23 気付いたら、見知らぬ孤島だった
目覚めたら、別の島だった。おかしい。いつの間にか気を失っていた。
俺たち五人は南の島で遊んでいた筈だ。しかし、気が付くと別の島にいたのだ。しかも、ちょっと寒い。
よくよく見ると似ている島だ。しかし、いままで俺たちがいた島とは明らかに雰囲気が違う。もしかして、天気が急変しただけなのか? 違うよな? そもそも植生が違う。つまり、俺たちは転移したようだ。
「これ、どうすんの?」
「やっぱり、こうなるんだ」メリスが辺りを見渡して分かった風に言った。
「心配してた通りじゃん!」ユリもきょろきょろしながら言った。
「「ご、ごめんなさ~い」」
誰もが目覚めて愕然としていた。でもこれ、予想はされてたし二人のせいにするのは違うよな? 転移の原因を作ってるのは俺って気がするし。ああ、でも責任は最初に実験した世界ゼロの人間か。っていうか、島に来た全員で転移したのかよ!
「ホントに転移しちゃうんだね」セリーは、半信半疑らしい。転移しちゃうんですよ。もうすぐ痛いほど分かると思うけど。
「五人で転移したんだなぁ。」
「そうみたいね」メリスが言った。
ー すみません。私もいます。
防護スーツの通信が入った。五人じゃなかったようだ。
ー 誰だ?
ー 私です。レジンです。
ー おお、レジン。てか、またお前かよ。転移するの待ってたか?
ー そんなわけありません。これからそちらへ行きます。
前の転移のときも、レジンから連絡があったな。なんか、デジャブのような感覚に襲われた。
少しすると、レジンが飛んで現れた。前回は垂直離着陸機で迎えに来たけど今回は何も無しだ。っていうか、救助側じゃないわけだ。残念な奴。
「なにか?」
「なんでもない」
「これが、転移ってことですか! ここは、別の世界ってことですよね? いきなり違う世界になってびっくりしました」レジンは、どこか妙にはしゃいでる。まぁ、別世界と言っても、状況が劇的に変わった以前の転移とは違う。空中じゃないし。あ、レジンは劇的に変わったかも? 知らんけど。
まぁ、この程度で驚いて貰っちゃ困るぜ。はっはっは。
「なにか?」
「気にするな」勘のいいやつだ。
「しかし、なんでレジンまで転移してるかなぁ?」
「酷い! それは私も聞きたい!」レジンは抗議するように言う。やっぱり喜んでるよな。
「ホントになんでかしらね。怪しい人じゃないよね?」そこ、問題発言ですよ。
「私たちと同じ運命ってことなの?」ユリはどうも同意できないようだ。
「どうなんでしょう?」
「レジンさんとは、あんまり話してないけど?」シナノたちはレジンをあまり知らないらしい。
「とりあえず、元の世界に連絡をとりましょう。みんな心配してるでしょうし。スーツの多重世界通信機が完成した後で良かったです」とレジン。
多重世界通信機は、使う部品が既存の多重世界識別器と同じなのでプログラムを変更するだけでいい。それで、既に全員のスーツで使えるようになっていた。
早速これを使って研究所に連絡しようみようという訳だ。
「まぁ、元の世界に戻れない俺たちにはあまり関係ないけどな」
「そうね。救助隊は来れないし」メリスもあまり関心ないらしい。
「相談は出来るんじゃない? 連携とかも?」ユリは多少期待してるのか?
「そのために、レジンさんがいるんでしょうか?」とシナノの鋭い洞察が入る。
「通信装置が壊れたら誰も直せないものね」とセリー。その通りだな。
「結局は転移装置待ちか。気の長い話だな」まぁ、帰る場所はそれぞれ違うけど。
* * *
「変です。今、ホワンを呼び出してみたんですが応答ありません」さっきから変な顔をしてると思ったら、困惑した顔でレジンが言った。
「なに? 休みだから寝てるんじゃないか?」仕方なく、俺もマナブを呼び出してみたが繋がらない。
「もしもし~」
「聞こえな~いっ」
「この世界同士でもつながらないよ」メリスとユリがこの世界で使えるか試したようだ。
「確かに使えてたよな? 全部一緒に壊れたりしないだろうし……」
「はい。ちゃんと機能する筈です」レジンは何が起こったのか分からないという顔だ。
「繋がらないじゃん」ユリが追い打ちを掛ける。容赦ないな。
「うう。おかしい。そんな筈は……あっ」そこでレジンが原因に思い当たった模様。
「恐らく、この世界には今まで集めた転移発光物質が全く無いってことでしょう」
「そうなの? でも、セルの中にあるじゃない?」ユリが疑問を言った。
「そうですが、それでは存在として不十分なんでしょう。パックされてますし」
「そうか。十分存在しないと発光しないんだったな。こういうケースでは使えないのか!」
「そうですね。残念ですが」これは、この通信機の欠点というより特性だから仕方ない。
「これこそが、レジンがいる理由かもな」俺はふと思った。
「えっ? 私がいても、これは改善できませんが?」
「培養したらいいんじゃない?」とユリ。
「でも、この世界に増やしたら元の世界で使えなくなるかもよ?」
「ああ、そう言うこともあるよね。この世界が通信で使ってた『存在しない世界』だったらまずいよね」とユリ。
「通信に関しては安易に存在確率を変えないほうがいいかも知れませんね」とレジン。
「新たに、転移発光物質を探せってことじゃないか?」
「ああ、確かに通信機として使うには、まだまだ足りないってことですね!」とレジン。
「そういうこと」
「じゃ、頑張って転移発光物質を探しましょう。そして、使える通信機にしてみせます!」
「うん、期待してる」
当面は、転移した世界全てで転移発光物質の探索が必要になりそうだ。実用化の道は遠い。
* * *
「で、これからどうする? ここは何処だ?」
「私たちの無人島に似てるけど、妙に寒いわね。北国かしら?」
「うん、スーツがあるから平気だけど、気温十五度だって」見ると、確かにスーツの表示ではそうなってた。
「まずは腹ごしらえだな。弁当はもう無いから魚を獲るか」
「そうですね。あ、生体フィルムを槍の形にするとモリとして使えます」レジンが言った。いつの間にかサバイバル機能を用意したのか? もしかして、さっき一人で作ってた?
「凄いね!」
「いつの間に」ユリも聞きたいようだ。
* * *
「じゃ、食える魚が分かる奴来てくれ」レジンから生体モリの使い方を聞いた俺は、率先して食料を獲ることにした。
「じゃ、私が行きます」シナノが教えてくれるようだ。
「私も大丈夫」とメリス。ほんとかよ。
「では、私たちは陸上で食べ物を探しましょう」レジンが言った。
俺たちは作業を分担して取り掛かった。
* * *
魚は、余るくらい獲れた。貝も獲れたし意外と大漁だ。
「あ、水がもう無いな」
「大丈夫です。防護スーツにサバイバル機能を付けました。フィルムを使って海水から真水を作れます」やっぱりか。完璧だな。
「レジンが転移して来た理由、これだろ!」
「確かに、レジンが居ないと私たちやばかった」とメリス。
「えっ? 何処かの国まで飛べばいいじゃないですか?」レジンは自分の存在理由としては、これくらいじゃ不満のようだ。
「まぁ、そうだけど。安全な水は重要だ。ありがたい」
* * *
「でも、飛ばされたのが地下でなくてホントに良かったですね」食事が終わって、シナノが言った。地下にこだわるね! みんなも頷いている。
「突然死ぬようなことは、転移の目的からしてないんじゃないかな?」俺はそんなことを思った。
「何故でしょう?」レジンが不思議そうに言う。
「いや、分からんけど。俺たちが邪魔なら、転移させるまでもない。消せばいいだけの事」
「確かに」とレジン。
「消さずに転移させたと言うことは何かをさせたいのかも」
「やはり、そうですよね!」シナノは拘ってたしね。
「うん。この世界に必要で転移させたのなら生きてないと意味がない」
「なるほど。生かしてこの世界の確率を変えさせようと?」レジンが言った。
「ええ、そういう意図があるかどうかは分かりませんが、確率調整の一種なら生かして転移させますよね。必要な確率的な要素として」
「なるほど。ちゃんと生きてないと確率要素としては不十分ですからね」とレジン。
「私たちは、必要な要素なのね」
「要素なんだ」
「要素なのですか」
「ヨーソロー」おいっ。
食事も出来たし、俺たちは人のいる場所を探して飛び立つことにした。




