EP7 採石場
1時間ほど休憩してから、清也とフラウは採石場へと再び歩き始めた。
道中でさっき図鑑で見たことなどを話すとやはりフラウも大きな興味を示した。
「エレメンタルストーン……賢者の石とまで呼ばれるほどの鉱石なのですか。かなり珍しいのでしょうか?」
「どれほどの珍しさかまではわからないけど、図鑑には一応レア度☆8って書いてあったよ。
目安としては10万人に一人が一生に一度目にすることがあるかないか。そのぐらいらしい。
手にすることができるのはそれこそ100万人に1人らしい。
ただ他の鉱石同様、ごく普通の採掘場から採掘されるらしいから、運が良ければごく普通の炭鉱夫でも手に入れられるらしい。
その不思議な性質から、持ち主を選ぶとも言われてるらしい。」
そんなことを話していると採掘場が見えてきたので、2人で少し姿勢を低くして偵察することにした。
剣を持ったゴブリンが6人いる。小鬼という割には
想像より大きい。清也の身長、178㎝より20センチほど小さいが、正直なところ少しも小さくない。
図鑑の生物解説によるとゴブリンは頭がかなりの弱点らしい。
幸い、ヘルメットをしている奴はいないので、刺されないように気をつけて背後から殴りつけるのが良いだろう。
「じゃあ、頼んだよ。」
フラウにそう告げると、清也は忍び足で近づいて行った。
そしてーー。
「まずは、1人目!」
小声で掛け声を言って、背後から殴りつけ、無事に気絶させることができた。
だが、殴ったときにゴブリンが叫んだせいで、3人ほどが気付いたようだ。
内心、全員で向かってくる頭がなくてよかったと思いつつ、盾で怯ませて頭を殴ることにしたのだが、やはり後頭部を殴ったさっきと違い、なかなか倒れない。
「おぐぅ!」
ついに、ゴブリンの構える剣の一本が脇腹に刺さった。人生で初めての他者から与えられた傷だ。
だが、その焼ける様な痛みは、瞬時に消え去った。
体の縁が緑色に淡く光り、自分の体が空気に溶け、自然と混ざり合っていくような柔らかい感覚とともに、傷も塞がった。
「気をつけてくださーい!」
フラウの声が聞こえる。炭鉱の入り口から援護してくれているようだ。
応援と優秀な仲間のおかげで、なんだか、勇気が湧いてきた。
その後も傷つきながら、なんとか6人とも気絶させることができたーー。
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予定通り2人でゴブリンをトロッコに乗せ、突き落とそうとした。ここまでは予定通りだった。
「せーの!」
掛け声と共に、トロッコを思いきり押す。
すると、1人のゴブリンが唸りを上げて目覚め、フラウの服の袖を掴んだ。
「……え?きゃああぁぁぁぁッッッッ!!!!!」
それはまさに、一瞬の出来事だった。希望が絶望に変わる瞬間、フラウの表情は凍りつき、瞳が小さく縮み込んだ。
トロッコは、叫ぶフラウと共に渓谷へと落ちて行った。そこに慈悲は存在せず、小鬼も美女も平等に地獄へと引き摺り込むーー。
「フラウーッ!!」
清也は彼女の名を叫ぶと、一目散に駆け出した。