35 生活棟からの救出
なんとか生活棟にたどり着いた。
生活棟に入ってみたらユメノは本当に玉露を淹れて待っていた。流石、生活班。いや、作り置きの水出し玉露なのだが。
「うん。旨いな」
「これは、なかなか」とユリ。
「そうじゃないでしょ! あら、美味しい」とメリス。
「美味しいね」とセリー。
「ほんと、お上手ね」とメリス。
「いい嫁になれるね」
「いい嫁って、照れるのじゃ」とツウ姫。なんでお前が照れるんだ。
「とりあえず、そろそろ停止しそうなんで外に出るか」俺はユメノに言った。
「そうですね」
ユメノも流石に外を見てびっくりしていた。
だが、スペーススーツは着ているし、俺たちに掴まれば安全に降りられるだろう。
= あ~、マクガイ聞こえるか。こちらリュウ。ユメノを無事確保。これから戻る。
= こちらマクガイ。了解。感謝する。
さすがにマクガイは安心したという声で応えた。
= それで、この生活棟はどうする? このまま地表に落下させていいのか?
俺は生活棟の処理が気になって聞いてみた。宇宙では設備は貴重だからな。
= ん? なんとかなるのか? 出来ればなんとか修理したいが。無理はするな。
= そうか。ちょっと試してダメならユメノを連れて戻る。
= 了解。よろしく頼む。
「リュウ、何とか出来るの?」
ユメノが期待を込めた目で聞いて来た。
「いや。知らん」
「えええっ!」
ユメノ、思わず残念な顔をする。
「なぁ、レジン」
「聞いてくると思いました」
「すまん」
「いえ。どうぞ」
「パワードスーツモードで全員で支えながら降りるのと、生体フィルムをロープ状にして牽引しながら降りるのと、どっちが楽だろう?」
俺は本気で聞いたのだが、レジンはニヤニヤしている。
「そうですねぇ。回転型の重力加速器なのでバランスは取れている筈ですから、みんなで牽引してもいいんでしょうけど。ここはこの防護スーツの加速器でゆっくり降下するよう調整してみましょう」
レジンは俺の予想を覆す回答をしてきた。
「おお、さすがレジンだ。そんなことも可能なのか」
何をするのかよく分からないが。
「はい。お任せください。あ、玉露のお代わりを頂いても? はい、ありがとうございます」
レジンがこれだけ余裕なので俺たちもお茶を貰うことにした。これは、なかなか出来ない体験だしな。
って、危機感全くないな。
* * *
「おお、流石にこのエネルギーモジュールはパワーがありますね。全員分の加速だと余裕です」
しばらく、みんなの防護スーツを調整していたレジンがそんなことを言うと、既に落ち始めていた生活棟がガクッと減速した。
俺たちはやることもないので、ゆっくりと降下する生活棟からお茶を飲みながら外を眺めていた。
もちろん外ではマクガイが大騒ぎしている。
君、落ち着き給え。玉露がうまい。
* * *
「お前ら、どっから突っ込んでいいか分からんぞ」
「ほほほ。お構いなく」とシナノ。
俺たちは生活棟を無事に下して安全を確保した後、無事だった基地の汎用棟に戻った。
「これが、このチームの普通ですので気にしないでください」レジンもすまして言う。
「そうよね。確かに」とメリス。
「そうそう」とユリ。
「ですよね」とユメノ。
「うん」とセリー。
「のじゃ」省略し過ぎ!
「ああ、もう。とにかく、仲間を救ってくれてありがとう。恩に着る」
マクガイは改めて頭を下げた。
「お互い様だ。とりあえず全員無事で良かったよ。被害はデカそうだが」
生活棟がどうなってるのかはよく分からない。修理は可能なのか?
「生活棟の修理は大変だが、補修用部品で何とかなるだろう。日程にも余裕があるしな」
マクガイも案外楽観的だな。まぁ、宇宙に出てくる人間は楽観的でないとやっていけないんだろうが。
「あら、じゃぁ、生活棟が修理できるまで私、リュウのベッドでお世話になりますね」
いきなりユメノが変なこと言い出した。
「意味が分からん。一緒には寝れないぞ。それに、新しい生活棟があるだろ」
「生活棟が変わると寝れないの」
枕が変わると寝れないみたいなことを言ってる。いや、こっちのほうが違うんだが。
「お前、そんなこと言ってると、ツウ姫みたいに世界から弾きだされるぞ」
「そうなのじゃ。狙い通り!」
こいつを引き合いにしちゃダメだった。
「ああ、防護スーツじゃないと多分死ぬことになる」
「確かに、わらわもこれが無かったら、危なかったのぉ。今頃、地の底じゃ」
「わかったわ。冗談よ。ほほほっ」
ほほほって笑うやつは信用しないことにしよう。
* * *
噴き出した温泉は既に止まっていた。
この星では気圧がゼロだから、すぐに凍結してしまうのだ。間欠泉こそ珍しい。
「温泉はもったいない気もするな」
「そうか? 成分がヤバいことが多いんだが」とマクガイ。
「うまく引けたら、無限にシャワーが使えるぞ」
「引きましょう、是非温泉を引きましょう」生活担当のユウナが食いついた。
「温泉があれば健康管理にも役立ちます」
確かにそうだよね。貴重な水も他に回せるしな。
「そうよね。もしかすると飲めるかも知れないし」
ユメノも大賛成だ。やっぱり循環リサイクルは気分良くないし。
「いいね」とメリス。
「温泉かぁ、懐かしい」とユリ。
「温泉って? お風呂ですよね?」とシナノ。
「温泉! 実家にあった!」とセリー。うん? そんな訳は……あるのか?
「びばのんのん」ツウ姫、なんで知ってるんだよ?




