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11_予定を決める天宮さん


「リッコ、これから君はどうするのかね?」


 クラウスさんが私に訊いてきた。


 ナディアちゃんはいまはお昼寝中だ。落ちに落ち切った体力を戻すために、いまは体力錬成のためにトレーニングに励んでいる。リハビリと呼ぶべきかな?

 とはいえ、落ちた体力なんてすぐには戻らない。疲れ果てていまはバタンキュー、というわけだ。


「とくになにも。やるとしたら、悪霊退治だ。ライフワークみたいなものだったからな」


 そういえば、私の話す英語はイントネーションだか言葉選びだかのせいで、かなり男性的らしい。いや、そんなのいわれても分かんないよ。確かに、英語は日本語に比べるとかなり表現が直接的と云うか、ものいいがはっきりしているように感じるけど。


「正直に云おう。これから君はかなり厄介なことになると思う」


 はい?


「君は私たちを治した。私たちはそれなりに有名だし、私たちの状況など広く知られている。それがこうして完治したわけだ。当然、誰が治した? どうやって治療した? となるだろう」


 あ……。と、私は顔を引き攣らせ、思わず頭を抱えた。


 そうだ。それを考えていなかった。なにをやってんだ私は。


「もちろん、君の事を吹聴するつもりはない。私とナディアだけなら、情報の秘匿は容易かっただろうが……アデリナがなぁ」


 あぁ、彼女、女優さんだしね。いまはカムバックに向けて頑張ってるし。


「彼女の女優復帰は私が彼女の個人事務所を起ち上げることで、外部のくだらない雑音を排除するつもりだが――」

「面倒なのはどこにでもるからなぁ。まぁ、私たちのことは知らぬ存ぜぬでいいと思う。私たちも、いつまでもここで世話になるつもりもないからな」

「私としては、いつまでいてくれても構わないんだが。ナディアも懐いているし」

「いや。どうにも根っからの日本人でね。異国の治安はやはり怖いものだよ。例えもう死ぬことはなくても、怖いものは怖い。幽霊なのに、ついうっかりこんな肉体を持ってしまった弊害だな」


 やれやれと肩をすくめてそう答えると、クラウスさんは少しばかり考えるように口元に手を当て、軽く首をひねる。


「私はネットなどの情報でしか知らないのだが、日本の治安はそれらの通りに安全なのかね?」

「安全……になるのだろうなぁ。この国や、ヨーロッパ諸国を基準とすると、日本人はある意味狂ってると思われるだろうな。夜に子供の一人歩きさせるなんてこともあるしな」


 クラウスさんが目を剥いた。まぁ、そうだろう。このあたりでそんなことをしようものなら、行方不明待ったなしだし、そうでなくとも、そんなことを許した親は総スカンだ。


「そのくらいには安全だ。まぁ、夜の一人歩きは推奨されるわけではないがね」

「ふむ。それなら、私も拠点を日本に移すとしようか」


 は?


「なに、商売はどこでもできる。それに、日本なら商売をする上での問題も無いに等しい。ついでだから、アデリナの芸能事務所の本拠も日本にしてしまおう。それなら奇蹟の秘密を嗅ぎまわるうるさい連中をシャットアウトするのも、簡単にできるというものだ。なにより、それほど安全ならナディアのことも安心だ」


 そういって彼はいじわるそうに微笑んだ。



★ ☆ ★



 ということで、日本にみんなで行くことになりそうだよ。


《おめでとうございます――ということでよろしいでしょうか?》


 私の微妙な表情を読み取ったのか、オペちゃんが確認してきた。


 うーん。問題はないんだよね。ただ、気に入られ過ぎたかなぁとは思っているよ。ほら、私たちは不老不死なわけじゃない。私たちは歳をとらないけど、彼女たちは年老いていく。どうしても妙な軋轢は生まれると思うんだよね。


《そこは、うまく立ち回って逃げる方向で行くしかないのでは?》


 そうだねぇ。


 ところでだけど、ミーナさん。やたらと顔色が悪いのはリッチだからなの?


 恐ろしい速度で各種知識を身に着けている法王様のことを訊ねる。彼女はいま、庭の木陰で優雅に読書中だ。ゆったりとしたゴージャスな白いワンピースがとても似合っている。……読んでる本がくっそ分厚い法務関連の書物なのが、雰囲気を妙なことにしてるけど。


 彼女の国籍もクラウスさんが用意してくれた。曰く、クラウスさんとナディアちゃんのふたりが救われたわけだから、対価もふたり分との事だ。


《彼女の顔色が青いのは必然です。彼女はブルーブラッドですから》


 ん?


 ブルーブラッドって、青瓢箪な貴族を揶揄ったことから生まれた言葉だよね? 日に当たらないから青っ白くて、血管が青く見えるってことからついた。


《いえ、彼女の血は青いのです。こちらの世界でも、遺伝子異常から青い血の者が存在しているでしょう? また、現在も存在しているのかは不明ですが、青い血の一族がいたようです。青い血の者は、先にもいいましたが遺伝子異常から健康に問題を抱えているのですが、その一族はそういった面は一切なかったようです。婚姻などにより、普通の赤い血が入ったことで、その一族にはもう青い血の者が生まれることはなくなってしまったのかも知れません》


 お、おぉう? そんなの初めて知ったよ。


 服用した薬の飲み合わせが悪くて血が青くなったって話は、ネット(ネカフェでの盗み見)で見たことがあるけど。


 というかオペちゃん、よくそんなこと知ってたね。


《回答:クロウラーを介し、シルバ―バーグ邸より回線を利用させていただきました。簡単に手に入る情報の量に狂乱狂喜しています。素晴らしい!!》


 お、おぅ。嬉しそうでなによりだよ。


《報告:マスターに報告です。一度報告すべきではないと処理した内容ですが、追加情報が入りましたので、ここに報告します》


 なんか、随分と持って回したような云い回しだね。


《報告:怨霊索敵ですが、大規模なものを発見しています》


 は?


《ただし、これは異世界となります》


 いや、ちょっと待とうか。なんで異世界にまで索敵を出しているの?


《回答:ダンジョンコアが張り切った結果です》


 ……あぁ。


 いや、ダンジョンコア、なんというか幼児なわけだけれど、忠誠心MAXなものだから、なにかしら頼んだりすると大変なことになるんだよ。


 だからオペちゃんを介してアレコレやっているわけだけど、私が頼んだ悪霊、怨霊探索は長期ということもあって、その活動はダンジョンコアがやってたんだよね。探すだけだから、特に問題ないだろうってことで。


《報告:尚、その異世界は、かつて私たちがいた世界ではありません》


 ちょっと!? いや、どこまで探しに行ったのさ。というか、地球にはもう悪霊だのはいないってこと?


《回答:なぜか地球の探索は後回しにしているようです》


 いや、なんでよ。


《推測:以前、新規ダンジョンマスター探索をしたところ発見できなかったためかと。どうせ探しても見つからないと思ったのでは? あの廃病院の悪霊に関しては、マスターが直接見つけたわけですし》


 そういや、ちょっとお散歩感覚でウロウロしてたら見つけたんだっけ。


 んで、報告を握り潰していたのに、ここにきて報告したのは何故?


《回答:生存者を発見しました》


 ……。

 ……。

 ……。


 ……いや、待ってくれないかな。いま、すっごい不穏なワードを聞いたんだけど?


《繰り返します。生存者を発見しました》


 ……。その世界って、どんなことになっているの?


《回答:いわゆる、ゾンビアポカリプスです。しかも最悪なことに、各ゾンビ全てが自己修復能力もちであるため、中途半端に腐った死体の状態で安定しています。世界はすべてゾンビで溢れかえり、社会はおろか世界そのものが終了。神も世界を見限ったらしく、完全に放置されているようです》


 酷すぎないかな? で、生存者をみつけちゃったと。


 はい。


 良く生きてんな、その生存者。なにか特殊能力もち?


《回答:現状では不明です。この世界のゾンビは、いわゆる細菌兵器によるものです。ですが、自己修復能力は魔法的なものであるため、これらゾンビ全てが活動不能となるまでどれほどの期間が必要となるか不明です。サイエンスとソーサリ―のハイブリッドなどというイレギュラーであったため、まるきり対処できず、滅亡一直線となったのでしょう》


 あー。修復と云っても、材料は必要だしね。魔法でっていっても、魔力……マナ? そういったものが無尽蔵ってこともないだろうし。その感じだと、植物ももうダメなんでしょ?


《回答:孤島などではかろうじて生き残ってはいますが、時間の問題です》


 うん。理解した。鳥とか魚か。ドラマだとゾンビアポカリプス物は最後解決したりもするけれど、実際は無理だよねぇ。


 つーかさ、細菌由来のゾンビってなると、厳しくない? ミーナさんの法術が役に立たないんじゃ? 魔法由来の再生能力を破壊する程度で。


《回答:法術は魔術の別理論体系であるため、例え細菌由来のゾンビであろうと殲滅できます。浄化の類は効きませんが。であるため、先日の悪霊退治で使われた法術であるならば、【Stigma(聖痕)】等の浄化系の法術以外は十分以上の効果を発揮します》


 ってことは、私たちが突撃しても問題ないってこと?


《回答:問題ありません。なんでしたら現代兵器を錬成して持ち込めばよいかと。火炎放射器、機関銃、迫撃砲といったものだけで無双できます》


 お、おぅ。


 いや、純日本人には縁遠い代物ばっかりなんだけれど。でもまぁ、虎徹を振り回すよりはずっといいか。ゾンビ相手に近接とか嫌だし。


 あ、虎徹……六代虎徹だけれど、クロウラーに回収してきてもらった。あの蜂の妖怪を斬ったせいか、妖刀化が進んでより物騒になってたよ。まぁ、持ったからって、誰彼構わず斬り殺したくなったりはしないけど。某斬鉄剣みたいな性能になっているだけで。ついでに物の怪の類も斬り殺せるだけで。


 あんな得体の知れない性能になったのって、アキのせいだよなぁ。あの娘、刃物マニアだったし。


 ところで根本の話なんだけどさ。異世界ってそんなお手軽に行けるの?


《回答:問題ありません。世界を繋ぐのではなく、転移での移動となりますので。向こうに送り込んだクロウラーに相互転移用のポイントを構築させれば問題なく転移できます。ダンジョンコアがこの地に転移した方法と同じです》


 そっか、それじゃちょっと行ってみよっか。


 なにより科学と魔法が入り混じってた世界みたいだしね。



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