2022、五月某日。
祖父が死んだ。少し前から体調が悪化していたので、何の不思議もない。人工透析が必要だったが、人工透析を受けるための準備の手術が上手くいかなかったのでどうしようもなかったというか。主にボケが進んで安静にできなくなってきたのが原因である。最後に見た時には骸骨のような顔になっていた。棺の中でもやはり骸骨のような顔だった。主に頬が完全にこけてしまっていたことが原因だろう。祖父は栄養が碌に取れていなかったのか、だいぶ軽くなっていた。40㎏程度らしい。
今回初めて私も納棺に同席したのだが、文字通り旅支度だった。まあ宗派にもよるらしいが。脚絆と手甲をつけて、懐には六文銭を入れる。あと三角布。創作の幽霊が脚絆などを付けていないのは、宗派の違いなのか、きちんと弔われていないからないのか。
一年も経たない内に三人も亡くなってしまったわけだが、言ってはなんだが、祖父が死んだことそのものにはあまり驚きはない。妻を亡くした男性は長生きしないという統計も聞いたことがあるし。介護度の等級も祖母より祖父の方が悪かった。あえていうなら、三度目だったのが驚きだ。いや、父は完全に突然死すぎて未だに何かよくわからないのだが。次のお盆で初盆を迎えるのが三人ってマジかよ。
祖父とはなんというか、あまり明確にこれといった思い出がない。同じ空間で過ごした時間自体は同居人相応にあるのだが、かといって何をしたという覚えもない。祖母がめちゃ喋る分祖父が寡黙だったのもあるかもしれない。私もそう人と会話したがる方ではないし。心情的にもなんというか、今のところ"無"である。
祖父の葬式だったので、家族葬だが当然祖父の兄弟とその親族も呼ばれた。まあ見た事…ある気もない気もする感じの老人だったが。ほぼ交流はなかったと思う。全然覚えがない。私が覚えてないだけかもしれないが。思えば祖父母の子供はもう叔母しか生きていないのだ。祖父の兄弟も生きてたり死んでたりするだろう。
甥っ子はある意味私と似たポジションだなとも思った。私の生まれた年、数か月後に曽祖父が亡くなっているのだ。まあ父が死んでいるのでこっちサイドの直系親族が母しか残ってない状況になっているが。旦那くんの方の親族はまだ生きてるので…うん。
遺骨は割としっかり残った。ペースメーカーとかも残っていた。入りきらない骨や燃えカスが捨てられるなら、結局お墓って意味あるのかなって改めて思った。父は大分余ってたし。祖父はそこまででもなかったが。結局、お墓に入れる時は直でざらざら入れるし。いや宗派にもよるのかもしれんが。
結局のところ、葬儀も埋葬も死後の世界も生きている人間のためのものだ。そういえばとある文豪が葬式に何度も参加して葬式の名人みたいなことを言っていたらしいが、私も見習いくらいは名乗れるだろうか。いや、別に名乗りたいわけではないが。
正直なところ、父の死後の後始末もまだ終わっていないのだ。いや、大体父が突然死んだのが悪いのだが。突然すぎて残された家族にはよくわからないことが幾つもある。突然の事だったから引継ぎ作業が一切できていない的な。まあ父本人だって予期せぬことだったろう。そもそも自分がいつ死ぬかわかってる人なんてそうそういないだろうが。
他人の人生の評価など私にできるわけがないのだが、うちの家族は大体マイペースなので不幸ではなかったんだろうなーとは思う。なんやかんや我は通してるというか。主張が強くないけど強い。やりたいことがあれば大体各自で勝手にやっている。
流石に次は何年も後のことだろう。そうであってほしい。そんないつ死んでもおかしくないような健康状態の親類は心当たりがない、はず。いや、交流がないと顔と名前が一致しないのだが。少なくとも今回顔を合わせた人は大体元気っぽかった。
そういえば例のアプリで父のレベルを越えた。母たちと一緒に十万歩チャレンジも達成したし、弟も最近始めたようである。なんかいろいろ増えてきたし、フレンド機能に存在意義が出てきた。…フレンドの表示順、登録順になってるみたいなんだよなぁ。