何か良く分からない言葉がスクリーンに表示された。ただし、解読不能である。一応、こちらの言語に合わせているようだが読めていない。


「やっぱり、無理か」

「そうね。創造者のところへ連れて行ってくれればいいのに!」とメリスが言った。


 だが、それは安易に口にすべき言葉では無かった。しかし言ってしまった。

 メリスが、そう言った途端一瞬だが目の前が暗転した。

 そして、今まさに床に設置した筈の監視装置は忽然と消えていた。


「えっ?」メリスは、監視装置を置いたハズの空間を目で捜した。



  *  *  *


「いま、ここに監視装置を置いたわよね」とメリス。

「知らん。置いたのか?」

「置いたわよ。だって、ケースは空だもの」とメリス。


「今、変だったよね?」とユリ。軽い地震に気が付いたような顔だ。

「ああ、一瞬暗転したような」

「監視装置が消えたのじゃ。わらわは見ていたぞ」とツウ姫。


 確かに、白球に監視装置を設置したように見えた。だが、監視装置は消えていた。どういう事だ?


「いや、監視装置が消えたんじゃない」と防護スーツの表示を見てから俺は言った。

「そうね。存在確率が全然違う」メリスも分かったようだ。

「俺たちが転移したんだ」

「私たちが転移したの? 全員で? なぜ?」とユリ。


「まさか、私が連れて行けって言ったから?」とメリス。

「たぶんな。まさか、そんなことが出来ると思わなかったが」


「ってことは、ここって」

「創造者の世界ってことか?」


「白球のままだけど」とメリス

「じゃ、創造者の世界に近い白球なんじゃないか?」

「ホントかな?」とユリ。


「ここの存在確率は、かなり小さい数値だから多重世界銀河の最外周付近だろう。本当に創造者の世界がありそうだな」

「マジ?」

「マジなの?」


 俺は確率風を確認してみた。一応凪と言っていい数値だった。


「外は大丈夫そうだな。出てみるか?」

「そ、そうね」とメリス。

「それしか、無いわよね」とユリ。

「御用じゃ」とツウ姫。

「お先にどうぞ」とメリス。

「メリスこそ、どうぞ」

「まずは、透明化したらどうじゃ?」とツウ姫。


 ツウ姫偉い! 一番冷静だな。てか、俺たち動揺しすぎ。


 白球を透明化してみるとそこは予想通り多重世界銀河の外れらしく世界球はまばらに浮いていた。遠く、多重世界銀河の全体像が見える。扁平だが、確かに多重世界銀河と言うにふさわしいかもしれない。

 そして、一番近くにひと際赤く輝く世界球が浮いていた。


「あれかしら」とメリス。

「あれだろうな」

「やばそうね」とユリ。

「夜這いを掛けてやるのじゃ」とツウ姫。剛の者だな。ハワイ王国は無いと思うぞ。


  *  *  *


 俺たちは、恐る恐る白球を出て、近くの赤い世界球を覗いてみた。


「なんだか、ちょっと様子が変ね」とメリス。

「うん、大陸の形が地球とは全然違う」とユリ。


「ハワイ王国がないのぉ。それに、海が小さいのじゃ」とツウ姫が言った。


 確かに、海が異常に少ない。大陸ばかりだ。


「何処かに都市はないか?」

「岩ばかりだけど」

「あっ。ちょっと思い付いたことがある。白球に戻ろう」

「どういうこと?」とメリス。

「いいからいいから」


 そう言って、俺は全員を引き連れて先ほどの白球まで戻った。


  *  *  *


「なんなのよ~っ」白球に戻るとメリスは不満を言った。


 まぁ、俺も自信が無いので説明は省略した。


「さて。白球よ、一番近い世界球の名前を示せ」と言ってみた。


 すると、スクリーンが現れて何かが表示された。当然翻訳出来ない。


「この白球を作った者たちの世界の名前を示せ」


 俺がそう言うと、翻訳できないまでも同じ名前が表示された。


「これだ!」

「やっぱり!」とメリス。

「決まりね!」とユリ。

「当然やるべきじゃったな」とツウ姫。


「じゃ、白球よ、この世界の別名として『創造者の世界』と名付ける!」


 そう言うと、読めない名前の横に『創造者の世界』と表示された。


「これで区別できる」

「『創造者の世界』を認識することと、命名は別な訳ね」とメリス。

「そうだな。ついでに、ここも命名しとこう。白球よ、この白球は、『創造者の白球』と名付ける」そう言うと、肯定の表示がされた。とりあえず、これで重要な白球と世界球が特定できた。


「じゃ、次だ。白球よ、『創造者の世界』の民族は今もここにいるか?」


 答えは否定だった。


「やっぱりダメか。白球のシステムは『創造者の世界』にあるのか?」と聞いてみた。


 答えは肯定だった。


「そこにあるんだ」とメリス。

「白球システムに異常はあるか?」と聞いてみた。


 だが、なんだか良く分からない文字が表示されただけだった。


「白球のシステムがある場所を示せ」と聞いてみたが、これも同じだった。


 もしかすると権限が無いのかも知れない。そりゃ、簡単にシステムの心臓部を教えたりしないだろう。


「『創造者の世界』で最大の街は何処だ?」この質問には答えがあった。


 星が表示され、ズームして都市が表示された。


「あそこへ行って、調べるしかないわね」とメリス。

「そうだな」と俺も同意だ。

「だが、ちょっと待て。レジンたちにも知らせておこう」

「どうするの?」とメリス。

「うん? もちろん戻るよ」

「どうやって?」とメリス。


 俺は自信を持って言った。


「白球よ! 俺たちを白球U1001に転移しろ!」


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