EP11 本名
呆気に取られているフラウをよそに、清也は話を続ける。
「実は僕も転生者なんだよ。君は5億円が分かる。つまり、日本人だね?僕もそうなんだ。
僕の本当の名前は吹雪清也。君の本当の名前は一体なんだい?」
流石にフラウも状況が飲み込めたようだ。
どうやら自分は捨てられる訳ではないと悟り、安堵する。
「私の名前は花。楠木花です。
偽名なんて使ってごめんなさい!この名前だとバレてしまうかと思って……。」
「いいんだ。僕も使っているからね。お互い様だよ。それに、1人目に話しかけたのがあの人なら尚更……。」
そう言って、清也はあの日、大声で怒鳴り散らしていた客を思い起こした。
FlowerとCamphor treeでフラウ・キャンフォー。
日本人は結局同じ発想に至るのだと思い、清也は自分の偽名と比較して感慨深くなった。
「それじゃあ、秘密も無くなった事だし、試験のエントリーに行こうか!」
清也はそう言って花の手を握ったまま、ギルドに向かって走り出した。
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ギルドにつくと最奥にあるカウンター、試験の申し込み窓口に向かった。
「冒険者の酒場名簿登録試験を受けたいのですが。」
「この町の試験は二人一組で受けてもらう事になってます。
そちらの女性と共にエントリーすると言う事でしょうか?」
「はい!」
同意を求められた花は、元気よく答えた。
「試験は3日後の朝8時に始まります。
私は内容を知らないのですが、互いをよく知り、共に試験に向けて研鑽することが、合格の秘訣と聞いております。
試験の内容は当日、会場である"友情の山"にて伝えられるとのことです。お二人のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」
清也はここで本名を言うべきなのか、それとも偽名を使うべきか迷った。
しかし、転生者である事を隠しても、いずれは知られると思い「吹雪清也です」と名乗った。
すると、花は少し驚いたような表情をしたが、続けて「楠木花です。」と名乗った。
「清也さんと花さんですね。では3日後の朝8時、友情の山の登山道入り口にて、試験官がお待ちしております。」
そう言って受付の男性は奥へと向かっていった。
どんな試験なのかは分からないが、2人なら合格できる。
そんな不思議な自信が清也にはあったが、事前の準備はしっかりとするべきだと思った。
「それじゃあ、昼ご飯でも食べに行くかい?
だけど酒場のご飯は飽きたし、多分周りに色々言われる……。
僕の下宿先……に転生者だとバレるのはまずいかな。
まぁ、町を一回りしようか。ついでに今後の予定も立てよう。」
そう言うと、清也は花と手をつないでギルドを後にした。
前を向いて歩きだした清也は気付かなかったが、手を掴まれた花は少しだけ顔を赤らめていた。




