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多重世界の旅人  作者: りゅう
無限回廊編
67/128

67 創造者の手がかり

 いよいよ無限回廊ステーションを実際に白球で試運転する日が来た。

 まずは、ちゃんと生成できるかどうかだ。


「これ、何処にいたらいいんだ?」白球に取りついてから気付くのも間抜けな話だが、白球内部にいたらじゃまだよな?

「天井に張り付いてればいいんじゃない?」メリスが暢気なことを言った。まぁ、確かに。

「何それ、俺に天井に張り付けって言ってんの?」

「うん」なんか、ひどい気がする。

「ヤモリなのじゃ」そうだよな。絶対ヤモリにはなりたくない。

「これ、外から物理生成って出来ないのかな?」

「ヤモリのほうが早いんじゃない?」メリスはヤモリをやらせたいのか?

「ちょっとやってみるか」メリスを無視して俺はトライした。


 設計図を手に持って地上の設備を思い描きながら「物理生成」と言った。


「わっ! 出来てる!」と白球を覗き込んだメリスが言った。流石にちょっとタイムラグがあった。

「凄いじゃん!」とユリ。

「やれば出来るのじゃ」はい。やれば、出来る子なんです。

「ちょっと残念」なんでだよ。


 ヤモリはともかく、とりあえず無限回廊ステーションの生成には成功した。ついでに、白球の外側からも内部に生成出来ることが分かった。かなり便利だ。

 まぁ、まだまだ白球の使い方が分かっていないってことでもある。


  *  *  *


 無限回廊ステーションが無事生成出来たので、リジンたちも呼び寄せて試運転に入った。個室なら十六名。最大三十名まで滞在できる。常駐する人数に比べて多いのは、調査隊が滞在する場合があるからだ。上下水道も完備。何処から来て何処へ行くのか不明だが機能している。


「シャワーも普通に使えるのがいいわね」


 メリスは必要も無いのに喜んでる。いや、防護スーツ着た人しか来れないんだから、シャワーこそ要らないだろ。まぁ、素肌モードにすれば汚れを一気に洗い落とせるから気持ちいいのは確かだけどな。

 で、シャワーが気持ち良くて喜んでるのかと思ったら、どうも体重計を見て喜んでたようだ。


「もう! ちょっと喜んじゃったじゃない!」とメリス。

「どうかしたの?」

「体重が少ないよ」

「よかったじゃん」

「そうだけど、いきなり減り過ぎなのよ」

「ほう」

「で、体重計の故障かと思ったら、ここの重力が小さいのよね」

「えっ? そうなの? 地上と違うのか?」

「そうなのよ。大体地上の9割程ね」

「何でだろう? 体調管理の一種?」

「さぁ?」

「病院ならあり得るかもね」とユリ。本気にしていないようだ。

「もしかすると、ここを作った人たちに関係しているのかも知れませんね?」とリジンが言った。

「どういうこと?」

「わかりませんが、重力の軽い星で育った民族の可能性があります」

「地球じゃないのか?」

「あるいは、地球の重力が小さい世界ってあるかも?」とユリ。地球誕生時に何かあったとか?

「興味深いですね」サラも興味を示した。

「こういうディフォルト設定と言うのは作った本人を如実に物語るものですからね」とビシャムが能書きを垂れる。

「ということは、ここの空気の成分が微妙に違うのもそういうことですかね?」ヨセムも興味深そうに言う。

「創造者の手がかりか」

「その通りです。詳細に分析することにしましょう」とリジンが頷いて言った。

「そうね」ユリも研究者の表情で言う。


 重力が一致する惑星を探すのか? まぁ、創造者って言っても、この無限回廊の創造者だが。多重世界のではない。


  *  *  *


 無限回廊ステーションも無事に稼働し、一週間ほどテスト運用してみた。


「天体観測と言うより、遠方の遊園地を覗き込んでいる感じですね。星よりずっと大きく見える球体ですからね」サラが『観測鏡』を覗き込んで言った。


 『観測鏡』は望遠鏡ではない。上下反転映像では無いのだ。しいて言えば双眼鏡だ。ただ、双眼鏡と同じように接眼レンズを覗き込むこともできるが、通常はスクリーンに投影して見ることになる。追尾も自動なので、人間が構えて覗き込む必要はない。ただ、監視対象の世界球は、見た目が同じ球体ばかりなので特に見るものもない。土星のような輪も無ければ、木星のような派手な模様も無い。世界球に色が付いているので、華やかというか遊園地のようではあるのだが。

 もっとも、惑星と比較するのが間違いとも言える。恒星、つまり太陽と比較すべきなのかも知れない。


「眺めてるだけだと退屈だろ?」そう言って俺は観測席のサラにコーヒーを渡した。次はサラに代わって俺が観測する事になっている。

「全然退屈しなかったよ。私、一つ発見しちゃったし」と、カップを受け取りながらサラは嬉しそうに言った。

「ホントか? 凄いな」

「ふふ。気合いが違うのよ! な~んて、実は世界球の瞬きを見つけただけだけど」サラは、ちょっと照れるように言った。


「瞬き? 世界球が瞬くのか」

「そう。光球は時々、星のように瞬くのよ」

「ほんとか? そうは見えないけど」

「ああ、そうね。『星のように』は言いすぎね。星の瞬きは空気の揺らぎだから当然違うけど、世界球はゆっくり光量が変わるのよ」サラは、そう説明した。

 俺は変光星を連想した。


「ああ、光量を測定したグラフで見つけたわけね」

「そう。早いもの勝ちね。誰でも発見できる」


「まぁ、でも発見者はサラだな」そう言えば、サラはいろいろ発見してる。ちょっと、視点が違うのかも。

「そうね。嬉しい」


「そうか。光量が常に変化しているのか。位置はどうなんだろう?」

「私も気になって、位置情報もチェックしてみたんだけど、ほとんど変動してないのよね」

「ほう。位置は、存在確率その物だと思うけど、そこは変わってないんだ。ってことは、その光量の変化ってのは確率変動を吸収する何かを表しているのかな?」

「そうかもね~っ」

「確率風も連動してるかもな」

「そうね。近くに寄らないと測定できないのが難点ね」


 確かに、光量は離れた白球から観測することが出来るが、世界球から出る確率風は近くじゃないと正確には観測出来ない。ただ、光量と連動していると分かれば、確率風を遠方から観測出来ることになる。


「この辺が、天体観測と違う所だな。支援隊を作るにしても、見てるだけでいいことは自動化されるから、隊員は自分たちで無限回廊を飛び回る必要があるだろうな」

「そうだね。思ったより大変かも」

「そうか。候補生が来たら、大事にしてやるか」

「えっ? 普通の調査隊員も大事にしてね?」

「えっ? してるよな?」ちょっと心配になった。そう言えば、あまり考えていない。

「とりあえず、コーヒーは美味しかった」

「よ、良かったよ」


 コーヒーは、ちょっと五月蠅いからな。自分の豆を持ち込んでる。それだけだが。


 無限回廊から戻ったら、無限回廊支援隊の教育というミッションが待っている。


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