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EP51 警告

 

 それぞれ必要な物を買った二人は北に向けて出発した。天気は快晴で、日差しが照りつけている。


「うげ……あっつ……。」


 シンは耐えきれずに言葉に出した。

 それにより、更に暑く感じるようになった。


「先の事でも考えましょう……。」


 花も出発してまだ1時間なのに、既にバテ始めている。

 息が荒くなり、首筋が汗で光り始めた。


「北って、流石にアバウトすぎると思うんだよな。なんか目印ないのか?」


 シンは無理に笑顔を作って聞いた。


「えぇっと……たしか"シャノン"っていう港町があるらしいわ。そこの近海に、アトランティスは沈んでるそうよ。」


「近海ってことは観光とかもあるのか?」


 シンは真面目な顔をして聞いた。

 海底を観光出来るほどの技術力が、この世界にない。という事実は、今の彼では思い付かなかった。


「どうかしら……結構危険な海だって聞いたわ。潮の流れは遅いけど……。」


「今日はもう寝るか?言われてみれば、留置場でもまともに寝れてないんだ。普通に寝不足だぜ。」


 シンは花を気遣い、まだ正午だがテントを張る提案をした。


「いやいや、まだまだ行けるわよ!」


 花は強がっているが、足取りもおかしい上に、顔が赤くなっている。


「完全に熱中症だな。いいから、今日はもう休むぞ。清也にキレられるのは俺だからな!」


 シンは、清也が自分を叱責しないと分かっていたが、その名前を出せば花を納得させられるだろうと思った。


「そ、そうよね……。」


 花はシンの予想通り大人しくなった。


「テントは俺が張るから、お前は木の下にでもいてくれ。」


 シンはそう言うと、5分と経たずにテントを設営した。


「ありがとう……。」


 花は具合が悪そうな表情で感謝すると、倒れ込むようにテントに入って行った。


 花が無事にテントに入るのを見届けたシンは、思い出したように強烈な眠気に襲われ、花と同様にテントに入った。


~~~~~~~~~


 目を開けると、シンは不思議な空間にいた。

 辺りは水に覆われているのに明るく、呼吸ができる。目の前には苔むした台座と錆びた二つの扉がある。


(ここが……アトランティスなのか?)


 シンが目を凝らすと、左の扉の近くに人影がある。


「開いたぞ!」


 人影は扉を開けると、部屋の中に入ろうとする。


 しかし、その時――。


「ご苦労だったな。」


 シンは自分とは違う者の声が、喉から発せられるのを感じた。そして、槍を握りしめた腕が一人でに振り上がった。


(お、おい!何やってるんだ!やめろ!!)


 シンは自分を止めようとしたが、体が言うことを聞かず、手に持った槍は人影を貫いた。


「裏切……ったな……。」


 貫かれた人影は倒れ込んだ。

 シンは自分の意識と無関係に、その顔を覗き込む。

 倒れ込んだ人影は若い男で、その瞳に光はない。


「秘宝"ミストルテイン"は俺の物だ。悪く思うなよ!」


 シンはそう言って、笑いながら部屋に入った。

 部屋の中央には巨大な棺のような箱がある。


 しかし、部屋に入り数秒が経った時に異変が起こった。


 突然入ってきた扉が音を立てて閉まり、天を裂くほどの荘厳で、恐ろしい怒声が聞こえた。


「弱く汚い心よ!暗闇で眠るがいい!!」


 天井から何本もの三叉の槍が現れてシンに電撃を放った。


「おわあああああああああああ!!!!!!」


 凄まじい激痛と絶叫に合わせるように、シンの意識は途絶えた。


~~~~~~~~


「うわぁっ!!」


 シンは人生で初めて、叫びと共に目を覚ました。

 目に入るのは苔むした部屋ではなく、新品のテントの天井だった。


「夢、か……。」


 シンは、"太古から伝わる言葉"を発した。


「あれは誰かの記憶なのか……?

 ミストルテイン……聞いたことがあるような?」


 シンはその響きに覚えがあったが、

 エクスカリバーと違い、思い出せなかった。


(喉渇いたな……。いま何時だ?)


 シンは汗でベタつく腕を掲げ、カンテラで時計を照らし、時間を確認する。


(朝の4時……半日以上寝てたのか!)


 シンは飛び起きたが、すぐに花を起こさないような忍足に変わった。


(川でも探すか。)


 シンがテントのジッパーを開けると、外はまだ暗かった。

 しかし、朝日の先端のようなものが見え始め、地平線が紫色に染まっている。


(仕事がないってだけで、早起きはこんなに素晴らしいんだなぁ……。)


 シンは2ヶ月以上会っていない上司を思い出し、吐き気が込み上げてきた。その顔を、清也と花の顔で打ち消した。

 最初に会ってから3週間と経っていないが、シンには二人が10年来の付き合いの様に感じられた。


「そろそろ行くか!」


 シンは小さく気合を入れると、ナックルダスターを両手に嵌めて、静まり返った森の中へと分け入った。


~~~~~~~~~


 川を見つけること、それは薄暗がりの中でも難しくは無かった。

 水の流れる音を辿れば良いのだから。


 シンは僅か2分で川に辿り着いた。

 暗闇でよく見えないが、川の対岸にも四足歩行の何かがいて、水を飲んでいる。

 目には映らないが、シンは不思議な気品のようなものを"その水を飲む何か"から感じた。


(一応、少しだけ上流の水にするか。)


 動物の唾液から病気になった話を、友人から聞いたことがあったので、念には念を入れることにした。


 シンが水を飲み終え、持ってきた水筒を満たすと、ちょうど朝日が昇り、シンのいる川を照らした。

 川は想像よりも澄み切っており、濁りを少しも感じないばかりか、川底の石に苔すら生えていない。


 シンが顔を上げて立ち上がろうとすると、対岸にいる"もの"が目に入った。


「……ッ!?そうか!アレが清也の言ってた……。」


 シンはその場に立ち尽くした。

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