表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

03_残念な天宮さん


 状況を整理確認しよう。


 えーっと、私にいったいなにが起きた?




 ・朝、日課のお散歩。斎藤さんとお別れする。


 ・変な穴を発見。吸い込まれる。


 ・不明な場所(異世界)へと放り出される。何故か受肉。


 ・イケメン(恐らく神、或いはそれに属する者)に詰問される。


 ・元の世界に帰還 ← イマココ




 ということだ。


 ……ふむ。


 私も長いこと幽霊をして時世に疎いとはいえ、世間の流行りをまったく知らないわけでもない。


 電車や学校へとふらふらと彷徨うついでに、情報は仕入れていたりする。


 なので、異世界転移とやらが流行っていることも多少は知っている。


 ネットカフェでその手の小説を呼んでいる人の後ろから覗き見したりしてたしね。あとはアニメとか。


 重要なのは、天使(?)と遭遇して、無事に帰って来れたというところか。問題なのは、なんで私、受肉してんの? というところだ。


 いや、冗談じゃなしに不便なんだけれど。壁抜けもできなければ、空も飛ぶ……というか、ふわふわうろつけないじゃん。


 腕をふにふにと触る。


 ものの見事に実体があるな。本当、なんでこんなことになったんだろ?


 というか、現状、心臓が動いていないんだから、死んだ状態ってことだよね。……え、腐るの私? さすがに嫌なんだけど。


 と、そーだ。確認する方法があるじゃん。


 いや、馬鹿げてることではあるけどさ。でもやってみないよりはマシ。


 それは異世界転生、転移ものの定番中の定番。ってことで――


「ステータスオープン!」


 無駄に正面に右手を突き出すポーズをとって唱える。ってぇええええ!?


 目の前に半透明のボードが現われた。ボードというか、画面? ホログラフ?  AR? とにかく、いわゆるゲーム的なステータス画面が目の前に浮かんでいる。


 実際にその位置に映像として出現しているのか、私の視覚に直接映し出されているのかは不明だけど。


 あ、ボードと私のあいだに手を差し込める。ってことは、ホログラフみたいな感じにそこに映し出されてるってことか。これ、他人からも見えるのかな?


 いやいやいや、問題はそこじゃない。


 どういうことよ、これ。


 そもそもこの原理はなに?


 こんな風にゲーム的にでるってことは、この形式のテンプレートがあって、そこに私のデータが書き込まれてるってことでしょ。ってことは、それらを行うシステムが存在しているってことの証明にほかならない。


 ……この世界、地球にそんなシステムがあるわけ? 存在の有り様を簡素なデータ化して書式化するような。


 しかもそれを呼び出す方法が「ステータスオープン」って発声すること。多分だけれど、英語でなくとも呼び出せるはずだ。


 はたしてそんなシステムが地球に存在しているのか?


 答えは否だ。いやだって、昨今はもう異世界転生もののアニメなんか作られまくってる。異世界転生でなくとも、VRMMOなんていう近未来技術? を題材としたものも存在している。当然それらでは「ステータスオープン」なんて台詞は使われているのだ。


 声優さんがアフレコしている時点で、システムが存在しているならこのステータスボードが出現している筈だ。


 でも現実にはそんなことは一切聞かないのだから、まさにそれはオカルトの類で夢物語と云うことだろう。


 ……幽霊の私がいうことじゃないだろうけど。


 ということで、この世界にいるであろう神様が作ったシステム(ルール)には、ステータスなんてものはないということだ。


 となるとどこから出て来たのか?


「どう考えても、いま行った異世界が原因だよねぇ」


 あの世界に落っこちたから、というよりも、あの神様……天使様? に頭を掴まれて、言葉を相互理解できるようにされた結果のおまけみたいなものだろう。


 ってことは、私はあの世界に紐づけられたのかな?


 いや、でも“いまなら帰ることができる”なんてイケメンさんは云ってたよね。ってことは、そう簡単に世界を渡るなんてできないってことだ。つまり、もう繋がりは切れてるハズだから、向こうのシステムからは私は切り離されている筈だ。


 ってことは、このステータスはスタンドアローンで機能しているってこと。


 即ち、私が私を――規格化? してデータを表示しているってこと?


 いや、おかしいだろ。私、幽霊やぞ。新たになにかに化けるとしたら、悪霊とか怨霊に堕ちる程度だし、そうなるまえに自決する覚悟は出来てるんだ。


 幽霊が自決っていうのもおかしいけど。私もアキに倣って、神様の一部になろうかと思ってるんだよね。


 つか、素直にステータスとして表示されたものを見ればいいんじゃんよ。なにを現実逃避しとるんだ私は。


 えっと――



+----------------------------------------------------+


■名前:天宮理子(あまみや りこ) ■性別:女


■種族:残念


■属性:アンデッド


■称号:【聖霊】【ダンジョンマスター】【異世界帰り】



+----------------------------------------------------+


 ちょっと待て。


 色々と突っ込みたいところはあるけどちょっと待て。


 “残念”ってなんだ“残念”って。それも種族!


 ここはあれだ、“ゴースト”とか“ファントム”“スペクター”とかじゃないの!? なんだよ“残念”って! そりゃ確かに私は残念な頭だけどさ!


《回答:“残された念”という意味合いでの残念です。可哀想な者の総称ではありません》


 あ、そうなの? まぁ、幽霊なんて残留思念体――って、誰!?


《回答:ダンジョンコア、オペレーションガイドシステムです》


 ……。


 称号に【ダンジョンマスター】ってあるな。うん。【ダンジョンマスター】。それがなにかくらいは知っているよ。丸虫を輪切りにして食べるゲームを知っているからね。


 ゲームで云うところの地下迷宮とか、アリの巣みたいな迷路をダンジョンっていうのは知っている。

 でもって、それを管理する存在がダンジョンマスターというのも。


 SFで例えるなら。ダンジョンをスペースコロニーとした場合、ダンジョンコアはコロニーを管理する【中枢(マザー)コンピュータ】。そしてダンジョンマスターは、それを管理するオペレータ……いや、アドミニストレータかな?


 つか、いつの間にそんな大層なモノに私はなったんだ!?


《回答:マスターが当ダンジョンコアに召喚された際、世界間移動の勢いが過ぎたためにダンジョンコアと激突。同時に契約も行われましたが、マスターが実体を伴っていなかったため、急造ではありますが肉体を生成。ダンジョンコア本体もその肉体内に設置されました》


 は?


《その後、神の端末の手によりマスターが元の世界へと戻されたため、当ダンジョンコアは本来のダンジョンルールより逸脱。記録にある限り、唯一の完全なスタンドアローンのダンジョンコアとなりました》


 ちょっ!? 詳しく! オペちゃん、そこんとこ詳しく!!


 私は慌てて状況の経緯を訊ねた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ