38 気付いたら、王女のベッドの中だった
「きゃ~~~~~っ」
俺は、耳を突き抜けるような黄色い叫びで目が覚めた。
「なんだ? どうした?」
見ると、俺の右隣には目を大きく見開いたパジャマ姿の少女が居た。
「だれだ、お前?」
少女は、まじまじと俺を見た。
「あなたこそ、誰です?」
「うん? ここは何処だ?」
「私のベッドです」
「い、いや、俺のベッドだろ」
そういえば、俺のベッドにしては、ふかふかな気がする。が、他人のベッドに入った記憶はない。よって俺のベッドである。
「う、五月蠅いのぉ。何事じゃ?」こんどは俺の左側から声がした。
「ツ、ツウ姫なんでお前がいるんだよ」
「お主こそ、なんでいるのじゃ? ここはわらわのベッドじゃぞ? 夜這いに来たのか?」
「いいえ、私のベッドです」右側から謎の少女が言い張る。
「夜這いなんかに来るか!」
「あんたたち! 五月蠅いわよ」
「もう~っ、メリスさん。朝から大声ださないでくださいよ」
「なんで、お前らが俺のベッドにいるんだ?」
「だから、私のベッドです」これは謎の少女だ。
「わらわのベッドじゃ」とツウ姫。
「何言ってんの、私のよ」メリスも負けない。
「私のベッドだよ!」ユリもだ。
「私のベッドの筈です」シナノもいる。
「うるさいなぁ、まだ眠いんだけど~っ」セリーって、朝はご機嫌斜めなのか?
「えええ~~~~っ?」謎の少女は、何が起こってるのか分からず、混乱するばかりだった。
すると、そこに一人の侍女が入って来た。
「お嬢さま、おはようございま……(昨夜はパジャマパーティーだったかしら?)」
「メ、メイ。メイよね? 私よ。マリよ。分かるでしょ?」
「えっ? あ、はい。メイです、お嬢様」
「そう。メイ、これは私のベッドよね?」
「えっ?(ベッド取りゲームかしら?)」
「いや、俺のベッドだ」
「わらわのベッドじゃ」
「私のベッドだってば」
「私のよね?」
「私のベッドです」
「ZZZ」セリー、寝てるし。
侍女のメイは、マリのベッドだと思うが、そこまで強く言われると自信が無くなった。
「それは……じゃ、じゃんけんで」
「メイの、裏切り者~っ」
「お嬢さま~っ」
* * *
その後、しばらく言い合いが続いたが、要するにここはハワイ王国第二王女マリの部屋のようだった。もちろん転移したと思われる。ガニメデからハワイかよ。便利だな!
聞くところによると、ここハワイ王国は俺の記憶より大きな島が連なる列島であり独立国家として存続していた。最北端は日本列島に近く、そのため日系人が多くマリも日本人の血が入っているようだった。
それどころが、普通に日本語を話している。
「では、あなたたちは別の世界から私の部屋へ夜這いに来たと」
「夜這いじゃない」と俺は主張する。
「リュウは夜這いかも」とメリス。ちょっと、後で話そうか。
「わらわのベッドに夜這いに来たところで転移したのではないのか?」
「それなら、私のベッドでしょ? ね? リュウ」何故かシナノも参戦。
「なんでだよ」
「ああ、もう。わけ分かんない! とにかく、別世界からやって来たんですね?」マリが髪をかきむしって言った。
「うんそうだな」
「別世界のハーレムから来たんですか?」
「また、話をややこしくしない!」流石にメリスが突っ込んだ。
「ごめんなさい」
「まぁ、男が俺一人で女ばかりだからな、気持ちはわかる。あれ? もう一人は?」
「あ、レジンがいない」メリスも気が付いた。
見回しても居ない。
「あの、このベッドの下で寝てる方は?」侍女がおずおずと言った。
「あ、いた。まだ寝てる。私も寝よ~っ」そう言ってセリーは寝ようとする。
寝るな!
* * *
流石にベッドから出てテーブルに移動した。
椅子を侍女に持って来てもらったが、部屋が広いので全員座っても余裕だ。
「すまん、不可抗力とはいえ女性のベッドに転移してしまった。申し訳ない」
「い、いえ。分かって貰えれば結構です。あれは、私のベッドです」
「うん。わかった」
「ごめんなさいね」メリスも謝罪する。
「ほんとよ、リュウさんったら」
「セリー、お前もだろ」
「私は寝てたから関係ないし」
「そこ! また話を、ややこしくしない!」メリスが突っ込んだ。
「わかりました。もう、この件はこれで終わりです。それで、みなさんは偉い学者さんなんですね?」
マリ王女は、いきなり、そんなことを言い出した。
「そうなのか?」
「ちょっと偉いかも」とユリ。
「レジンは偉いんじゃないか?」
「いえ、私はそんなことありません」レジンは、まだ眠い声で言った。
「そんなことないでしょ」とメリス。
「すみません。偉くなくてもいいです。とにかく、世界の壁を超えて来られたんですね?」
「ほう。そう聞いて落ち着いてるなんて大したものですね。理解しましたか?」俺は感心して言う。
「いいえ、全く」
「ですよね」
「でも、とっても特殊な人たちだと理解しました」
「なるほど。間違ってませんね」レジンが頷いた。
するとマリ王女は、居住まいを正して言った。
「そこで、特殊な人たちと見込んでお願いがあります」




