令嬢と貴公子の駆け引き②
「綺麗だね」
「うん。湖畔がね」
帰りたい。帰って原稿仕上げたい。
あ〜!でもこの人ほんとにヴィンと似てる。
名前、ユリウスって言うんだって。
話を戻そう。この人…ユリウスと一緒にいるのは列記とした経緯がある。
それは今から2日前のこと…
_____2日前
やばい。締め切りが近い!
コンコン
誰⁈ノックなんかするの!もしかして…ヴィン?
「お嬢様?」
「どうしたの?」
流石に資料やら原稿やらが散乱しているので、ドア越しに侍女ポピーと会話をする。が、一つ気になったことがあった。
「私宛の手紙?」
「そうなのです。エルシアお嬢様に…。しかしながら、お嬢様?明記されているのは"麗しの我が幻の姫"と。もしかして…?だ、旦那様に」
「ま、待って!」
散乱していた原稿とペンを机の中に突っ込み、音を鳴らさないように鍵を開ける。
そして何事もなかったように扉を開け、ポピーから手紙を奪った。
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我が愛しのエルシア姫
その後お加減はいかがですか?
私は、元気じゃありません。
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は?待って元気じゃないなら手紙送るなよ。こっちはガチで忙しんだっつの!
あら、いけませんわ。口調が…おほほほほ。よし、次!
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それはあなたに会えないからです。
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突っ込みどころ満載な手紙やな。次!
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貴女のその吸い込まれるような菫色の瞳。その瞳を縁取るような美しい琥珀色の髪。その全てが貴女を
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恥ずかしすぎて読めんわっ!!
何なの?本当!
飛ばして次!!
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今度湖畔にでも行きませんか?
今の季節、ディアス湖畔の周りに美しい花々が咲いているのです。是非ピクニックがてらにどうかと。
貴女がお身体が弱いのは重々承知しております。ですが、あまり出ないのも毒だと思います。是非私とお出かけしませんか?
お返事お待ちしております。
貴女のユリウス
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そういうことですか。
返事を書きますか…。勿論お断りのお手紙をね!
「エルシア!」
「お、お父様とお姉様」
「遂に、遂にエルシアに春が!!」
「エルちゃん?お返事は?今から書くのね!」
いや、お断りだけど…これはお姉様に監視されるわ〜。行きたくなーい!
「ポアラ?便箋と封筒を持ってらっしゃい!で?この殿方はどこの方?」
え〜?知らんよそんなの。
「わからないですわ。だって彼、お名前しか教えて下さらなかったもの」
「そうなのね…いいわねぇ!純情!シアの最新作よ!」
そう…私は『花燃ゆる2人』の主人公とヒロインの幼少期を描いた『初恋純情〜花燃ゆる2人の行方〜』を発表した。因みにこの姉、ヴィーナ・アリア・バーベントは奇才とまで言われる絵師バーベント伯爵の夫人。彼女は私がシアである事を知らない。こうして姉に監視され返事を書くことになった。
________________現在
うん。帰りたい。ユリウス、…心底つまらない。
「ねぇ。ユリウス様。貴方はどこのどなたなの?」
「じゃあ今日は、僕の家についてね。僕は、ユリウス・リーフ・フォーサイス。フォーサイス家の次男さ」
フォーサイス家?なんかどっかで聞いたぞ?
「……」
「え?それだけ?」
「えぇ。それだけですわ。ユリウス様、私、この後、お約束があるの」
「じゃあ、帰ろっか」
私の手を取るユリウス様。あれ?この間踊ったのは本当にユリウス様?