お嬢様と執事の非日常
私が彼と“付き合う”事となって、1週間が経った。今日は次巻に向けて、執筆中だ。
「あー。面白くないわ。もう少し、捻りたいわね……うーん。波を乗り越えたい…」
「お嬢様」
「びっくりした。ヴィンか。ノックぐらいしなさいよ」
「しましたよ?3回ぐらい。余りにもお嬢様がご熱心でしたからね?……エル?そろそろ慣れろよ」
彼は私の腕を掴み、自分の方へ引き寄せると、形の整った唇と重なり合う。
「可愛い」
「ち、ちょっと!」
「お嬢様はこんなキスを書かれるのに自分の事となると動揺ですか?ふっ、顔真っ赤。それではお嬢様?お茶をお持ちしましたので、あまり根を詰めないように頑張ってくださいよ」
彼が出て行ったあと、彼の淹れたお茶を飲む。
「ん?そうか‼︎フィリップを……」
経過する事、軽く3時間……。
「出来た!」
よし!書けたぞ〜!寝よう。
よろよろとした足取りでベッドに着く。エルシアはそれまで着ていた服を脱ぎ捨て、寝巻きに着替える。
はぁ…。極楽、極楽。私はゆっくりと夢の世界へ〜
「…ル。エル。エルシア」
この声…ふふヴィンね
「大好き」
**ヴィンside
「お嬢様、失礼しますよ」
ん?エルが寝ている。
彼女の机の上には沢山の原稿用紙。それを手により、読んでみる。
「『どんな事があろうと俺が君の鉾となり、盾となって君を守る。君を愛してる。愛して止まないからこそ、もう少しだけ、俺を信じて待っていてくれ』…か。俺は…フィリップと一緒だ。いや、それ以上にヘタレなのかもな」
どんな境遇にでも彼女を1㎜も傷つけずに守り抜く自身は俺には無い。でも、彼女を手に入れたい。自分が強欲なのが分かる。自嘲する。
事が起これば覆すことができる権力でさえ持っているのに。俺は何をしてるんだろう。
一体何をしたいんだろう。
「エル。エル。エルシア」
愛おしい彼女の名前を呼ぶ。
「大好き」
見る見るうちに、顔が熱くなるのが分かる。
こんな顔、彼女に見せれない。
彼女の額に唇を落とし、寝顔を覗いた。
「……もう少し寝かせるか」
再び彼女の額に唇を落とすと、彼女の部屋を後にした。