EP13 試験内容
三日間の特訓。
その戦績は端的に言えば、花の圧勝であった。
初日の勝利がまぐれだったと思わざるを得ないほど、清也の惨敗。そして連敗であった。
そもそも、あの日に清也が勝てたのは植物を操る花が、棒立ちをしていたからであって、もしも根本を守っていたら、蔦と杖の挟み撃ちで、清也にはなす術が無いのである。
そして、清也は殴られ続ければ倒れてしまうのに対し、花は自分を回復することができる。それも清也が勝てない要因の一つであった。
だが、清也もただ負け続けていた訳ではない。
動きは初日に比べれば格段に機敏になった上に、斬撃も一撃が重く、鋭くなっていった。
「凄い進歩じゃない!まだまだ私には及ばないけどね!」
訓練を終え町へ帰る途中、花は得意げに言った。
「結局勝てなかったけど、どんな試験でも僕たちなら合格できる。そんな気がする!」
「じゃあ、明日の7時に正門ね!」
花はそう言うと、走り去って行った。
3日目の夜は明日が楽しみに、そして不安に思えた。
しかしそれ以上に、とても疲れていたため2人ともあっさり眠ることができた。
そして、夜が明けた。
朝日がソントの町を煌々と照らし、気温は暑すぎず、寒すぎない。そんな心地よい朝だった。
清也は朝早く起きて体操し、身支度を整えて約束通り7時に正門に到着した。
予想通り、花は既に来ていた。
「どんな試験なんだろう?」
道中で先にその話題に触れたのは花だった。
「巨大モンスターの討伐じゃないかなぁ?連携が大事だって言ってたし。」
清也は当たり障りのない答えをした。
「友情の山……もしかしたら2人組のモンスターを2人で相手するのかもね。」
花は、より建設的な意見を述べた。確かに、友情の山と呼ばれるからには由来があるはずだ。
「何度も言うようだけど、どんな課題にせよ、僕たちなら合格できるさ!」
清也は張り切った調子で言った。
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そうして歩くうちに、2人は地図に書かれた友情の山に到着した。
麓にはキャンプが貼ってあり、口髭を生やした中年の気難しそうな男性が腰掛けていた。
「お前達か、今回の試験を受けるのは。」
話しかけるより先に向こうが気付いたようだ。
「はい!よろしくお願いします!」
2人同時に元気よく答えた。
「先に言っておく、この試験は世に無数にある登録試験の中でも最高難度の物だ。
今、酒場にいる連中で、この試験を突破した者は1人としていないだろう。そう断言できるほどの試験だ。
今いる奴らは皆、わざわざ他の町にまで行って試験を受けた者だ。
先に警告しておくぞ。この試験は失敗すれば、最悪2人のうちどちらかが”死ぬ”ことになる。」
そこまで言われて、2人の顔からそれまであった笑みが消えた。
「これではやる気が起きなくって、結果も悪くなるだろう。だから、良いことを教えてやろう。
この試験を突破したものは皆、例外なく偉大な冒険者になっている。」
「一体、試験の内容はどんな物なのですか?」
花が耐え切れなくなって聞いた。
「一度しか言わないからよく聞くんだぞ。山頂には”絆の大樹”と言う神木がある。
その木のハート型の葉を、どちらか一方が持ち帰り、その後3時間以内にもう片方が戻ってくれば、その時点で合格だ。もし、戻って来なければ不合格だ。
片方が持って帰って来たなら、もう片方が持って帰って来なくても良いからな。」
それを聞いた2人は安堵した。想像の何倍も簡単な試験だったからだ。
洞窟に住む黒龍を討伐してこい。などの無茶振りを予想していたので、拍子抜けでもあった。
ただ、相手が下山したかどうかを知る方法が無いのだと気づき、冷や汗が出始めた。
確かにそれなら、お互いをよく知っていなければ成功しない試験だ。
相手の足の速さを知っている必要がある。
「言い忘れていたが、下山した時には狼煙をあげる。それを見たらすぐに降りてこい。
お前らのような軟弱者でも、3時間あれば頂上からでも下山できる。
とはいえ、上の方は酸素が薄いからな、これを飲んで高山病を予防しろ。今飲めば、頂上付近で効果が出始めるさ。」
そう言うと、2人に2粒の錠剤を渡して来た。
「これ!飲んだら二分の一の確率で死ぬ毒薬だったりしませんよね?」
清也は少し怯えながら聞いた。
「そんなわけ無いだろ。」
男はあっけらかんと言った。どうやら大丈夫そうだ。
清也は思い切って飲んでみたが、なんとも無い。花も続けて飲んだが大丈夫そうだ。
「飲んだなら早く言った方がいいぞ、効果が切れるからな。」
そう言われて、2人はすぐに登山道を登り始めた。
2人が見えなくなったのを確認してから男は小さく呟いた。
「飲んだって“死にはしないさ”。」




