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伯爵令嬢の危機察知

あれから、センもといユリウス様から手紙はこなかった。

と、言うものの約束の期限はもうすぐだった。その最終期限的なのは多分2日後に迫った、私とルー兄様の婚約相手探し。

憂鬱でしかない。

因みに、シアの最新巻は無事に発表されて今まで以上の売り上げとなっている。私は、もうあんなことこりごりだと思いっているため、アンネさんに手紙を書き、暫くは本社に原稿を送る形となっている。

本当に申し訳ない。


「ヴィー姉様。どうして、バーベント邸に戻らないの?」

「彼と喧嘩中だからよ。エルちゃん聞いて?」

「うん」

「私ね、1人でシアの新作をね、読んでいて彼にも共感して欲しくてお勧めをしたの。そしたら彼なんていったと思う?」


こんなことを聞く機会なんてそうそうない。なんと言ったんだろう。


「こんなただの想像を読んで何が面白かって。いくらあの人が絵を描くのに特化しててもそんなこと言うから作品が売れないのよ。彼がそんなこと言うから許せなくてて出来ちゃった」

「そ、そんなにシアの作品って面白いの?」

「そうよ!彼女は凄いわ。きっと彼の言う通り想像かもしれない。だけど彼女の作品はそんな想像を読んでもらいたいんじゃないんだと思う。私の考えになっちゃうけど、彼女はとっても苦労をしている家庭なのかもしれない。だけどね、この作品にはシアの家族への感謝や愛が込められているわ。だからエルちゃんも是非読んでみて?」


ヴィー姉様のその言葉を聞いて今まで自信がなかった、私の作品に込めた思いが読者…ヴィー姉様に伝わっているのはすごく嬉しかった。

彼女から渡された私のデビュー作…これは出版する予定はなかった。

だって……だって。それは…私たちサリヴァン家の『愛物語』シナリオ。私たちサリヴァン家を題材にした物語だった。なぜそんな事まで知っているのは少し怖い気がするが、嬉しい。でも、愛物語は全然売れなかったはずなのだが……?ふとこの間アンネさんからの手紙になんか書いてあった気がする。


『愛物語、爆発的に売れてるわ!多分、貴女の作品に心を動かされた人がデビュー作を買っているのよ。小説家冥利に尽きるわね。貴女の読者に届けたい思いが全てこの作品に込められているからきっと買ってもらえたんだわ。これからも頑張ってちょうだい。応援しているわ』


だったかな?そっか…。本当に小説家冥利に尽きますわ。

姉から、自分の本を受け取り本を開いてみることにした。開いてみると沢山の付箋やメモがされていた。それほど姉はシアの作品が好きなのだろう。部屋に戻って私は姉の本の表紙の裏にシアのサインを書いた。


______________夜会


晴れやかな衣装に身を包んだ未婚の令嬢。そしてそんな令嬢たちを我先にと狙う貴公子が集っている王宮の夜会。貴公子は勿論のこと今回の夜会では第1王子がお妃選びに参戦している。令嬢達の狙いは勿論王子。優良物件であるルー兄様も狙われている。令友(令嬢の友達)曰く、今日は今までにない以上のあたりの夜会らしい。そんなのどうでも良いからもう…帰りたい。


「エルシー」


そう声をかけてきたのは数少ない令友のガルフ伯爵家のリアンヌ・ガルフさん。

伯爵家出身の私にとってなんて呼べばいいのかわからない。けど彼女には愛称を許している。


「リア!」

「今日は凄いですわね」

「そうね。特に殿下目当ての方が沢山」

「でもその殿下、エル様を見ているわ」


そんなことはないと思い、私は殿下を目で見ると殿下がこちらに気付きふわりと笑った。

可愛い…


「ねぇ、エルシー。今日はヴィンセント様もいらっしゃるんですって」

「ヴィンセント様?」


ヴィンセントと言う名の人を聞いたことはなかった。だいたい貴族図鑑に載ってるはずなんだけど?


「ヴィンセント様は、とても奇才な方で次期宰相とも言われているわ。それに、ヴィンセント様は殿下よりも顔が整っていらっしゃって、すらりとした背丈がたまらないそうよ。ヴィンセント様は殿下と従兄弟にあたるお方で、ヴィンセント様のお父様は公爵なのだそうよ」


わぉ。彼らが優良物件…。

すごいね。うんうん。私は早く帰りたい…


そう思っていると唐突に刃物を持った男が私の腕を掴み抱え込むと首元にそれを押し付ける。


「エルシーっ!!」


リアが耳を塞ぎその場でしゃがむ。


「動くなっ!この中の誰か1人でも動いたらこの女の命はないっ」


服の手触りからして多分下級の貴族だろうか。私は護身術を使おうにも、抱えどころが悪いのかビクともしない。

辺りをキョロキョロ見渡してみると、父の姿も兄の姿もなかった。

一体どうなっているのか。

怖い…首元にあるそれは少しづつだが私の肉に食い込んでいく。痛い…助けて…誰か。


再び、辺りを見渡すと誰も目を合わせようとしない。むしろ令嬢たちは男たちの手により逃していた。リアンヌは壁まで避難しており令嬢達が別室へと逃げている中、逃げようとはしなかった。私の目をじーっと見つめ大丈夫。と口パクで話しかける。

私はこのまま死ぬのだろうか…


お願い。助けて…ヴィン


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