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貴公子執事の本音

あれは幾つの時だったかしら…。この手の感触、温もりを覚えている。私は叔父に会えると言われ、兄と姉に手を引かれとある大きな屋敷に足を踏み入れたのを覚えている。


「この子が末娘かい?」

「あぁ。エルシアだ。リリアンにそっくりだと思わないかい?エルシア小父さんに挨拶をしなさい。お前たちも」


兄と姉が私に手本を見せるように叔父にあたる男性に挨拶をする。


「エルチア・ユニャ・チャリバンでちゅ。叔父ちゃま!」


. . .

そうか……あの叔父様が、、、

フォーサス公爵だったなんて…。


するとそばにいた、フォーサス公爵様が口を開いた。


「君には申し訳ないと思っているよ。エルシア」


そんなことを言われても、いまいちピンとこない…。公爵様に、振り回された覚えもないし、そもそも謝られても困るというかなんというか。


「ははは。君は本当にリリアンにそっくりだね。その顔はいまいちピンときていない顔だ。そうだろう?」

「…はい」


こちらを見て笑う公爵様を見ていると、ヴィンの笑みを思い浮かべる。

________あぁ。本当にヴィンのお父様なんだわと改めて実感する。


「息子達のことだよ。すまないね。特にヴィンセントは」

「そんな。ヴィンは…彼には、本当にいろんな迷惑をかけてしまって。でも、やっぱり…私」

「お前達を見ればわかるよ。リリと義兄さん見たいだ」


フォーサス公爵様の話をうんうんと聞いているとものすごい勢いで扉が開いた。私は父の部屋のカーテンを開けて扉の方を見る。

そこに立っていたのは、身体にぐるぐると包帯を巻かれたヴィンだった。


「エル!」


私は、彼の方に行き椅子に座らせる。先ほどあれだけ深い傷を受けたはずなのにここまで走ってきたのだろうか。


「ヴィン…身体…」

「ん。心配するな」

「嘘。だってこんな傷…」


彼の前では泣かないって決めたのに…心配させないって決めたのに…。目頭がどんどん熱くなっていく。

エルシアは決して涙は見せまいと俯き自身のドレスの布をギュッと握る。


「エル。俺に顔を見せて?」

「いや。ヴィンは私と一緒にいると傷ついちゃうし、苦しめちゃうわ」

「エル?」

「でも、私は、、、、やっぱり、、、」


伝えたいのに、どうして突き放すような言葉を言ってしまうのかしら。


「エルシア!」


彼の呼ぶ声に、ビクッとしてし、つい彼の顔を見てしまうと、溜めていた涙が溢れでてしまった。

エルシアの溢れ出る涙をそっと指で拭い、割れ物を扱うように抱きしめる。すると子供をあやすような話し方でヴィンセントは話し始めた。


「エルシア。ごめん。あんな形で突き放して…お前を守る為だったんだ。エルと別れたあと伯父さん…エルの親父さんからエルの様子を聞いた。エルが、、エルシアがずっと泣いてるって。本も出てなかった。こんな守り方はエルシアを傷つけるだけだって気づいた。本当にごめん。許してくれとは言わないし、気の済むまで殴ってもらってもいい。だけど俺はエルシアの側にいたい。こんなこと言う資格なんてないかもしれない。やっぱりお前じゃなきゃダメ。これからもエルシアの笑顔をずっと見てたいし、他の誰かの男のそばで笑ってるエルシアは見たくない…エルシア。側にずっといさせてくれ」


何となく、彼が突き放す理由は別れた時に分かっていた。でもその事実は、受け入れられなくて、でも受け入れたくなくてどうしようもない葛藤で夜な夜な枕を濡らした。

私は、顔を彼の胸に押し付けたまま、今まで殺していた声をそっと出す。


「嫌だって言ったらどうする?」


きっとヴィンは驚いた顔をしてることだろう。


「そうなったらお前を力尽くでも奪いに行くよ」


ヴィンは、私の顎にそっと手を当て自分の顔の方に向ける。

ヴィンが顔を近づけ…

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