EP49 財宝
※第三章は伏線を大量に張るのと、掘り下げるキャラが多いので、非常に長くなっている事を予めご了承ください。
「行っちゃった……。」
花は清也が居なくなり寂しかったが、それを感じさせないほど満足げな笑顔を讃えている。
「これで、付き合ってないとは言えないな?」
シンは悪戯っぽく笑った。明らかに茶化す気満々だ。
「えぇ……。」
花は否定しなかった。まだ余韻に浸っているようだ。
シンはそこに突っ込んでいくほど、無粋ではなかった。
「俺たちは別の目的を見つけないとな。
ていうか、何も言わずに置いてったけど、売っ払って良いのかな?」
シンは、両腕に抱えた盾と鎧を見下ろしながら言った。
所々に傷が付いているが、しっかりした造りになっている。
「あなたは鎧よりもジャケットを着るし、私は重くて付けれないもの……。」
花は、鎧に関しては売り払うことにした。
「盾はどうする?俺がつけても良いけど、アイツは花ちゃ……いや、花に持ってて欲しいんじゃないか?」
シンは成り行きとは言え、恋人がいる女性を"ちゃん付け"で呼ぶのは違う気がして踏み留まった。
シンの中に花への未練は一切無かった。
「そうね、見た目よりも軽そうだし、これは私が持っておくわ。」
花はシンから盾を受け取るとそう言った。
表面は鉄で加工されているが、中は恐らく木製なのだろう。簡単に扱うことができた。
「さっきの話だけど、この後はどうする?半年もあるぞ。」
シンは、今後に関しての展望が特に無かった。
しかし、何かをするにしても、清也が帰ってくるまでが期限だと分かっていた。
「魔王について調べましょう……あれ?これも図書館に載ってるんじゃ……。」
花はあの図書館が、まるで聖地のように素晴らしい場所だと実感した。
「待てよ?エレーナ様は俺たちに"魔王を倒せ"と"破壊者を探せ"って言ったよな?
なら図書館にも、その情報は載って無いんじゃないか?」
シンは冷静に現状を分析した。
「だとしたら、正体を探るのは更に難航しそうね……。」
図書館に一抹の望みを賭けていた事もあり、花は少し落胆した。
「まぁ気長に行こうぜ!半年もあるんだし!」
シンは笑っている。どこまでも楽観的な男だと、花は改めて思った。
「じゃあ、もう一つの探し物をついでにするのはどう?」
唐突に提案をする花だが、そこには確かな論理があった。
探し物を一つに絞るのは、効率的でないと分かっていたのだ。
「いいじゃん!何探すんだ?やっぱり、海底王国アトランティスの財宝か!?」
シンはふざけて言ったが、花は笑っていない。
むしろ少し怖がっている様だ。
「えぇと……何で分かったの?怖いんだけど……。私、この話したっけ?」
シンが適当に言った一言は、核心をついていたようだ。
「今日の俺冴えてる〜♪でもよ、"銀財宝"はともかく"金"は俺が生み出せるぜ?何を探すんだ?」
シンは少し自慢げに言った。
花に見える様に掲げた指先に、砂粒ほどの粒子が集まり、金色の光を放っている。
「そういえばあなた、少ししか金を出せない問題はどこに行ったの?」
花は不思議そうにしている。
シンが天界で生成できた黄金の量では、清也を覆うほど巨大な盾を形成できるとは思えない。
「今の俺は、空気中の黄金の粒子を掻き集めて、凝縮させる事で金塊を作り出してる。
だから空気が澄み渡ってる天界だと、少ししか出なかったんだ。」
シンは指先で練り上げた黄金を、指輪状に整えた。
「ほら、お祝いだ。」
シンはその指輪を、花に渡そうとした。
「まだ早いんじゃない!?」
流石の花もツッこんでしまう。
それに、手渡されるなら清也が良いとも思った。
「あっ!そうか、渡されるならあいつからが良いよな。
黄金の箱に入れとくから、今度あいつに渡してやってくれよ。」
そう言うと、新たに作り出した箱に指輪を入れ、花のバッグに入れた。
花は、自分が渡した指輪を"清也から渡し返される"のは、縁起が悪いという事は言わなかった。
「それはそうと、結局何を探したいんだ?そもそも、アトランティスなんてこの世界に有るのか?」
シンは話を戻した。その顔は疑念に満ちている。
「アトランティスが海底に沈んだとき、景観が美しいという理由で、一部をこの世界に移したらしいわ。
私が探したいのは、アトランティスの秘宝・"水晶の杖"よ。」
「そういえば、そんなこと言ってたな。で、アトランティスは何処にあるんだ?」
シンは、花が当然知っていると決め付けて質問する。ワクワクが止まらない様子だ。
「それがね、大陸北部の海底のどこかにあるって事しか、分かって無いのよ……。」
花は少し言葉を詰まらせた。
本に書いてある詳しい座標は未知の言語で書かれており、解読が出来なかったのだ。
「何処にあるか分からない海底王国と、そこに眠る財宝!
清也が帰ってくるまでの、良い時間潰しになりそうだ!」
場所が分からないという事が、シンの魂に火をつけた。少年のように目を輝かせ、大興奮している。
「貴方も素手のままじゃ辛いでしょうから、何か武器を調達しないとね。
とりあえず、町に行きましょうか?」
花はそう言うと、返事を待たずに歩き始めた。
「武器なぁ……。俺に合うのがあると良いけど。」
シンは首を傾げながら、彼女に着いて行った。




