48 気付いたら、南の島だった
俺は南国の西之島にツウ姫と一緒にいた。
なぜこうなった? 一人旅の筈だったのだが。待ち合わせしたつもりも無いし。「ごめん、待った?」とか聞いちゃおうかな?
「なに、ぶつぶつ言ってるおるのじゃ?」ツウ姫は浜に転がっていた流木を引きずって来て座った。
「お前、ここで待ってたのか?」一応確認しておこう。
「今来たとこ、なのじゃ。」嘘つけ。
「こう言えと言われた気がしたのじゃ」エスパーかよ。
そういや、こういう会話は、携帯電話が出来る以前の待ち合わせじゃないと緊張感が伝わらないと思う。本当にとんでもなく待つことがあったのだ。しかも、相手がどこにいるのかさえ分からない。あれは、大変だったなぁと思う。大体携帯電話がある場合の「今来たとこ」は、せいぜい五分程度のことを言うと思う。でも、当時の「今来たとこ」は三十分だ。ちょっと引き攣ってるときは一時間。怒ってる場合は二時間なのだ。いや、マジで。ちなみに、蕎麦屋の「今出ました」は出ていないので、この法則とは関係無い。
それはともかく、タイミングが良すぎる。もしかして、これも俺が呼んだのか?
「俺が呼び寄せたのかな?」
「うん? わらわは、自分で旅に出たのじゃ。リュウが一人で旅に出る気がしたのでな」ツウ姫は、当たり前のように言った。
ホントだろうか? そんなことあるか? いくら勘がいいからって、そんなことが可能なのか?
「でも、よく今だと思ったな? たまたまか?」
「たまたまというか、用意して待っていたのじゃ。そしたら転移した」
「マジか」
そんなこと、あるのか? いや、ホントにツウ姫が言うように、ツウ姫も自分で転移出来る人間になったってことなのか? しかも転移を予約してた? 確かに転移は複数の人間で同時に起こるのだが?
「ツウ姫も自分で転移出来るようになったってことか?」
「そうじゃな。わらわの父親にも挨拶出来たしな」
ツウ姫は驚くべきことを言った。つまり、自分で転移したのは初めてではないと言うことだ。一人で自分の世界に戻って、父親に挨拶出来たのか! 俺と同等の能力者になったってことか! もう俺のせいとか思わなくていいのか?
タダヨシには後で詫びを入れるつもりだったが、ツウ姫が挨拶して来たのなら申し分ない。
「そうか。ならいいか」俺は安心した。
「なんじゃ? わらわと一緒では嫌なのか?」
「そんなことはない。じゃ、俺と一緒に来るか?」
「もちろんじゃ。そのつもりで来たのじゃ」
「そうか、分かった。よろしくなツウ姫!」
「よろしくなのじゃ、ご主人様」
「やめろ」
「むふふ」
とりあえず、俺たちは前回の無人島でのサバイバル術を使って魚と果実を集めて腹ごしらえすることにした。
ー あ~、あ~、聞こえる?
突然通信機に、声がした。
ー 食料を調達したから、そっち行くね。
ー りょ、りょうか~いっ。
メリスからの通信だった。メンバー確認機能でメリスとユリがいるのは、ちょっと前から分かっていた。
* * *
「とうちゃ~く」そう言って、ユリとメリスは浜辺に降り立った。
「おお、いつものメンバーか。遅かったのぉ」二人を迎えたツウ姫が言った。ツウ姫は初めから彼女たちも来ると思っていたようだ。
「お前ら何で来たんだよ」さすがに俺は戸惑いを隠せない。
「なんでじゃないでしょ」とメリス。捕まえた魚を、防護スーツのフィルムで作ったネットに沢山入れていた。
「もう私たちの仕事だし、チームだし。あと恋人だし」そうだっけ?
「メリスは恋人候補。本物の恋人はわたし」ユリは突っ込みを忘れない。
「あ~、そういや、研究員になったままか」
「そうよ。あと、リュウはチームリーダーってことになったから」
「なに? なんのことだ?」俺、慌てる。聞いてないぞ?
「世界ゼロから派遣されたチームってこと。そのリーダーよ」
「何言ってんの?」
「職務手当とか特別権限とか優遇措置とかもあるわよ」
メリスは防護スーツに装着するマイクロチップを渡してきた。規約とかも入ってるらしい。てか、優遇されたことなんてあったっけ? てか、この世界じゃ、効力発揮しないけど?
「いつの間にそんなことに? 再契約とかしてないけど?」
「そうね。多重世界通信が通じれば良かったんだけど、無理みたいだから暫定措置ね。了承すれば契約成立よ。破棄してもいいけど、サポートが減るだけだよ?」
そうメリスは言うが、現状サポートされることは無い。まぁ、可能な限りとか、帰ってからの話だな。
いずれにしても、俺とチームを組む前提で準備して来たようだ。
「お前らも転移出来ると思ってたのか」
「そうね。出来ない可能性もあったけど、出来ること前提でしか動けなかったし」とメリス。確かに、転移出来なかったら、計画を破棄して今までと同じ仕事をするだけだからな。
「ってことで、よろしくね?」
「分かったよ。どうせやる事は同じだからな。一緒に動くしかない」
「ふふ。そうよね」とメリス。
「そうそう」とユリ。
「てか、ツウ姫もいるんだけど?」
「わらわは、そなたの側仕えじゃ。それ以外、ないであろう?」
「そうでしょうね」とメリス。
「そだよね」これはユリ。
「あ、でもチームの一員にすればいんじゃない? 決めるのはリーダーのリュウの判断だと思うよ」メリスが言う。
「あ、そういう権限もあるんだ」
「そりゃそうよ。何があるか分からない世界を旅してるんだもん」
確かに。一人旅じゃ、自己責任でいいけど、皆を連れて多重世界を旅するんだったら、可能な限り支援体制を確保すべきだろうな。
「なるほど。わかった。じゃぁ、世界ゼロのチームとして行動しよう。あとツウ姫もチームの一員な」
「そう言うと思った。了解!」メリスは、何かの敬礼みたいなポーズを取った。でも、手を肩のあたりに持って行くのは何処から来てるのか分からない。おほほのポーズ? 胸でグーの形なら知ってるんだが。
「分かったわ!」とユリも同じポーズだ。
「よろしくなのじゃ!」あ~っ、これ三人で決めたポーズだなきっと。俺は知らん顔で通すことにしよう。
「それはいいとして。とにかくまずは食事よ!」何故かメリスが仕切っている。
料理と言うほどの物でもないが新鮮な食材は旨かった。流石に、何度もやって慣れたということもある。今では生体フィルムで包丁まで作ってさばいていた。
俺たちは、久しぶりに南国の昼食を楽しんだ。いや~のどかで良いなぁ。って、フラグか?




