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多重世界の旅人  作者: りゅう
黎明編
44/128

44 藤原邸の中庭

 翌日、朝廷の騒ぎがすっかり落ち着いたと報告を受けた。

 俺たちは、その朗報により安堵すると同時に、さらに緊張することになった。もうすぐ転移が来るかもしれない。


 俺たちはタダヨシの家の客間から中庭を眺めていた。


「綺麗な庭ね」メリスが言った。

「ありがとうございます」ツウ姫2が嬉しそうに言った。

「わらわの家とは違っているが、これはこれで良いのぉ」


「ん? どう違ってるんだ?」

「わらわの家の中庭は、枯山水なのじゃ」


 ほう。どういう心境の変化なんだろう? タダヨシにはタダヨシの人生があるからな。もしかして悟りを開いたんだろうか?


 そうしている間にも、まだ朝廷からの知らせはポツポツと来ているようだった。


「あれ? そういや多重世界通信機って使えるんじゃないか?」俺は、ふと思い出した。

「え? どゆこと?」メリスが言った。

「だから、世界Sと同じってことは、世界Sで集めた転移発光セルが光ったんだろ? つまり、通信出来るじゃん」

「あっ」

「ほんとだ」

「気が付きませんでしたね」とレジン。まぁ、使う必要なかったからな。


  *  *  *


 実際に試してみたら確かに通信が復活していた。


「惜しかったわね。世界Sにツウ姫がいたら、今頃通信出来てたかもね」

「ああ、そうだな」

「じゃが、話すだけじゃつまらんのぉ」

「それもそうだね。それも、常時オンしてないと気が付かないだろな」

「ああ、そうですね! 呼び出し機能を付けましょう」レジンが改良してくれるようだ。


「あっ、そういえばこれ、誰かが使ってる可能性もあるんじゃなかったっけ? 傍受するとか言ってたけど。もしかして、呼ばれてた?」

「ああ、確かに、世界ゼロや世界Lから呼びかけてる可能性がありますね」

「他の世界も開発に成功してる可能性はあるしな」

「そうですね。通信方式は違うかもしれませんが、調べてみる価値はありますね。まずは、常時待機の状態にしておきましょう」


「何に使うの?」ユリが聞いた。

「あ? もちろん、情報交換だよ。通信できる時点で、同レベルの技術を持ってるわけだし」

「あああ~っ!」ユリ、驚きすぎ。

「そうよねっ!」メリスも同意。

「転移を待ってるだけじゃなくて、これからは多重世界の監視も必要かもな」


  *  *  *


「ツウ姫妹が、俺たちと一緒に寝たいって?」俺は、変な声でちょっと大きな声をだしてしまった。


「ち、違うのじゃ。みんなと一緒というか、わらわと一緒に寝たいとのことじゃ」

「なんだ、びっくりさせるなよ。ツウ姫、一緒に寝てあげればいいじゃないか」


「いえ、それはどうでしょう?」横からレジンが言った。

「何か問題でも?」

「ええ、もし一緒に転移するとしたら、なるべく近くに居たほうがいいと思います」とレジン。

「あっ。そうか。それはあるのか」

「そう言えば、最初の転移の時、メリスは私たちとは離れてたよね。通信が出来なければ見つからなかった可能性もある」ユリが言った。

「そうよね。部屋が離れてたからね」


「ああでも、位置関係はそのままなのかな?」

「そうみたいだけど、確実という訳ではないんじゃない?」とメリス。

「確かに、最初の時の私の場合は、もっと遠くにいましたね」とレジン。

「そうなのか。ただ、離れすぎると一緒に転移は無理だろうな?」

「そうですね。それを実験するのは早すぎると思います」とレジン。


「置いてけぼりはいやよね」とメリス。

「それ、怖い!」とユリ。

「ええ、近くにいることは重要ですね」シナノも同意見のようだ。

「そうです。絶対です!」とセリー。

「その後の転移で離れなかったのは、纏まって寝泊まりしていたからってことね」メリスは島の浜辺やハワイ王国のベッドの中を思い出してるようだ。

「私だけベッドの下だったことがありましたね。ある意味、危険だったとも言えます」とレジン。確かに、そんなこともあったな。ツウ姫に至っては、谷に落ちてたしな。


「ならば、ツウ姫2も皆と一緒にいたほうがいいのじゃな?」とツウ姫が言った。ツウ姫2でいいのかよ。ただ、ツウ姫2本人は、まだ恥ずかしそうにしている。

「まだ、一緒に転移するって決まったわけじゃないけどな」

「でも、危険は冒せないしね」とメリス。

「そうだな。分かった。じゃあ、明日からそうするか? 今夜はツウ姫2の部屋で寝てやれよ」俺がそう言うと、ツウ姫2はほっとしたような表情をした。

「そうじゃの。分かったのじゃ」

「それでいか?」俺はツウ姫2に向かって言った。

「はい。よろしくお願いします」とツウ姫2。


 しかし、俺たちはその夜、転移してしまった。


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