EP106 漂着
「う、う〜ん・・・。ここは・・・?」
シンと共に破海竜に乗ってシャノン近海から離脱した花は、波打ち際で意識を取り戻した。
空は暗く、時間の感覚がない。
「どれほど寝てたのかしら・・・?
シン、起きて。私たち生きてるわ・・・アハハハッ!!!アンタ何やってるのよ!」
花はシンを見つけようと辺りを見渡した。するとそこには・・・
「ああうあ"いえうえ!!!えおっえおっ!」
(はやくだしてくれ!!!ゲホッゲホッ!)
シンが逆さ向きに地面に突き刺さっていた!
誰がどう見ても滑稽な様子に、花は笑わずにはいられなかった。
「ごめんごめん!すぐ出すわ!」
花は慌ててシンを引き摺り出した。
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「ふぅ・・・。死ぬかと思った。・・・あれ!?」
シンは深呼吸をすると、自分の体に起きている異変に気が付いた。
「・・・!!!あ、足が・・・生えてるぞ!!!」
「嘘っ!?」
その事実に二人とも驚愕した。
確かに、シンに生えている足は義足ではなく生の足である。
花は急いで水晶の杖を確認したが、魔法を放った履歴は無く、エリクサーの雫も杖の中に残っている。
「一体誰が・・・?」
花は必死に答えを探したが、結局何も分からなかった。
そもそも、シンの足はシャノン近海を離脱する前に雷夜が治していたのだが、本人たちはそんな事知る由もない。
「まぁ、何でも良いわよ!足は治ってるんだし!!」
「そ、そうだな!よっしゃあぁぁっっ!!!」
二人は雑に納得した。
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「・・・ここは何処なんだ?シャノンじゃ無さそうだが・・・。」
シンはついに、現在地について調べる事にした。
背後にはヤシの木が生い茂り、波打ち際の砂は温かい。
天気が悪い為に気温は低いが、恐らくここは熱帯に属する地域なのだろう。
「ちょっと寒いわね・・・。」
花は身震いしながらシンに同意を求める。
しかしシンは・・・
「そうか?別に寒くないぞ?」
筋肉の鎧に覆われているせいで、殆ど寒さを感じていなかった。
「寒いわよ・・・。海も凍ってるし・・・え?凍ってる・・・?」
花は海辺だと言うのに、波の音が聞こえないのは変だと思っていた。
しかしまさか、その理由が凍っているからだとは思っていなかった。
「変だな・・・。ここは熱帯のはずなんだが・・・?人力で海を凍らせられる奴なんて、いる訳ないし・・・。」
シンは、現状に関して一般的な見解を述べた。
普通に考えて、魔法すら使わずに海を凍らせる者がいるのはありえない。
しかし、あの男は完全に常識から逸脱しているのだ。そんな理屈が通じるはずなく、海が凍っているのは夜閃斬発動の余波である。
「・・・何か来る!伏せて!!!」
「えっ?うわっ!!!」
考えに耽っていたシンは突然、花によって地面に伏せられた。
そしてすぐに、水平線の彼方で小さな閃光が灯り・・・。
ドガァァァンッッッッ!!!!
巨大な爆発音と共に、海が燃え上がった!
シンの頭上、僅か10センチの場所を熱風が弾け飛んでいく。伏せていなければ、間違いなく即死だっただろう。
水平線より発せられた炎の渦は、数分間にわたって燃え続けた。
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「一体・・・何だったのかしら・・・?」
「あんま気にしない方がいいな。・・・嘘だろ!?雪降ってきたぞ!?」
辺りを見渡すと、確かに小さな雪の粒が降って来ている。
「異常気象なんてレベルじゃ無いわね・・・さ、寒い・・・。は、早く、暖まらないと・・・。」
「取り敢えず、この島が無人島で無い事を祈ろう!」
シンは両足で地面の感覚を噛み締めながら、意気揚々と民家を探し始めた。
「さ、寒い・・・。くしゅんっ!」
雷夜はガタガタと震えながら、ヨタヨタとした足取りでシンの後を追った。




