EP9 氷刃
初めての戦い、採掘場の奪還は予想外の事態こそ起こったが成功した。
むしろ、あの事件で2人の仲は深まったと言って良いだろう。
帰路は2人とも疲れていたが、楽しく話していた。そして、ついに町へと帰還した。
「ひどい目に遭ったけど結果オーライだね!」
「もう二度と嫌だけどね。」
入り口を左に曲がってすぐの鍛冶屋に着くと、店主は清也を見ると目を丸くした。
「正直、本当に帰ってくるとは思わなかった!坊主、いやこれは失礼か。あんたすげぇな!」
「これはお返しします。本当に助かりました。これがなかったらどうなっていたか……」
そう言うと、清也は盾と図鑑を差し出した。
「いや、いいさ。あんたが持っていってくれ。
図鑑の内容は暗記してるし、盾は俺が持ってたって仕方が無いからな。そいつも、お前に使って欲しいだろう。
さーて剣、だったよな?ちなみにちゃんと原石は持ってきたか?」
そう言われ、清也は握りしめたアイス・クリストを、卓上に差し出した。
「アイス・クリスト……ほぉ〜星5か、なかなか良いものを持ってきたじゃねぇか!
このレベルの素材は一年に一回ぐらいしか見られねえからな!腕が鳴るってもんだぜ!
1日待ってくれ。俺は30年この仕事をやってるが、今なら最高傑作が作れるはずだ!」
そう言われたので、一度各々の宿泊先へ帰ることになった。
「明日の朝8時に、またここで集合ね!」
店へ帰ると、急に疲れが襲ってきて、今日の出来事が次々に思い起こされた。
「空から鉱石が降ってくるなんて、それこそ宝くじに当選するくらいの奇跡だな……。
……?待てよ……5億円の宝くじ……そうか。そう言う事か。」
清也の中で、全ての違和感のピースがハマった。
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翌日、鍛冶屋へ向かうと彼女は既にそこにいた。
「おはようございますセーヤさん♪楽しみでちょっと早く来ちゃいました!」
「おはよう、フラウ。もう完成品は見たのかい?」
「いえ、まだです!店主が勿体ぶってて……。」
フラウがそう言うと、店主が窓から顔を出した。
「勿体ぶりもするさ!なんせ、名実ともに歴代最高傑作だからな!さぁ、見てみろ!」
そう言って店主が取り出したのは刃が白く輝く剣だった。両刃で、柄は銀で出来ている。
「こいつは"フローズン・エッジ"って言うんだ。
300年前の勇者が愛用したとも言われる。扱いやすい剣だ。1時間に3回、冷気を纏った攻撃ができる。20分ごとに1回分回復するからな。
大切に使ってくれよ!」
店主から差し出された剣を、清也は手に取ってみた。ひんやりと冷たく、指に不思議とよく馴染む。
「凄い剣だね!勇者様と同じなんて!これなら、試験も突破できそうだね!」
フラウは嬉しそうに言った。
「君はもう受けたのかい?」
「いや、まだよ。2人で1組の試験らしいの。」
「なら、ちょうど良いね!素晴らしい剣をありがとうございます職人!」
そう言ってギルドに向かって歩み出した。
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「君に話がある。」
ギルドに向かう途中で、清也はそう言ってフラウを人気の無い路地に引き込んだ。
フラウは清也に、全く人通りの無い場所に連れ込まれたという現状に少し怯えている。
「2人でチームを組むなら隠し事がない方が良いと思うんだ。だから君にどうしても聞きたいことがある。」
そう言うと、フラウは慌て始めた。そして作ったような笑みと共にこう言った。
「えぇと……何の話かな……?あっ!実は私、普段はタメ口で」
そこまで言われて、清也はフラウの言葉を遮った。
「違う。そんな事じゃない。」
一呼吸置いて、衝撃的な質問をフラウに投げかける。
「君は転生者なんじゃないか?」
それを聞いたフラウの顔は、見事に凍りついた。




