第九話 JPNJKヘルベチカ
「ぷにグミと七日ダイコンを狩ってきました」
ぷにグミの討伐証明部位である核を担当の嬢のところで広げる。数を確認してもらった。
「ぷにグミ102匹、七日ダイコン32匹ですね。報酬はこちらになります」
27,200ポイもらった。ポイは通貨っぽい! 円と大体同じくらいの価値である。交換はできないが。
「では次の依頼を頼もう。ぷにグミより強い敵と戦いたいのだが」
「Fランクになればもっと強い敵の討伐を依頼できるのですが……。Fランクになるには採取の依頼も達成しなくてはなりません」
「では採取の依頼は何があります」
「Gランクの採取依頼はこちらになります。おすすめはポマミ草の採取ですね」
「詳細を聞かせてほしいな」
「ポマミ草は薬草です。この近辺だと森に生えてますね」
「ではそれで」
休む暇もなくポマミ草の採取に向かいました。
◇◇◇
「森はここか。マイナスイオンを感じる……これは塩化物イオン!?」
「い、いおん?」
「さて、探そう」
「はい!」
Now Searching……
「よし、今日はこれだけ見つかったな」
ポマミ草は割とよく生えてるので、一日で十分な量見つかった。特に敵とかはいなかった。暗くなってきたので早く帰ろう。
◇◇◇
「ポマミ草持ってきました」
「はい、採取依頼ですね」
数えてもらった。
「8,200ポイとなります」
「どうも」
今日は宿屋に泊まることにする。受付嬢に聞いてみた。
「この辺でいい宿屋ってどこですか」
「どういう条件を重視しますか?」
「一番が安全で、二番がご飯で、三番が湯浴みができることで、四番が値段です」
「でしたら『ポーラの宿屋』がおすすめですね。中の下くらいの値段帯なのでFランクの方でも大丈夫です」
「ではそれで」
ポーラの宿屋に向かった。
着いた。カランコロン。
「部屋を借りたいのですが」
「どの部屋がいいんだい」
「二人部屋で、食事付き」
「3,500ポイだね」
「3,300ポイで」
「うちは一切値切りなしだよ」
「では3,500ポイで」
値切りは通じなかった……
◇◇◇
「ミロスラヴァ、二人部屋でよかった?」
「はい。村でも同じ部屋で看病したじゃないですか」
「ママ……」
「?」
「いや、何でもない。晩ご飯食べに行こう」
「はい」
宿の食堂に向かった。
「ここが食堂か。このチケットで交換してもらえるようだ。なになに、カレーライス、茹でたポテイトと炒めた挽肉、パンとシチューか。どれにしようかな」
「私はポテイトで」
「ポテイト好きだなあ」
「はい」
「俺はパンとシチューにしよう」
テーブルについた。
「いただきまーす」
「いただきます」
ミロスラヴァにもいただきますを教えたのだ。日本文化。
もぐもぐ。パンは硬いが、薄いシチューにつけると食えるようになる。中世を再現しなくても。まあ割と味は悪くない。アチチなスープが飲めるだけで大体満足度は高いのだ。ところでゲームだからといって断食をすると、お腹が減って最後は死にます。現実で餓死しなくてもゲーム内で死んで電子レンジが発動するそうだ。まあそこまで満腹度ゲージが下がると渇望で死にそうになるのであまり心配する必要はない。
ミロスラヴァはジャガイモ……もといポテイトをもぐもぐしている。ああ、そんなに食べたら口がパッサパサになりそう。食べ慣れているので問題ないと言っているが。
食べ終わった。部屋に戻ろう。あ、湯浴みできるんだった。湯浴みは浴場(浴槽もシャワーもない個室)でできるので、入りに行こう。
◇◇◇
二人とも湯浴みをしてきたので、もう寝よう。俺はなんだかんだいつも学ランを着ているが(よく道ゆく人に馬鹿にされる)、寝るときは寝巻きに着替える。その辺で売ってた安い服だ。サンタ帽みたいなナイトキャップも買ってみた。俺は変わったものが好きなのだ。ミロスラヴァの寝巻きはちょっといいものを買った。結構おしゃれなのでパジャマパーティーにも行けるよ。
という訳で寝ます。早寝早起きが染みついてしまったのだ。おやすみなさい……
朝だ。今日もギルドに行こう。自転車操業なので。
ギルドに着くと、黒髪の女の子がいた。珍しい。この辺だと欧米人っぽい人が多い。実際の欧米人よりは二次元よりな気もする。茶髪とか金髪が多いので黒髪は目立つのだ。俺も黒髪なので帽子が欲しい。学生帽は余計目立つのでばつ。学ランの時点で目立つのだが(よく冒険者とかに馬鹿にされる)。ちなみに学ランと呼んでいるが、学生服の上と下とワイシャツでそれぞれステータスが別で、一緒に着ることでボーナスが発生する。要は見た目も強さに直結するのだ。無課金プレイヤーがよくやる拾った装備の寄せ集めみたいな感じにすると、見た目の調和が取れていないと負のボーナスがついてしまう。ラブアンドベリーかな(知らない)。
依頼の受領を終えたのであろう女の子が振り返る。目が合って、(あ、日本人だ)と思ったら、こっちに歩いてきた。
「おはようございます。日本人の方ですよね?」
悩んでしまう。俺がここで日本人と答えるとプレイヤー扱いをされてしまうが、アイちゃんとの約束で俺はNPCを演じなければならないのだった。仕方ないので適当に嘘をついてみよう。
「ニホンジン? なんだいそれは」
「どうしてシラを切るんですか。それ学ランじゃないですか」
「学ラン? これは故郷の伝統的な防具だが、そういう呼び方があるのかい」
「ではあなたはどこの出身なのですか?」
アイちゃーん! どこの出身がいい!?
《ヤマシロ皇国がよろしいかと》
「ヤマシロ皇国」
「……なるほど、ヤマシロ皇国……」
よく分からないが納得してもらえたようだ。
「分かりました。人違いのようでした、すみません」
「いや、構わないよ。君一人で戦うのかい? 採取専門?」
「今のところは一人です。……早くプレイヤーのパーティーを探さないと」
「そうかい。困ったことがあれば聞くといい。俺はログアウト。彼女はミロスラヴァ」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。私はぐじょ……ヘルベチカ・ノイエです」
「ヘルベチカか。では俺たちも依頼を受けるので」
「あ、はい。さようなら」
「さようなら」
ふぃー……。危なかったな。なんとかやり過ごせた。あの子多分本名言おうとしたな、エアプめ。ところで意外と早くプレイヤーに会ったな。パナナ村から凄く遠いここで会うということは、プレイヤーは世界中に散らばっているのだろう。オラワクワクすっぞ。でもNPCのフリを続けなければいけないので、本当の意味での友達はできないのだ……。だから俺は、ゲームが終わるまで暇を潰さなければならない。得るものは、一体……。




