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8話:あなたの1日はどんなですか?

「……」


 今の時間は二時間目の体育が終わり、休み時間。

 ティコが立ち止まっているのは保健室の扉の前。

 保健室の辺りは生徒の教室はなく、人気が少ないので立ち止まって俯いているティコはよく目立つ。

 ティコは体育の時間が終わると、着替えもせずに真っ直ぐ保健室に行った。

 だが、勢い良く向かったはいいものの、今のティコにはさっきまでのペースはなくなり、保健室の扉の目の前で立ちすくんでる。



 そりゃそうだ。

 何せヤコが竹次郎に連れて行かれた原因を作った張本人やと思ってるから。

 ま、ホントはあの不良の四人組が悪いんだろうけが……。


(ティコよ、そんなマイナス思考過ぎなのはよろしくないんだぞ?)※大林


 でも今のティコの心境は、先生に呼ばれたヤコがその原因になった自分に会おうとしないのが、どうしても気がかりで、頭も混乱してしまい、ヤコと顔を合わせるのがなにか気まずい。


 本当はヤコは石原の尋問的な行為に精神を吸い出されて、体を活発に動かす体育を、ただ疲れるからサボりたかっただけなのだが、廊下にムワムワただよう暑さを受けているせいもあり、その辺を冷静に考えられない事も、ティコが勘違いしてる原因かもしれない。


 と、なんやかんやと言って、ティコが立ちすくんでいたら───


ガラッ


「ひやっ!!?」


 突然開いた保健室の扉。

 目の前に開いた扉にティコは拍子抜かしてしまった。


「ありゃあ?ティコォ?」


 扉を開け、保健室から出てきたのは皆さんご存知、主人公なのに最近微妙に目立ってないと(作者が)感じるヤコだった。


「どったの?そんなバカみたいに深刻な顔して」


「バカみたいって……」


 ヤコの言葉全部が予想外だった。

 いつもとかわんない口調や顔つき。


「まあ、とにかく入れば?廊下は暑いだろ?」


「う、うん……」




 保健室の中は冷房が入ったままで、保健の先生は留守だったので、ただいま保健室内はヤコとティコの二人だけ。

 保健室に一つだけあるベッドが全く乱れてなかった。

 ヤコはベッドには寝なかったのだろう。


「ティコ、左の膝、擦りむいてる」


「え?」


 ヤコがティコの左膝を指差す。

 小さい擦り傷がティコの左膝についていた。


「あ…飯島先生、今日も授業きつかったから……」


 普段のティコは運動神経抜群だが、今回はヤコの件が気がかりだったから授業に集中できなかったが一番合ってる。


「えーっと……確か消毒薬がここに───」


 そう言ってヤコは棚から救急箱を取って、消毒液を二つ取り出した。


(なぜ二つ?)※小林


「ええ!ちょっ、いいよっ!」


 あわてて顔を規則正しく横に振り回す。

 保健室の冷房の風が涼しい筈なのに、なぜか顔が熱くなって汗が出るティコ。

 胸よりも顔の動脈の方が、脈打っているのを感じる。


「いいからっ!」


 そんな態度のティコにお構い無しにズンズン迫るヤコ。


「ホラっ、そこの椅子に座って!」


 足を怪我した人用に用意されてある椅子を指差しティコを半分無理矢理座らすヤコ。


「……」


 もう顔真っ赤。


「え〜っ……どっち使う?」


 ティコの前に立ち、二つの消毒液を差し出す。


「…右……」


「はいどうぞっ」


「へ?」


「自分でやりなさい」


「……」


 右の消毒液をティコにわたし、保健の先生がいつのまにやら生徒から没収したゲーム機を生徒の机から取り出し、画面の中の赤い帽子をかぶり、赤い服を着て髭をはやしたちっさいオッサンをBダッシュしながら敵をジャンプで踏んづけるゲームをやり始めた。

 それは他でもない、いつもの天真爛漫人ヤコ行動だった。

 ちなみにヤコは赤よりも緑の、弟のクセに赤いアニキよりも背がたかいオッサンの方がやりやすいらしい。


 暇だったヤコは、ベッドに横にならずにずっとこれをやっていたようだ。




「プププ………ハハハハッ!」


「あいん?」


 急に腹かかえて笑いだしたティコに、変な声(ってかそれってあの人のアレだよね!?※小林)を出した。


「どうしたの?」


 せっかくスターで無敵になり、のっていたのに、ヤコが目を離した隙に、崖に落ちて死んでしまった赤いオッサン。

 しかし大丈夫、まだ五人いるから。


 それは置いといて。


「い、いや何でもない」


「? ? ?」


 ティコ、一度体制を立て直し───


「……それよりごめんね……アタシのせいで竹田先生に呼ばれたんでしょ?」


 言いたかった言葉をやっと口にだした。


「え? いやいや、そんな事、全然気にしてないよ!」


「ホント?」


「うーん!」


 今、ヤコは口調が美雪みたいになった。


「っふ!ハハハハ!」


 それでさらに腹を抱えて笑ってしまうティコ。

 つられてヤコもニコニコと満面の笑顔になる。






(……えぇー、ここでちょっとキャラを変えさしていただきます。………テメエらさっきからイチャイチャしてんじゃねえぞ?!どうせやるんならチューでもしてみろやチューをっ!!!)※大林




 恐らく、自分には彼女がいないからって自身が作ったキャラクターにあたる作者のむなしい叫びは読者に伝わらなかったことだろう。



 そしてそんな二人の会話をおもしろおかしく盗み聞きしている人物がいた。

 これまでの登場キャラクターから考えればそんな事をする性格は朋子以外に考えられないだろう。

 ティコのあとをつけて、二人が入ったのを見て、閉まった保健室の扉に左耳をくっつけて二人の会話をずっと聞きながらニヤニヤしている。


 だが、運動神経が無い朋子は、先ほどの飯島の授業で足がフラフラだった為、床にペタンと座り込んで聞いている。











「桃井君!なんで逃げんのーよ!」


 場面変わりまして三年B組の教室内で、前の教卓をはさんでチコと美雪は睨み合っていた。

 ジロジロ見つめてくる美雪から逃げたチコ。

 それを追いかけて追いかけてただいまの状況になった。

 逃げ回るチコに、美雪は腹を立てたのか、教卓の両端を両手で掴んで小刻みにグラグラ揺らす。


「だ、だって安川さんがこっちをジロジロ見てくるから……」


 眉間にシワを寄せて本当に困った顔をするチコ。

 顔にも汗びっしょりかいてる。


 男子更衣室の前で、いち早く着替えていた美雪は、チコを待ち伏せていた。

 そこからこの二人の鬼ごっこは始まった。


「なによ!そんなに逃げなくてもいいでしょ!?私はべつに見てるだけなんだからっ!!」


 美雪様、かなりムキになってるご様子……。

 そう言いながら、さっき石原が教卓を拭いていた雑巾をチコに向かって思いっきりブン投げた。


 しかし素早く反応したチコはギリギリで飛んできた雑巾を右に、やや仰け反りながらよけた。

 そして勢いが止まらない雑巾は教室のドアの方向へ───


ガラッ


「……でさぁ…っ!!!ぶえっ!!」※大介


 ……そこへ都合良くドアが開き、入って来た大介亮介と、達弘の三人。

 運命のイタズラではなく作者のイタズラで、飛んできた雑巾は大介の顔面に直撃した。


 石原がチョークの粉を拭いたその雑巾は、大介に直撃すると同時に、白い煙りを巻き上げた。


「うぅ……」


 その白い煙りを顔面全体にくらった大介、いや浦島大介は白髪、白顔のおじいさんになってしまったとさ。




 めでたし♪めでたし♪







「全然めでたくない!」




 しかも大介をおじいさんにした張本人は───


「桃井君!べつになんにもしないから動かーないで!」



 全く責任感を感じていなかった……。



 哀れ大介よ…。







 それから時はめちゃくちゃたち、学校が終わり、ヤコとティコが家に帰るとすでに帰宅していた秋吉が珍しくヤコも迎えてくれた。


 だが、その後ティコを自分の部屋に行かせて、ヤコとリビングでこんな会話をした。


「ヤコ、学校から電話があったぞ。お前今日二年の不良共とやり合ったんだって?本当ならここでお前を一発殴りたいところだが、喧嘩した理由がティコを守る為だったら仕方ないから今回は許してやるが、次は家を出て行く覚悟でそういう事をしろよ?!」


 ヤコは小さく『はい』とうなずいた。




 やっぱりヤコもちょっとだけだが冷静さを失った行動に反省しているようだ……。





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