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05_モンスターをつくる天宮さん


 ダンジョンコアとしては、ダンジョンマスターがいれば満足であるとのことだ。


 そして、期せずしてダンジョンコアは己のダンジョンから解放されてしまった。本来ならダンジョン外に出ることは不可能であるらしいが、此度の状況では、神様の使い? によって異世界へと意図せずして放逐されたため、完全に自由な存在となっているとのことだ。


 ダンジョンコアはその有用性から、発現した場所(神が設置した場所)、及び自らその場から構築し広げたダンジョンの外へとは出ることができないのだそうな。


 まぁ、オペちゃんから性能に関して聞いたけど、完全にプチ神様って感じの事ができるからね、これ。


 まぁ、そんなものの主人となった私は、そんな面倒な大層なことをしようとは思わないけど。


 とりあえず、この屋上から出るにはどうしたらいいだろう? 屋上の扉は施錠されているし、私だけならどうにでもできるけど、受肉しちゃってるダンジョンコアはどうにもならないし。


 それに恰好はどうにでもできても、無駄に容姿の整った美少女(2歳児知能)とか、トラブルの元にしかならんし。


 見た目保護者的なモンスターみたいなのとか出すしかない?


《質問:暫くの間、マスターに対しこの場にて各種レクチャーを行うことはできないのですか?》


 うん。止めておいた方が無難かな。見回りとかあるだろうし、それで見つかったら見つかったで面倒だよ。お説教とかされるだろうし。時間の無駄になるからね。


 とりあえず、近場の公園か……神社かな。あの神社、基本的に無人だし。社務所というか、あれは集会所かな? そこに入れば雨露もひとまずしのげるしね。


 うっかり御神木のところに行くと、私はのまれて消えちゃうけど。


《それはダメです》


 それ以外だと、稲荷様の祠かなぁ。中に入ることはできないけど、人が来たりしないから。


《マスターに影響はありませんか?》


 稲荷様のほうは特に問題ないわねぇ。お狐様も留守の祠だし。なんか、数年ごとに祠を移動するみたいなんだよ。それに伴って格が上がるのかな? んでね、その移動にあわせて留守になる祠が時々出るんだよね。


 隣町にまで移動しちゃったからちょっと遠いけど、私がいま云った稲荷様の祠はいまのところ留守だから、大丈夫だと思うよ。


《では、ひとまずそこへ移動しましょう》


 ……私は壁抜けはできるけど、物理的干渉はできないわよ。だから、屋上の鍵を開けるのは無理なんだけど。


《助言:なにかしらモンスターを生成して扉を開けましょう。できるなら無生物のものを。であれば、ダンジョンのストレージに格納できますので》


 オペちゃんのアドバイスを受け、モンスターを生成する。


 目の前にさっき見たステータスボードみたいなのが現われた。


 えーっと……モンスター名を入力? あ、なんか種別で検索とかできるんだ。なんかすっごいゲーム的なんだけど。

 試しに無検索でリスト出してみよ……うわ、すっごい数がでてきたよ。


 あ、モンスターといったらドラゴンでしょ。ドラゴンで検索してみよ。


 ……いっぱいでてきた。


《マスター、ドラゴン種は問題なのでは?》


 あ、ごめん。ちょっと興味があってね。えっと、ドアを開けてもらうんだから、それなりに知能があって人型で、さらには変幻自在なものとなると――



+----------------------------------------------------+


■名前:未設定 ■性別:――


■種族:ダスター


■属性:アンデッド


+----------------------------------------------------+



 なんかのゲームで登場していたアンデッドモンスター。レトロゲーだと思う。ネカフェでウロチョロしてたときに、プレイしてた人のを後ろで見てたんだよね。ドット絵のいかにもなお化けなグラフィック、シーツマンだっけ? そんな感じのだったっけ。


 あ、名前からも分かるように。こいつは埃に憑依した幽霊だよ。


 埃がなんとなく人型に集まってふらふらしているモンスターだけれど、その埃がほぼ一点に集まれば、かなりの硬度でもって打撃力があったりする。……んだと思う。


 こいつに扉の隙間から向こうにいってもらって、指先の形に固まって貰って鍵を開けてもらおう。


 ガチャガチャ。


 あ、鍵だけじゃなく、あれもついてるのか、チェーンじゃなくて、金属製の頑丈そうなアレ。名前知らないけど。


 あ、開いた。


 と、ここから抜け出す前に。


 オペちゃん。ダンジョンコアの恰好を替えて。貫頭衣じゃ目立つから。白のシャツにジーンズ、スニーカーでいいや。あとなんか適当にキャップ。


《了解。地上を確認。服装のデータを収拾。目立たない服装に変更。現在着用している貫頭衣、並びにダスターを格納します》


 かくしてコソコソと駅ビルから脱出。立入禁止区域にいたのを見つかったら、面倒臭いことこのうえないからね。






 駅前から歩くこと3時間。かなり時間が掛かっちゃったよ。


 まぁ、市内からちょっと離れないといけなかったからね。公園近くの奥まった林の所にある祠のところで腰を落ち着けている。


 とはいえ、若い女性がひとりポツンと座っている姿というのは目立ってしまう。


 そんなことを思っていたら、認識阻害の力場を周囲に張っているから、直接接触されない限り安全だとオペちゃんに云われた。


 さて、これからどうしよう?


 ダンジョンコアは隣に座り、ときおり私を掴もうとするのか、手をスカスカさせたりしている。


 うーん。ダンジョンコアの知能を上げる方向でなんとかできないかなぁ。この幼児な調子じゃどうにもならないんだけど。


 置物だったら問題ないんだろうけど、見た目は人間だもんなぁ。


 警官とかに職質でもされようものなら、面倒臭いことにしかならないだろう。国籍不明の人間なんてどういう扱いになるんだ?


 ……とりあえず、身分をどうにかしないといけない? そうでもしないと、住処もなにもないよね。勝手にダンジョンを作って住みつくなんてわけにもいかないし。


 まぁ、その前に、とりあえずダンジョンコアの頭をどうにかしよう。


 ってことでオペちゃん、ダンジョンコアの……OS? ってどうなってんの?


《回答:先にも申し上げましたが、2歳児程度の知能です。そして中枢システムは、生物のそれを模倣したものとなっています》


 あ、本当にデジタルな物じゃないんだね。それにしてはデータベースとかデジタルっぽかったけど。


《回答:そこはマスターの記憶から、データベースの有り様を模倣しました》


 おろ? ってことはオペちゃんはデジタル的な感じ?


《回答:一応アナログツールではあります》


 ……ふむ。あれか、サヴァン症候群の人たちと同じような感じなのかな? 能力的に。その上で一般的な会話でのやりとりができると。凄いなオペちゃん。


 ときにオペちゃん、ダンジョンコアの自身のバージョンアップというか、自己改良ってできる?


《回答:現状では不可能です。ですがそのための知識、情報、材料等があれば十二分に可能です》


 よし。それじゃその材料を掻き集め――


《助言:ダンジョンコアのバージョンアップに関し、各種機能はともかく、知能強化の点においては推奨できません》


 あ、あれ? なんで?


《回答:ダンジョンコアが自身の機能を自在に扱えるように成り兼ねません。人並に知能をもち、人以上の知識を得るとなると、危険極まりない存在となります。

 故に、知能面をこの状態で固定化し、私、オペレーションガイドシステムがダンジョンマスターとの間を取り持っています》


 ……なるほど、ダンジョンコアが馬鹿な真似をするようなモノにしないため、兼、ダンジョンマスターが馬鹿な真似をしないようにするためってことだね。


 SF映画における、暴走したAIみたいになるってことか。ダンジョンマスターがやりたい放題ってほうも分かるな。実際、ダンジョンコアの機能って、私が想像している通りならプチ神様だしねぇ。


《疑問:マスターが現ダンジョンコアの素体に憑依し、その行動を制するのではダメなのですか?》


 あー。さっきの状態か。


 それは別に構わないんだけれど、なんだか不自由な感じがしてねぇ。あと姿も私と違うじゃん。それがちょっとね。


 うーん。あの状態でいるのを常態にするのは、拠点とかが出来てからかなぁ。


 いや、そもそも幽霊のままだったら、拠点なんて作る気もなかったんだけどさ。


 あ、そうだ。私って悪霊に堕ちたりするの? なんか、ダンジョンマスターになって、いろいろと紐づけられたみたいだけど。


《回答:記憶、知能、知識等以外は、現状の状態が維持されます。生体であれば不老不死にして不死身となります。またダンジョンコアは破壊不能です。外見もそこらの石と変わらないため、ダンジョンにおいては基本、ダミーとして水晶玉のようななにかを安置、探索者をごまかすのが殆どです。

 ダンジョン攻略がされ、ダミーが破壊された場合、即時ダンジョンを崩壊させ、一定期間潜伏、後に活動を再会します》


 うーわぁ。冗談じゃなしにチートじゃん。


 ま、それはいいや。


 えっと、それじゃさっきの続きと行こう。うん。知能面は現状のままで、怖いから。でも他の機能の強化はしよう。というか、こっちの世界の情報を得てもらうっていうのが実際の所かな。ネットに繋げるようにしたいんだ。で、多分、その過程で強化しようってことになると思うんだよ。


 つか、強化方針に関してはオペちゃんに一任するよ。


《了解です》


 あ、そうだ。アイテムを無限に放り込めるようなのってアル? 私の知ってるダンジョン(架空)だと、そういうのが付きものだったんだけど。


《回答:ございます》


 生み出したモンスターが入手したものを、遠方であってもそこに放り込むことはできる?


《回答:そう調整したモンスターであれば可能です》


 よっしゃ! それじゃ、そんなモンスターをそれなりに作って、材料回収に向かわせよう。


 私はモンスター生成のために、設定ボードを開いた。



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