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55 メリバエンドは阻止させていただきました!


 最終審査後のシュバリィー家の帰りの馬車である。

 

 あの後デュポン男爵は自ら罪を告白し、その場で爵位を返上した。そして、サド家と養父母には謝罪と賠償金を支払うこと。学園にはそれ相応の寄付金を払い、娘を退学させるとしたのだ。

 カミーユはそれを聞き、すべてを許してしまった。

 カミーユにしてみれば、騙されていたとはいえ、デュポン家やメガーヌがいなければ学園でもっと苦労していたと思ったのだ。


 メガーヌが学園を辞めてしまうことは寂しいと、イリスもカミーユも思ったがどうすることもできない。




「あっはっはー! よくやったぞ、よくやったニジェル!!」


 シュバリィー侯爵がご機嫌で隣に座るニジェルの背を叩く。ニジェルは迷惑そうな顔で父を見た。


「最後のお前の働きで、我がシュバリィー家は、聖なる乙女の出自を明らかにした。さすが誉れ高き騎士の家系。守るべき正義を守ってこその騎士だ」


 声がでかいわー。


 イリスは鼻白む。


「それにしてもニジェルが聖なる乙女と懇意だったとはな。なぜ言わなかった」

「お話するほどのことでもありません。困っている淑女レディを助けるのは騎士ナイトの務めです」


 ニジェルは澄ました顔で答える。


「まぁおいおいカミーユ嬢を家へ招待なさい」


 イリスはうへーと思いながら話を聞いている。 


「そしてイリスよ。やはりお前も正々堂々たる騎士の魂を受け継いでおる。正しく聖なる乙女を推挙するその気高き心。父は嬉しい!」


 だから、声がでかい。


 イリスはため息をつき、心の中で耳を塞いだ。


 ご機嫌な父は一人で話させておけばいい。

 イリスは曖昧に頷いて、馬車の窓から流れる景色を見ていた。




 学園の寮に戻り、やっとくつろげるイリスである。

 ボフンとベッドに飛び込んで、布団に顔を埋める。


 やった! やったわ!! カミーユが聖なる乙女! 


 足をバタバタさせて喜ぶイリスである。

 イリスがレゼダと婚約をせずにカミーユが聖なる乙女になったことで、レゼダルートのメリバは完全に阻止された。

 シティスも婚約者が健在で、カミーユとの接触は薄い。イリスも魔法をかけてもらっていないので、こちらのメリバも阻止できた。 

 残るは現在一番可能性の高いニジェルルートだ。ゲームのイリスはカミーユを認めなかったが、今のイリスは大賛成である。少なくともバッドエンドにはならないはずだ。


 カミーユはこれから学園に通いながら、聖なる乙女の訓練も受ける。そして、サド家の娘として令嬢としても磨き上げられるのだ。

 ニジェルのパートナーとして紹介されるのも時間の問題だろう。


 メリバルートも今のニジェルなら安心だし、万が一にも束縛調教とかしだしたらおねーちゃんが鉄拳制裁で守ってあげるからね! カミーユたん!



「良かったな、イリス」


 ベッドサイドにふわりとソージュが現れた。

 小さな妖精たちもワラワラと湧いて出る。


「よかったね、イリス」

「よかったねー!」

「ありがとう! 無事、メリバエンドは阻止させていただきました!! やったー!!」


 喜びのあまり叫ぶイリスに、妖精たちの頭にハテナが飛んだ。


「めりばえんど?」


 イリスは我に返り、コホンと咳払いする。


「今日はお祝いにパーティーしましょ!」


 イリスの声に、妖精たちがはしゃぎだす。


「私、紅茶、いれるー」

「ぼくもー」

「ジュース、ジュース!」

「クッキーある?」

「クッキー!」

「クッキーもジュースもあるわ!」


 イリスと小さな妖精たちがいそいそと準備をはじめる様子をソージュは目を細めてみている。


 準備が整い各々カップをもって乾杯をする。


「おめでとー! イリス!」

「おめでとー!」


 イリスは聖なる乙女に選ばれなかったのに、おめでとうとはおかしな話だと思ったが、自分の願いが叶ったのであまり気にならずに「ありがとう」と答える。

 ソージュはその笑顔を見て、イリスの頭を撫でた。


「イリスの頑張った結果だ。報われてよかったな」

「はい!!」


 この時イリスはわかっていなかったのだ。

 なぜ、シュバリィー侯爵が聖なる乙女に選ばれなかったにもかかわらず、あれほどまでに機嫌が良かったのか。

 なぜ、妖精たちがこんなに喜んでくれるのか。


 単純に、カミーユが聖なる乙女になったことを一緒に喜んでいるのだと思っていた。




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