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EP45 影武者

 

「一体、いつから気付いてたんだ?」


 シンは笑いながら聞いた。


「君がナイトハンターを倒した時、首に刺さった杭が不自然な方向から刺さっていた。

 あれは上から刺したんじゃなく、キックと同時に首に埋め込んだんだろ?

 それをするには、空中に杭が足と平行な向きに浮いてる必要が有る。それで、少し不思議に思ったんだ。」


 シンはヒューッと、上げ調子の口笛を吹いてから言った。


「嘘だろ、そんなことで気づいたのか!」


 シンは呆れ顔で笑っている。


「いや、確信に足る証拠を得たのは、君の部屋に入った時だ。

 あの時、君の机の上に置いてあったノートの片方は、明らかに一般人のノートじゃ無く、何かしらの学問の領域に達してた。

 それで思い出したんだ。黄金使いは銀行員。経済学部を出た人間が、計算を異世界の素人に任せる訳ないってね。」


 清也自身も、妙な勘の鋭さに呆れている。


「あの影武者には、色々と世話になったんだ。特に転生したての頃はな。

 それなりの給料は渡していたが、まさか殺されるとは……。」


 シンは少し沈んだ顔で言う。

 それに対して、清也は悔しそうな顔を浮かべ、厳しい現実を告げた。


「シン……これは僕の勘なんだけど、ラドックスはまだ生きてる。

 それに、奴は間違いなく魔王と繋がりがある。彼の仇を討つためにも、僕たちと来てくれないか?」


「元からそのつもりだったさ、それにお前だけじゃ花ちゃんを守るには頼りないしな!」


 シンは早くも、いつものお調子者に戻っていた。


「ねぇ、二人ともこれからどうするの?ラドックスを追う?」


 花が駆け寄ってくる。息を切らしてはいるが、怪我はしていない。


「いや、奴を追っても僕らじゃ勝てないと思う。

 二人には本当に感謝してるけど、さっきのは運が良かっただけだ……。」


 清也は申し訳なさそうに俯いた。


「そんな顔すんなって!誰も落胆なんてしちゃいないさ!」



「そうよ、まだまだ私たちは強くなれる。そう思ってポジティブに行きましょう!」


 シンと花は醜態を晒した清也を励ますが、彼を覆う無力感は取り払われない。


「二人ともありがとう。

 これからについてだけど、エレーナ様と君を仲間にしたら天界で会う約束をしたんだ。

 まずは、その約束を果たさないと。」


 深呼吸し、冷静さを取り戻す。瞳の色も元の緑色に戻っていた。


「あぁっ!約束、完全に忘れてた!」


 花は頭を抱えて声を上げた。


「でも、女神様に会うのはいいが、どうやったら天界って行けるんだ?」


 シンは、二人なら当然知っているという調子で聞いた。


「えぇと……分からん!」


 清也は正直に答えた。独特のユーモアが戻り始めている。


「嘘だろ……。」


「まぁ、なんとかな……うわぁっ!!??」


 そこまで言うと、空中に巨大なワームホールが開き、突如として発生した竜巻に巻き上げられ、清也たちは中へと吸い込まれた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 目が覚めると、そこは見覚えのある場所。初めて天界で目覚めた場所だった。約2ヶ月前から何も変わっていない。

 鳥は歌うようにさえずり、虹色の水が流れ、木々は爽やかに揺れている。


「うわっ……重い!」


 清也は、倒れている自分の上に乗っかる何かを払い除けた。それは、目を覚ましていない花だった――。


(聞かれなくて良かったぁぁぁぁッッッッ……!)


 清也は胸を撫で下ろした。


「うぐ……中々に荒っぽい移動方法だな……電車に轢かれるよりはマシだけど……。」


 シンも目を覚ましたようだ。頭を押さえている。


「二人でトラックに轢かれて、仲良死(なかよし)の方がマシよ……。」


 清也は花の発言によって、電車に轢かれたのがシンの死因なのだと気付いた。


「とりあえずエレーナ様に合わないと……。」


 立ち上がった清也は手を出して、花が立つのを手伝おうとしたが、その手を握ったのはシンだった。


「そういえば、エレーナ様も中々の美人だよな!いや、女神ならあれが普通なのか?

 そうだとしても美人か……歴代の女神様の肖像画と比較して、いや……。」


 シンはどうでもいい事に考えを巡らせ始めた。

 すると、後ろから聞き慣れた声がした。


「”300は余裕で超えている”私を美人……嬉しい事を言ってくれるではないか!」


 振り向くとエレーナが、優しく微笑みながら立っていた。

 一呼吸置いて、エレーナは真面目な顔になり、清也たちに語りかけた。


「さてと……これからの話をしよう。まずは場所を玉座に移すとするか。」


 エレーナがそう言うと、視界がぐわんと歪んだ。

 瞬きをした次の瞬間、立っている場所は玉座の間へと変化していた。

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