執事の秘密
俺の名前はヴィンセント・リーフ・フォーサイス。俺は本当は執事なんかじゃない。フォーサイス公爵家の嫡男だ。今は訳あって、遠戚であるサリヴァン伯爵家で世話になっているのだ。理由としてはとても単純なもの。政権が変わる度、王に伴い国の舵取りとも言える宰相が変わる。各派閥から1名〜2名推薦するものなのだが、各派閥の筆頭が、王派のウェズレイ伯爵家、王太子派閥であるフォーサイス家。側室派のアーベント侯爵家。何より最近勢力が一層増し、時期当主で、俺を邪魔者扱いに思っている、王妃派のロペス公爵家、第2王子派で王妃派のマーティン侯爵家。最後に中立派のルーカス公爵家とサリヴァン伯爵家。大体こんな感じだ。最も、俺が狙われるのも王太子が狙われるのも仕方のないことだと思う。この国の王太子は側室の子。その後、正妃である王妃が第2王子を設けた。なので第1王子である王太子がその座についてもなお、王権者争いは泥沼化をしていた。そんな中、俺は父親に呼び出され、現在実家にいる。
「あ、兄さん!」
父によく似た深い紺の髪に、母親譲りの星のような瞳。
こいつは弟のユリウス・リーフ・フォーサイス。因みに、俺は母親譲りの銀髪に父親譲りのサファイアの瞳。全く似ていないと言われても納得できる配置だ。
「ユリウス。久しぶりだな。どうだ?寄宿学校は」
「うん。身分隠してるからね、結構、罪悪感とかせめぎあって楽しい」
「何だそれは」
弟は、どんな状況下でも楽しむ奴で、一旦弄れる人が見つかるとからうやつだ。さらに言えば、可愛い顔の作りを持っているのに、蓋を取ると腹黒い策士だと思う。
「父上は在宅か?」
「あー、今日はね…あー、えーそのー」
「何だそのあきらかな棒読みは」
「母上はね?父上と……」
「旅行でも行ってるのか?」
「うん」
何なんだ?あの父親は!人を呼び出しといて…
バンッと音を立ててサロンに入ってきたのは、少しワイルドな顔立ちの男性…この男性こそ俺たちの父親で、フォーサイス家の当主ガリュエント・ルーズ・フォーサイス。
父上は俺を抱擁してくる。マジ暑苦しい。
「たっだいま!我が息子達よ」
「貴方。ヴィンセントが明らかに嫌がっていますわ」
「そうかそうか」
父を止めたのは妻で俺たちの母親である、
ラディアン・メル・フォーサイス公爵夫人。リーフ伯爵家の出身で、父とは恋愛結婚らしい。
「父上、急に呼び出てどうかなさいましたか?私をこの屋敷に呼び出すって事は」
父も先程のテンション高めの雰囲気から当主の顔へと変化させ、話を進めてきた。
「あぁ。お前の読み通り、王妃派は動いた。それに伴い、この夜会が開く」
「夜会?」
「そうだ。王子たちが王宮で妃選びのための夜会を開く。王妃が自分の駒となる令嬢でも見つけるんだろう。何というか魂胆が見え過ぎてて」
王妃は駒となる令嬢を?何かがおかしい。息子を王にしたいなら令嬢なんて駒にしなくてもいいはずだ。まさか⁈
「父上」
「そうなのか?」
「私何も言ってませんけど」
「身を固めるのか?王子の三の次だがいい子を見つけるんだぞ?」
「はぁ」
父はどこかネジが飛んでいると思う。
だが、父はいつも大事な所ではぐらかしている。まるで俺を試しているかのように。