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【コミカライズ・書籍化】私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!  作者: 藍上イオタ@お飾り側妃は糸を引く7/5発売
本編

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48 人気コンテスト 2


 次はドレスに着替えてのダンスである。

 イリスは茫然としていた。


 こんなの、こんなの、神コスプレイヤー様しか着こなせないでしょうがぁぁぁ!!


 着替えの部屋に用意されたドレスを着て、イリスは泣きたい気持ちになっていた。


 着替えて控えの場所に、ノロノロと出てゆく。ダンスのパートナーのレゼダは満面の笑みでイリスを見た。


「イリスはコンテストのドレスをデザイナーに一任したと聞いたから。勝手に用意しちゃった」


 レゼダがキュルンと笑う。イリスは言葉もない。


 イリスはゲーム上のイリスが着ていたドレスを知っていた。定番のよくある夜会用ドレスだった。しかし、イリスにとってゲーム世界のドレスのデザインはとても難しい。その為、採寸だけ行って、後は最近流行りだと聞くメゾンに任せてあったのだ。父経由でレゼダに漏れたのだろう。


 イリスの喉の奥がヒクリとなる。


「……あの、殿下?」

「レゼダ」

「レゼダさま、さすがにこのデザインは……」

「最近、街ではこういうものが流行っているらしいよ。コンテストは町人も投票するから、貴族向けばかりではだめだと思って」


 レゼダはニッコリと笑った。


 イリスは顔をひきつらせた。


 おかしい。ゲームの中ではノーブルなダークグリーンのロングドレスだったはず。


 今イリスが着ているドレスは、夜会などで着るには奇抜なドレスだった。


 ドレスの一番上の白を基調としたワンピースは長袖エンジェル・スリーブだ。オープン・ショルダーで丈は踝まであり、おへその少し下あたりから左右に広がっている。そのすぐ下はミントグリーンの透ける素材のぺチコートだ。ペチコートは脛丈の長さがあるが、ラップスカートのようになっていて、丁度中央膝頭部分でラップが合わさる。太もも部分はラップが重なっているため透けはしないが、そこから下はシッカリと透けている。ところどころにあるアクセントはピンクだ。


 これ、白地が黒なら完全に魔法少女の敵役女幹部じゃない?


 イリスのドレスはカミーユのドレスに比べて露出は少ない。しかし、その分、透けて見える足が煽情的にみえる。見えそうで見えない、モロミエよりパンチラ派の夢と希望を詰め込んだドレスである。


 オタクとしてはアリよりのアリアリ! イリスたんに着て欲しい! わかるのよ、ええわかります。でも自分が着るのは恥ずかしいー!

 

「まさに聖なる乙女だね」


 レゼダがニッコリ笑う。

 イリスは、とりあえずギクシャクと笑ってみる。もうダンスの時間だ。今更違うドレスを用意することはできないし、お任せだと言ったのはイリス自身だった。受け入れるしかない。


「ありがとうございます……」


 イリスは力なく礼を言った。そして、チラリとやはり着替えを終えたカミーユを見た。


 カミーユのドレスは、フリフリのパニエで膨らませたタイプのミニスカートドレスで、サテンのような鮮やかなピンクのコルセットをしていた。肩の膨らんだパフ・スリーブに、ギリギリの丈のミニスカートで、白いニーハイソックスを履いていた。ピンクのコロンとした太いヒールの靴のかかとには羽根が付いている。輝く絶対領域をもつ、いわゆる魔法少女的なコスチュームだ。


 うん、そっちを着るよりはマシ……かぁ?


「カミーユ嬢のその、ドレス……」


 ニジェルも戸惑っている。一応足は見ないようにしているのか、目線が彷徨っている。


「おかしいですか? メガーヌさんと一緒に考えたんですけど」


 カミーユは恥じらいもなく堂々としたものだ。街中で短いスカートを穿き慣れているからだろう。


「おかしくはないけれど……」


 言い淀むニジェルにイリスはヤジを飛ばす。


「可愛いなら可愛いって言いなさーい!」


 イリスの声に、カミーユとニジェルがギョッとして振り返った。


「イリスは、本当に美しいね。まるで女神のようだよ」


 レゼダが当然のようにイリスの腰を抱き、イリスはうんざりしたようにレゼダを見た。


「まったくもう! 人を玩具にして楽しんでますね?」


 唇を尖らせてイリスが拗ねれば、レゼダは嬉しそうにニコニコ笑う。


「うん、可愛い」


 ニジェルはそれをみて、ボソリと呟く。


「殿下の趣味はどうかとおもいます」

「……あの、やっぱり、露出が多かったですか?」


 カミーユがオズオズとニジェルに問う。貴族と平民ではマナーも美意識も違う。ニジェルと行動を共にするだけ、その差を歴然と感じているカミーユだった。

 練習として時を重ねた分だけ、カミーユはニジェルに惹かれていた。しかし、身分を考えれば自分が望んでいい相手ではないこともわかるのだ。


 ニジェルは自信を失ってしまったようなカミーユの表情に、胸が少し痛んだ。


「君は似合ってるよ」


 思ったままにニジェルが答えれば、カミーユは両手で頬を押さえた。


 学園長の合図とともに、四人は舞台に出た。





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