プロローグ
「また死者ですか。今日は特に多いですね。」
朦朧とした意識の中、知らない女の声が聞こえてくる。
「いくら天界が人手不足と言っても、この作業量は流石におかしいでしょう。」
ぼやけていた視界が段々と明瞭になっていく。
そこは、小さな椅子が一つだけある、ただただ白い空間だった。
「死亡理由は自殺ですか... それもかなり酷いイジメを受けてますね...」
そうだ。俺はマンションから飛び降りて自殺したんだ。あの地獄のような日々から逃げ出すために。
「おや? 目がさめたようですね。」
それは、これが女神だと言われればああそうなのかと納得してしまうような人間離れした美貌を持つ女だった。
まあ実際女神なんだろう。
流れるような白髪に整った顔立ち、完璧なスタイル。
ファンタジーでよく見るような服を着ている。
「私は女神。これから、あなたの魂の行く末を決めさせていただきます。何か願いはありますか。」
これが自分の人生を変える最後のチャンスかもしれない...
俺は、土下座して頼み込んだ。
「来世は裕福な家庭で幸せに暮らさせてください!!」
もう二度と、あんな屈辱を味わわないために。
「分かりました。あなたには幸せな来世が待っていると私が保証しましょう。」
俺は、泣きながら何度も何度も礼を言った。これでやっと苦しみから解放されるんだ。
暖かく笑った女神が、よく分からない呪文を唱えると体がふと軽くなり、視界が真っ白になり、俺は自然と意識を手放した。
どのくらい経ったのだろうか。俺は硬い床の上で目を覚ました。
あの白い空間でのことははっきりと覚えている。
となるとここはどこだ? 暗くて何も見えない。母親のお腹の中だろうか。
そんなことを考えていると突然視界が明るくなった。
そこは希望通り暖かく綺麗な病室ではなく鎖に繋がった大勢の奴隷らしき人々が鮨詰めにされた薄汚い牢屋だった。
一瞬でも期待した異世界転生に失敗し絶望の崖に突き落とされた。
前世では散々クソ野郎共に裏切られたが女神にさえ裏切られるのかよ....あの阿婆擦れがぁ...
「ウあああああああああ頭が...クソ...」
あんな過去思い出したくすらないのに、思えばいつも俺の周りには、汚い、穢らわしい、吐き気がすような人間ばかりだった。
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