表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/251

EP26 出発


 朝、清也は目を覚ますと風呂に入り、昨日と同じ目に合わないように急いで出た。


 すると部屋には以前、エレーナと交信した物と同じ人形があった。

 それは突然、声を発した。


「ハッハッハ!2人ともやっと気づいたのか、同じ使命を背負って召喚され、以前に会っていたことを。」


 やはり声の主はエレーナだった。


「笑い事じゃ無いですよ!別れるところだったんですから!」


 花は憤慨した。少しふくれっ面である。


「いやぁ、申し訳なかった。しかし、早くも黄金使いの居場所を突き止めるとは……流石だな!

 それと、昨日の人形劇。私も見させてもらったが、すごい劇であったな!」


 大きすぎる話題の転換に、清也たちは少し驚いてしまう。


「エレーナ様はトリックがわかったんですか?

 教えてくれなくても良いので、答えてください。」


「日本語とは難解な言語だなぁ……。まあいいか、実を言うと私にも全く分からなかった!

 糸は確かに切れてたし、中に人や動物は入ってないし、からくり人形でも無かった!

 それにしても、人間世界で語られている勇者の伝説は、まさに氷山の一角であるな。」


 またしても大きすぎる話題の転換。これは天界に住む人間の特徴なのかもしれない。


「エレーナ様はその全容をご存知なのですか?」


 興味津々な様子の花は、エレーナに質問する。


「勿論だとも。女神だからな、天界であの者は地上以上に、伝説的存在として語られているからな。

 出来れば教えたいのだが、実は天界の持つ情報は、教えてはならん事になっておるのだ。」


「あの者ということは5人全員で、魔王と戦ったのではないのですか?」


「5人とも英雄ではあるが、1人が圧倒的だった。それがあの侍だ。

 魔王と戦ったのもあの者1人だけだ。詳しくは……そうだ!黄金使いを仲間にしたら一度天界へ来るのだ。

 そうしたら、天界で書かれた完全な伝説を見せてやろう。

 そろそろ行かないと旅団に置いてかれてしまうな、では其方たちの活躍を期待してるぞ」


 そう言うと、人形はまたも消えていった。


「完全な伝説……もしかしてお侍さんは、私たち達が思っているよりも、凄い人なのかも。」


 花は不思議そうな顔をしながら、清也と顔を見合わせる。


「地上に伝承が残ってないのは、戦いの殆どが天界で起こったからだろうね。

 圧倒的……一体何が起こったんだ……。」


 清也は、少しだけ唖然とした表情で俯いた。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 2人が装備を整えると、旅団との待ち合わせ場所に、9時ギリギリになって着いた。朝なのに、少し蒸し暑い。

 十数人の冒険者らしき人が、既に護衛に関する会議をしているようだ。


「すいません!遅れました!」


 清也と花が急いで会議に混ざると、皆が一斉にこちらを向いた。


「いや、いいんだ。俺たちが早く来すぎただけだし。それに、あと数人残ってる。」


 おそらく一番年上な冒険者が言った。


「俺はサーイン。まぁ、実質的な護衛隊長を任されてるんだが、別に畏まらなくて良い。

 呼び捨てして、サーインで構わない。」


 その男は言った。意外とフレンドリーだ。


「よし、2人が新しく来たことだし、作戦について確認するぞ。この町から隣町までは300キロある。

 基本的に1日に10時間歩いて、14時間は休むと言う生活を繰り返す事になる。

 大体1時間に2キロ進めれば、半月で向こうには着くだろう。質問はないか?」


「道中の陣形はどうなるのですか?」


 花は建設的な質問をした。


「モンスターがいるとは言え、大きな脅威は行きにも無かった。

 だから、陣形というほど綿密に隊列を組む必要はないだろう。

 ただ、野犬の群れには注意したほうがいいな。行きに染み付いた人間の匂いに、集まって来ているだろうから。

 ……よし!じゃあ、こうしよう。

 二人一組になって先頭としんがりに1組ずつ、左右には二組ずつ居てもらおうか。

 何か発見したら、すぐに二人組の片方が他の組へ連絡してくれ。」


「二人一組って事は、花は僕と一緒でいいよね?」


「もちろん♪」


 花は上機嫌だ。


「よしっ!作戦の確認も済んだしそろそろ出発するか!」


 サーインが先頭に立ち、ついに旅団は進み始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 旅団が出発して、10時間が経った。

 そして遂に、初日のキャンプ地へと到着した。大した危険はなかったが、流石に疲れる。


「せ、清也……あなた大丈夫なの?」


 花は、息も絶え絶えで言った。


「まぁね。昔から運動は得意じゃなかったけど、歩くのだけは得意だったから。

 でもこう見えて、僕も結構疲れたよ。……安全確認をしながら、水を探してくるかな。

 危ないから、ここで待ってて。」


 清也は、川や湖を探して森へ入ろうとした。

 すると、後ろから話しかけられる。


「やはり偵察か、今出発する?私も同行する。」


「サーイン。」


 話しかけて来たのは、サーインだった。


「水を探すんだろう?俺も周囲の安全を確認するよ。」


「じゃあ、どうせなら一緒にいきましょうか。」


「あぁ、そのつもりで話しかけた。」


 うっそうと茂る森の中を、2人は蔦をかき分け、目印を残しながら進んでいった。

 しばらく進むと川があったので、水筒が満たされるまで水を入れた。

 野犬やモンスターとは、一匹も出くわさなかった。




 キャンプへ帰る途中、喉が潤ったからか、凄まじい悪臭がやぶの中からする。

 どうしても気になったので、二人は覗き込んでみた――。




 そこにあったのは血まみれのテントと、男の死体だった。まだ死んでから時間が経っていない。

 調べると、リュックのポケットからは空になった袋と、金でパンパンに膨れた財布が見つかった。

 どうやら、旅団に加わらずに昨日帰った隣町の住民のようだ。何かに喰われたような形跡がある。


「うわぁっ……。これは酷いな……。」


 清也は堪らずに戻しそうになる。


「間違いない、これは野犬の仕業だ。歯痕から見ても、かなりでかいぞ。

 俺たちと同じか、それ以上はある……。まずい!キャンプに戻るぞ!急げ!」


 サーインと清也は、全速力で走り出した。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 2人がキャンプに戻ると、サーインの悪い予感は見事なまでに的中していた。

 おびただしい数の黒い野犬がキャンプに押し寄せ、旅団を襲っている。


 野犬の中心にはサーインの予想通り、清也より一回り大きいほど巨大な野犬がいた。

 まるで、指揮を取っているようにも見える。


 目に入っただけでも何人かが倒れ込み、噛みつかれている。もう既に、息の無さそうな人もいる。

 護衛隊は必死になって戦っているが、それでも数の暴力によって、少しずつ劣勢に立たされている。


 泣き叫びながら、森に引きずり込まれる女性を見た瞬間、清也は酷い悪寒がした。


「まずいっ!彼女は今……!花っ!!」


 清也はそう言うと、花と別れた地点へと走り出した。




 テントに近づくと女性の叫び声がする。


「誰かぁーッ!助けてー!」


 花の声だ。


「今行くからなぁーっ!」


 力の限り叫び、襲われている花を励ます。


 曲がり角を曲がり、ついにテントが見えて来た。

 丁度、野犬が花に食らいつこうとしている。


「やめろぉぉぉっっ!!!」


 清也は加速したが、間に合わなかった。

 野犬の牙が、花の膝に深々と突き刺さる。


 野犬が、今度は花の腹に食らいつこうとした時、清也は遂に花の元に到着した。

 背後から野犬を刺し貫くと、野犬は瞬時に凍りつき、息絶えた。


 清也は凄まじい殺気を放ち、もはや動物の命を奪う事になんの躊躇いも無くなった。

 瞳もかつてないほどに、強く琥珀色に輝いている。


「大丈夫か!?花!」


 清也は聞いたが、花はぐったりとして返事がない。




「グォゥゥゥ……」


 後ろから低い唸り声がし、振り向くと指揮を執っていた巨大な野犬がいた。


「貴様か!貴様がみんなを!」


 清也は咄嗟に姿勢を低くし、その巨大な野犬に向けて、剣を体の前で斜めに構える。

 既に時刻は8時をまわり、止むことの無い絶叫の中で、満月が二匹の獣を照らしていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ