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多重世界の旅人  作者: りゅう
無限回廊編
65/128

65 世界球の印と発光色

 多重世界銀河の近傍マップを作るうちに世界球の発光色に注目が集まった。

 もちろん、存在確率そのものであると思われる多重世界銀河の位置も重要なのだが、発光色については今だ何を意味しているのかが不明だからだ。もちろん、一部は分かっている。赤が大きな確率変動であると言うことだ。この色になって世界球の分離となった場合は災害級の事態が予想される。


「私たちが観測した赤い世界球は飛び去った方向に確認できませんでした。消滅したのか、色が変わったのかのどちらかだと思われます。飛び去ったことを考慮すると行った先で別の色に変化したのだと思われます」


 多重世界研究協議会の席上で、世界球の分離現象を目撃したリジンが報告した。


「私たちの世界がそうなる前に、発光色の意味を解明する必要があります。有色世界球はめずらしくありませんから、監視を続けることで解明することができるでしょう」レジンが指摘した。


 もちろん、自分たちの世界球も発色してるし喫緊の課題だ。


「そうですね。発光色の調査は調査隊の主要任務と考えています」とリジンは応じた。ただ、千里眼で覗くだけでは済まないかもしれない。


「ということは、分離した世界球の追跡も必要ですね」ルジンが指摘した。

「飛び去った先まで行くのは難しいでしょう。ただ、遠方からでも監視したい。最低でも、その後の色の変化は確認したいと思います」さらにレジンが指摘した。

「そうなると、無限回廊で使用可能な望遠鏡が必要ですね。白球に、追跡のための機能が無いか調べてみましょう」これはリジンだ。


 この三人、最強三点セットだな。うん、誰が誰だかわからない。ルジンがちょっと違うかな。もう、この三人に任せておけば俺たちはいらないんじゃないかと思う。

 そんなことを考えていた俺にリジンが鋭い目を向けてきた。


「リュウさんは、どうお考えですか?」全然お考えじゃないです。

「特にない。ずっと見てるしかないと思う」

「それは、白球に常駐して監視する必要があると、そういうことでしょうか?」リジンに突っ込まれてしまった。


 やばい、俺は白球に骨を埋めることになるのか? 島送りみたいに、白球送りになるのか?


「そ、そうだな。交代制で頼む」時々ならいいか。

「いえ、リュウさんには引き続き無限回廊の調査に参加してもらわないと困りますので別の要員の手配が必要でしょう」とリジン。


 なるほど。そうだよね。良かった。うん? 良かったのか? 良くないかも? 引き続きって戻れないってことじゃないよな?


「では、監視員を募集することにしましょう」とリジン。そうなるよな。


「監視要員というか、今後の俺たちの調査は無限回廊を更に深く移動する事になると思う。そうすると、経路の安全を確保する必要があるんじゃないか? 支援部隊のような」と言ってみた。どうせ行かされるのなら孤立無援は避けたい。


「なるほど。支援部隊か。場合によって救助隊にもなるようなものは必要だろうな。よし、分かった直ぐに手配しよう。教育はリュウたちに任せていいか?」と議長のホワンが応じた。


 あれっ? もしかして俺、仕事増やした? リジンやメリスたちも微妙な顔をしている。いや、これ必要だろう? でも、全部俺たちがやるのか?


「それでしたら、支援部隊の教育は私たちが担当しましょう。リュウさんたち同様に転移の経験がありますから、私たちも無限回廊で活動できるでしょう」世界Lのレジンが名乗り出た。シナノとセリーもいるからな。


「おおそうだな。ではレジン、よろしく頼む」ホワンが言った。

「分かりました」


  *  *  *


 数日後、俺たちは白球に入り支援隊の無限回廊での活動を模索した。数日後というのは、無限回廊での生活が人体に与える影響がはっきりしていないので、週に三日程度までという制限をされたためだ。まぁ、週休四日でないのがちょっと残念だが。無限回廊から帰っても仕事はある。


 まずは、白球の物理生成機能で望遠鏡を出してみた。

「うん。基本機能としてはこれでいいな。良く見える。ただ、このままだとトラッキングは難しそうだな」生成した望遠鏡を使ってみて俺は言った。

「そうよね。素早い動きに追従するなんて無理よね?」メリスも、問題は分かっているようだ。分離した世界球が何処へ向かうのか全く分からないのだ。せめて飛行コースと速度が分かればいいが、自動追尾は無理だろうな。


「天体観測のトラッキングは天体の動きが分かって初めて出来ることだからな」俺は天体写真を撮るときの赤道儀を思い描いていた。

「そうよね。あれは地球の自転を相殺してるだけだもんね。突然飛び出されたら追いかけられない」とユリ。


 そう、例えるなら野球の飛球を追いかけるような技術だ。人間がやるのは難しい。要するにホームランの打球を追いかけるとか、ロケットを追尾するようなものだ。熟練が必要な技だ。だが、熟練している暇はない。


「世界球に、印が付けられればのぉ」ツウ姫が言った。うん? 印?

「おお、印かぁ。なるほど印があればゆっくりトラッキング出来る」そう思った俺は試してみた。

「あの世界球を『世界L』と名付ける!」と言って指差したら、世界球の横に名前が浮かび上がった。

「おお、出来た!」

「あらら」とメリス。

「出来るんだ」とユリ。

「やったのじゃ!」

「やりましたね! 新機能です!」とリジン。

「出来ますね」とビシャム。

「言ったもん勝ちね!」とサラ。


「もう、変に遠慮しないほうがいいかもね」とヨセム。

「でもこれ、分離した時に名前を引き継いでくれるのかな?」

「とりあえず、分離しそうだったら即座に名前を付けてみることですね!」とリジン。

「監視する有色世界球には全部、名付けておくべきだな」

「そうですね」とリジン。


  *  *  *


 とりあえず、近傍の世界には名前を付けた。行ったところだけだ。これ、ネーミングルールを用意しておく必要があるだろうな。


「日本語を認識するんだね」表示された世界名を見て、ヨセムが感慨深そうに言った。

「これ、もしかして他の言語でも印をつけられるのかな?」

「恐らくですが、思い描いたものをそのまま当てはめただけかと思います」リジンが冷静に言った。そりゃ、そうか。イメージしたものを物理生成するしな。


「そりゃ、かな漢字変換機能とか付いてる訳ないものな」

「私的にはちょっと残念でしたね。ネイティブな言語が分かるかと思ったんですが」とリジン。

「なるほどな。それなら説明書とか出せばいいんじゃないか? マニュアルオープン!」と言ってみたら、ホントに出た!

「何これ!」メリスが空間に表示されたマニュアルと思われる文字列を見て言った。

「凄い。全然読めない」とユリ。

「やっぱり、私たちの知らない民族のようですね」とリジン。ちょっとわくわくしてる?

「これ、解読できるかなぁ?」とビシャム。

「また、仕事増えてるし」とサラ。

「もっと親切表示してくれてもいいのにね」とヨセム。確かに。


「まにゅあると言うのは説明書の事かえ?」とツウ姫が聞いて来た。

「そうか、ツウ姫鋭いな!」

「そ、そうか?」ツウ姫、ちょっと戸惑う。

「つまりこの白球、俺の言った事の意味を解釈してるよな? ってことは、翻訳できるんじゃね?」

「おお、そうですね!」とヨセム。


「名前を付けろという命令を理解した時点で翻訳してますね。言語認識してコマンドを受け付けてますね」とリジン。

「まぁ、そうだよな。もともと思考を読み取って千里眼を操作してくれたりしてるものな。言葉くらい理解するだろう」

「確かに、意味を理解したわよね!」とメリス。

「じゃ、やってみるか。翻訳せよ!」これで楽々だ~っ、と思った時期が俺にもありました。超、短かったけど。思いっきり文字化けして表示された。


「なるほど。確かに翻訳しようとしていますね。言語ではなく、脳のパターンを解釈しているのかと思っていましたが、翻訳もしているようですね」とリジン。なるほど。言語以外の脳波などを解釈していた可能性もあるのか。

「翻訳するための辞書が完成してないんだろうな」文字化けした表示を見て俺は言った。

「そういうことですね!」とリジン。

「あるいは、辞書が古いとか」一部が、旧字だったからだ。

「ふむ。確かに、昔ここに来た人がいるということでしょう。我々に対応したにしては、早過ぎると思いました」とリジン。

「まぁ、どこの世界か分からないのが問題だが」


「なぁんだ、やっぱりダメなんだ」とメリス。

「いえ、ここまで出来るならもうちょっとです。後は辞書をアップデートするだけですよ! もう出来たも同然です!」とリジンは言う。そうなのか?


「今、マニュアルらしきものが表示されたのは、たまたまかも知れませんが、私たちの言語を解釈しようとしていることは明白です。これなら、私たちが会話を重ねるたびにアップデートされるでしょう」とリジンが言った。

「それって、つまり、白球が勝手に学習するってこと?」

「そういうことです!」

「そりゃ、凄いな。さすがに、これだけの物を作れる民族だな。自動翻訳機も用意してたわけだ!」誰だか知らないが、ありがとう。


「あ、ツウ姫はあまりしゃべらなくていいぞ。っていうか、白球に語り掛けなくていいぞ」

「な、なぜじゃ! わらわの願いも聞いてほしいのじゃ!」

「そうだけど、『のじゃ白球』なんて微妙だぞ!」

「可愛いではないか!」

「面白い!」とメリス。

「あははっ。やってみる価値ある!」とユリ。どんな価値だよ。

「ふふふ」とサラ。こっそり白球に教えそう。止めてください。


 どうでもいいけど、発声機能とかもあったりしないよな? 「わらわは白球なのじゃ!」とか言われたらどうしよう。いや、全然期待してないよ? ホントだよ?


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