表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/251

EP50 商人 <☆>

 

 花とシンは、ひとまずソントの町に帰ってきた。朝食を素早く取り、雑踏でごった返す市場に向かった。


「旅に必要な物……と言っても、大体は征夜と買ったのよ。」


 花はリュックを見ながら言った。前回のバザーで、必需品は全て買い揃えていた。


「俺は武器を見に行ってくるよ。他に買う物あるか?あるならお金渡すけど。」


 シンは手を出し、その上に5枚の金貨を生成した。


「あっ!新しくテント買わないと!」


 花はそう言って、3枚の金貨を掴み取った。


「俺は清也の使い古しでいいぞ。そう言えば、あいつテントも持って行かないのか!?」


 シンが思い出す限り、清也は剣と肩掛けのポーチしか持っていなかった。

 流石の彼も、少々驚かされたようだ。


「え?いや、貴方と一緒に寝るのは……何でも無い!」


 花は最後まで言わなかったが、シンにはしっかりと伝わった。


「おっとぉ?花ちゃんは、清也くんと一緒におねんねしてたんですか〜?

 一緒のおテント使ってたんですかぁ〜?」


 隙を見つけたシンは、しっかりと揚げ足を取ってきた。

 幼児に話しかける様な言葉で、いやらしく茶化してくる。


「うるさい!早く買いに行ってきなさいよ!」


 花はシンの背中を、持っていた杖で殴った。

 ゴツンという音がして、シンはつんのめってしまう。


「す、すいやせんでした姉貴!失礼しやす!」


 今度は子分口調でヘラヘラと謝り、去って行った。

 落ち着きのない男だと改めて思い、花は呆れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~


 花はそのまま、市場の奥にあるテント売り場に行った。そこには大小様々なテントが売っている。


「お姉さん!これ下さい!」


 花はテントを指差し、満面の笑顔と共に50は過ぎているであろう女性に言った。


「あら?値段表示が間違ってるわね。本当は2じゃなくて1ファルゴよ。」


 狙いは驚くほど上手くいった。年を若く見積もられると嬉しくなるのは、花とて同じなのだ。だからこそ、テント売りの女性の気持ちもよく分かる。


「ありがとうお姉さん!」


 花はそう言って、シンを探しに戻ろうと思った。

 しかしその時、右目にある物が映り込み足を止めた。


「海底の探索……ならこれがいるわよね。」


 花の視線の先に並んでいた物。それは水着だった。


「よっ!綺麗なお嬢さん!水着買ってくかい?安くしとくよ!」


 店主と思わしき男が花の全身を舐め回す様な目で見ている。


「ええと……一番"防御力"が高そうなものを見せて下さい。」


 花は身震いをして言った。


(うわ……絶対ヤラしいこと考えてる。怖いなぁ……。)


「これなんてどうだい!?」


 男はマイクロビキニに分類されるような水着を掲げている。


(シンが一緒なら、こういう事は言ってこないんだろうなぁ……。)


 花は気が遠くなってきた。同時に、さっき殴ったばかりのシンが恋しくなってきた。


「ラッシュガードあります?」


 花は男の提案を無視して言った。

 海底に潜るならラッシュガードは必須だろう。


「あるよ!ただ、下に何かしら着た方がいいよ!」


 男は右手に持った水着を揺らしながら言った。

 男はどうやら、是が非でも花にマイクロビキニを着せたいらしい。

 彼女のスタイルなら、間違いなく似合うだろう。だからこそ、強引に推して来るのだ。


「はぁ……。2ファルゴで両方買います……。試着して良いですか?」


 花は男にも聞こえるほど大きなため息をつくと、渋々了承した。


「うーん……意外と水着の方は高級だからなぁ……まぁ、2ファルゴでいっか。

 ……水着姿見せてくれたら、タダでもいいよ!」


 男は一切悪びれる事なく言った。

 顔は笑っているが、目はギラついている。


「死んでも嫌です☆」


 花は皮肉を込めた満面の笑みで答えた。

 憎悪と嫌悪感が全身から溢れ出ている。


「そいつぁ残念!こちらへどうぞ!」


 男はあっさりと試着室へ案内した。


 花は覗かれていないか確かめながら、素早く水着に着替えた。

 花の巨乳は、ギリギリではあるが水着に収まった。圧迫感は無く、最低限は隠されている。着心地も悪くない。

 ラッシュガードを着ていれば、そこまで変には見えない。それに、清也になら見られても構わないと、雑に自分を納得させた。


 花は一通り鏡で姿を確認すると、再び元の黒い服を着て、ローブを羽織った。

 買うのを見られるのが恥ずかしいと思い、水着をラッシュガードに包んでカーテンを開けた。




「これ買いま……え?」


 カーテンを開けると、そこにいたのは2発ほど殴られた店主だった。

 殴られた痕には、鋭利な物が刺さった後のような、3つの窪みができていた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~


 数分前、シンは武器商人の店を訪ねていた。


「あっ!魔術師の助手さん!

 聞いたよ、魔術師さんは災難だったね……。惜しい人を亡くしたもんだ……。

 金を貸してくれる以上に、人としてよく出来た人だった。彼以上の人格者は見たことが無いよ。

 返すお金は用意してあるから、ここで少し待っててくれ。今取ってくる。」


 店主は残念そうな顔をして言った。

 それが、返済の取り立てに来たと思ったからなのか、それとも単純に死を悼んでいるからか、シンには分からなかった。


「いや、良いんです。彼の貸した金は全てチャラになったんです。

 その代わり、この店の武器を一つだけ貰っても良いですか?」


 シンは少々、下手に出て言った。

 店主は嫌がる素振りを見せなかったので、純粋に死を悼んでいるのだと思った。


「犯人は指名手配中なんだろ?君は彼を探しているのかい?私刑の許可が降りたと聞いたが。」


 商人は店内を回るシンに対し、カウンターから出て来て聞いた。


「私刑……て事は"殺害許可"って事ですよね。

 実は仲間と共に、奴を追ってるんです。必ず俺が仇を討ちます。」


 シンは拳に力を込めて言った。声が怒りで震えている。


「うちの武器を存分に使ってくれ!探してる武器種はあるかい?」


 店主は覗き込む様にして聞いた。


「オススメはありますか?取り回しのしやすい物で。」


 シンは大まかに注文をした。店主は待ってましたと言わんばかりに、シンを店の奥の方に連れて行った。


「これなんてどうだい?"()()()()()()()"っていう剣なんだがね。

 由緒正しい剣だ、なんでも異世界の国王の持ち物だとか?」


 店主は豪華な装飾が施された剣を見せながら聞いた。

 しかしシンは直感で分かった、この剣がナマクラだと。装飾こそ豪華だが、明らかに刃の輝きが鈍い。


「エクスカリバー……聞いたことあります。

 でもその剣は、素人の身には余る武器だと思います。他はないですか?」


 シンは苛立ちを見せないように、やんわりと断った。すると店主は、すぐに別の武器を取り出した。


「じゃあ……これはどうだい?”()()()()()()()()”、別の宇宙の未来の剣士が愛用してる剣だとか言われてる。」


 店主はそう言って、手のひら二つ分ほどの鉄の棒を取り出し、ボタンを押した。

 先端から青い光の筋が飛び出している。


("別の宇宙の未来の剣士"は適当すぎだろ!しかもこれ、完全にラ○トセイバーじゃねえか!)

「ええっと……。」


 シンは反応に困った。明らかに怪しいので買わないことにした。


「剣じゃないのが良いです。」


 シンは丁寧に言った。


「これはどうだい?由緒正し……」


 店主はそう言って、絶妙に作りの悪い弓を取り出して来た。


「この店、拳を使う武器ありますか?」


 シンは、少しだけ苛立ちながら聞いた。これ以上は時間の無駄だと悟った。


「ナックルダスター……かな?」


 店主はシンが望む答えを言った。


「それで良いです!見せて頂けないでしょうか?」


「こっちにあったが……。これとかどうだい?」


 店主はまたも、造りの粗い物を持って来た。

 その顔は至って真剣だ。何かに怯えている様にも見える。


「これとか……。」


 シンは店主を無視して、杭付きの不思議な形の黒いナックルダスターを手に取ってみた。

 指に完全にフィットする。握ってみた感触も悪くない。


 そして何より――。


「付けたまま物が握れる……。」


 シンは、指の動きに合わせて変形する器用な拳鍔に、一瞬で魅了された。


「これ、2つ貰って良いですよね?」


 シンは有無を言わさぬ態度で聞いた。


「あぁ……。」


 店主は、明らかに様子がおかしい。何かを祈っている様に見える。


「この後はど、どこに向かうんだ……?」


 店主は狼狽えている。シンにもそれは伝わった。


「言えないんです、すいません。」


 不穏な様子を察知したシンはそう言うと、店から逃げる様に出て行った。


 ~~~~~~~~~~~~~~~


 数分後、殴られた店主の側には、両手に拳鍔を嵌めたシンが立っていた。


「覗かれてたぞ〜!」


 試着室から出て来た花を見て、彼は爆笑している。


「ええええええ!!!???」


 彼女は驚きで、思わず絶叫してしまった。


「マジックミラーだ。バッチリ覗かれてたぞ!」


 シンは笑いが止まらないようだ。


「最低っ!!!」


 花は杖で殴ろうとしたが、シンに止められた。


「流石にこれ以上はまずいって!!」


 シンは手を伸ばして、蛮行に及ぼうとする花を制止した。


「く、くそっ……後ちょっとだったのに……。」


 男は悪びれることなく捨て台詞を吐くと、気を失った。


「どこまで見られてた!?」


 花は堪らず聞いた。花にとっては重要な問題だ。


「まだ服は着てたぞ!……下は。」


 実際のところ、上は下着姿だった。

 ただ、ブラの上にもう一枚だけ分厚いのを着ていたので、ギリギリセーフである。


「もういいわ!行きましょう!」


 花は最後に男の脛を踏みつけると、怒った様子で歩き出した。周囲には人が集まり始めている。


「おいアンタ、あいつを病院に連れて行ってくれないか?これは治療費と手数料ね。」


 シンはそう言って、野次馬に7ファルゴほど渡すと、買い物をする群衆へと足を踏み入れた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~


 シンが去った後の武器屋では、店主が独り言を呟いていた。


「あの者は、あなたを探していると言っていました。行き先は……わかりません。

 武器も、なんとかナマクラを掴ませようと、懸命に試みたのですが……。

 え?待ってください!チャンスを!チャンスをください!お、おぐぅっ……!!!」


 店主は突然痙攣し始め、まるで何かに引き裂かれるように頭が破裂した。

 鮮血が木造の壁を濡らし、頭部が炸裂した死体が、ドサリと音を立てて床に転がる――。




 そしてその後、誰もいない店内に、不気味な声が響き渡った。


「余の役に立たぬ人間に、生きる価値などない。」


今回のストーリー分岐は、ガッツリ違います。

気になる方はどうぞ……!

https://www.alphapolis.co.jp/novel/115033031/408542049

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ