表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/251

EP85 無力 <☆>

今回は、少しだけ描写が違います!

https://www.alphapolis.co.jp/novel/115033031/408542049


「あれ?花ちゃん、その人は誰?」


 男に手を引かれ、強引に連れて行かれる花。それを見て、多くのヤジ馬たちが集まって来る。


 町は訪問者でごった返し、概算してもドゴル復興バザーの5倍は客が来ているだろう。

 その殆どが、花のコンサートを目当てに来ているのだ。男と共に歩いている花など、観衆の目を引かない方が不自然である。


「大丈夫、気にしないで。」


 花は無理矢理に笑顔を作ると、男に手を引かれるがままに着いて行った。

 観衆たちは心配になって後を着けようとしたが、雑踏を掻き分けて進んでいく二人は、すぐにその影を埋もれさせていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ここが私の部屋か、ど田舎にしては良く出来てるな。」


 男はそう言うと、開け放ったホテルの一室へと花を連れ込んだ。


「えぇっと……ご飯の材料が無いのですが……。」


 花は笑顔が張り付いたまま剥がれない。その声は怯えでは無く、激しい怒りで震えている。


「まだそんな事言ってるのか?早くシャワーを浴びて来い。

 俺は気が短いんだ、何をするか分からないぞ。」


 男は稲妻を纏わせた拳を花に向け、脅した。


「あの……何を言っているのか……んぐっ!?」


 花は手足を押さえつけられて、そのままベッドに押し倒された。口を手でふさがれて、悲鳴を上げると事さえ出来ない。


「なるほど……強引にされるのが好きってわけか。その望み叶えてやる。ありがたく思えよ。」


 そう言うと、男は花の服を脱がそうと胸元に手を伸ばして来る。





 しかし、その手が花に触れる事は無かった――。





「お前のような喋る生ゴミが、この美少女の裸体を拝めると、まさか本気で思ったのか?頭に乗るなよ、クソガキが。」


 その恐ろしい声は花”本人”から発せられた物だった。

 可憐な顔立ちに似合わない、凄まじい憎しみを帯びた声だ。

 無機質さの中に荒々しい殺意が混流し、この世のものでは無いかのような声を形成している。


「え?」


 男は迫力に圧されて花から飛び退いた。

 花が発した言葉は、あらゆる点でチグハグなのだ。

 男の齢は既に40を回り、とても”クソガキ”と呼称されるような年齢ではない。

 それに、花は自らを”美少女”と名乗れるほど、極端に低年齢というわけでも無いのだ。


 困惑する男をよそに、花は訳の分からない話を続ける。


「私が入れ替わって正解だったな。嫁入り前の愛娘を、こんなゴミに触れられるのは堪らないからな。

 女装なんて滅多にしないもんだから、少し気合が入りすぎた。それとは別に、アンコールを受けた時にキレそうになったのは自分でも驚いた。昔から思っていたが、私は独占欲が強いんだろうな。」


 花は虚空を見つめながら淡々と喋り続けている。

 男はその様子に得体の知れない恐怖を感じて、本能の赴くままに魔法を放った。


<<<マスターライトニング!!!>>>


 男の放った魔法は、確かに花に直撃した。

 彼女の全身を青白い閃光が包み、電流が頭頂から足先へと駆け巡っていく。


 しかし花は、身じろぎもせずにそれを耐えきった。

 体が焦げる事も、悶えながら泣き叫んでもいない。男は花の平然とした様子により一層、恐怖した。


「さて、どうした物か……殺すか?いや、人格を破壊して…………おい、貴様何をやってんだ?……まさかと思うが、”魔法使い如き”が俺にかなうと思ってるのか?

 僅か45しか齢を重ねていないお前が、その3億倍の時を数えた俺を殺せると、本気で思ったのか?」


 花はジロリと、男の方に眼球を向けると逆に困惑した声を上げた。

 本当に、男が何をやっているのか分からないようだ。


 権力による増長とは恐ろしい物で、男は目の前の怪人物との間に広がる圧倒的な実力差を、完璧に見誤ってしまった。

 彼にとって必要不可欠であったサムとは違い、”生存する事に意味を持たない男"の運命は、絶対的な力を持った存在の前で確定した。


「何故、そうも死に急ぐのか……。まぁ良い、お前が死んでも1から作ればいいのだからな。

 このホテルと違って、組織全員を置き替える訳には行かないが、お前だけならどうにでもなる。」


 そう言うと、花は男の方へと体を向けて立ち上がった。

 その輪郭は蜃気楼のように歪んで行き、黒衣を身に纏った男へと変わった。


「命乞いをしないのか?まぁそもそも、彼女の事を”馬鹿な女”と呼んだ時点で、お前の破滅は決まっているが。」


 黒衣の男は開いた口が塞がらない愚者を見下ろしながら、手先に力を込めた。

 指先に透明の渦が巻き、青白い閃光が迸る。その中心には、稲妻の如き光弾が集約されている。


「たしか、こうも言ったな。”私に捻じ伏せられない筈が無い”とも。

 貴様に見せてやろう。魔力などに頼らない、神が齎す”神罰の威光”を……!」


 黒衣の男は高らかに笑いながら、腰を抜かした不敬者へと歩み寄って行った――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ