第四話 歳下の女の子に感じる母性……それを人はバブみと呼ぶんだよ
痛みで目が覚めると、見た天井だ。この家が俺の住む場所にされたのだろう。そんなに長居をするつもりではなかったが。
「起きましたか?」
声をかけられた。ミロスラヴァちゃんだ。寝起きに最適だな。美少女というものは。
体を見ると、一応治療がされていた。痛みは強い。早く治そうと思って折れた腕を地面に叩きつけようとしたら、忠告が出た。
《不適切な状態での治療は、身体に悪影響を残す可能性があります》
やめておいた。
「痛み止め……ある?」
「ここに」
水と一緒に持ってきてくれていたようだ。天使かな?
一息に飲み干すと、ミロスラヴァちゃんは待っててくださいと言って、他の人を呼びに行った。
やってきたのは兵長だった。
「何にやられた?」
「熊……」
「それは大きく、黒く、胸に丸い模様がある熊か?」
「そうだ……」
「お前から手を出したのか?」
「違う……襲ってきた……」
正直限界だったのですぐに意識が飛んだのだが、兵長が「おかしい……臆病なマンゲツグマが自分から人間を襲うとは……」と言っていたのが聞こえた。
◇◇◇
目が覚めた。朝だった。ミロスラヴァちゃんはいなかった。これが現実。うっショックで痛みがぶりかえしてきた……。暇だなあ。痛くて起きれないし。ミロスラヴァちゃんがいれば暇が潰せるのに……。と思ってたらミロスラヴァちゃんがやってきた。
「おはようございます、ログアウトさん」
「おはよう、ミロスラヴァ……」
心の中ではいくらでもちゃんで呼べるのだが、口に出そうとすると言えなくなってしまう。だからさんを付けて呼ぼうとしたけど、それも変な気がしてできなかったので、言い淀んでしまった。でも気にしていないようだったので、ミロスラヴァで通すことにする。初めてだ。
「痛くありませんか?」
俺の中のバブちゃんがいたむ〜〜〜〜〜〜!!!! と叫んだ。だが俺はゲェジにはなりきれなかったので、「痛くない…………(震え声)」と言ってしまった。
「薬が効きましたかね」
「う↓ん↑(裏声)」
絞り出して声を出したので変な感じになってしまった。引かないで〜。
「退屈じゃないですか?」
退屈ではあるが、痛くてそれどころではない……。気を紛らわしてほしい。
「う↓ん↑」
「何します?」
お医者さんごっこ……。そしたら治る気がする……。
「話し相手になってほしいかな(早口)」
ミロスラヴァはニコッと微笑むと「何が聞きたいですか?」と答えてくれた。
「この村の名前は?」
「パナナ村」
「この国の名前は?」
「クロコット共和国」
「この世界の名前は?」
「キュリオ」
「この近くに大きな街ってある?」
「この辺だと、そこまで大きくはないですけど……バニーニって町があって、四時間くらいで着きます」
「もっと大きな街は?」
「ザンティアナ。海を挟んでます」
「首都は?」
「ブラケットシティ……ザンティアナより遠いです」
「隣の国は?」
「右上がダイトー帝国、左上は帝政アルバドレイク」
「国について教えて」
「この国は熱帯です。あったかいです。私みたいに肌の色は褐色の人が多いです」
「ずっとここにいようかな……」
「それは……婿に入るということですか?」
入るーーーーーー!!!! と言いたいところだが、冒険をしなきゃ。
「俺は、冒険しなきゃだから」
「そうですか」
「それで、ダイトー帝国は?」
「変わった国ですね。何千年の歴史があると聞きましたが。肌の色は黄色です。あなたと同じ」
「帝政アルバドレイクは?」
「先進的な国です。それより西にはもっと進んだ国があるそうですが」
「どっちに行けばいい?」
「どちらも攻撃的な国ですからねえ……この国にいた方がいいのではないでしょうか」
「じゃあ下に国はある?」
「この国の島々はありますが……他の国があるかは分かりませんねえ」
「どっちに行こうかな……まあいいや。冒険ができそうなところってない?」
「ダンジョンがあります。洞窟型のがこの近辺にもありますよ」
「じゃあこの辺でバッタと熊以外のモンスターっている?」
「水辺から来るモンスターは多いですね。魚とか亀とか。大体狩られてしまいますが。陸だと虫型か、オオカミのモンスターが多いですね。熊と、音のしない蜂と、黒くて素早い蝶を見つけたらすぐに逃げてください」
「手っ取り早く強くなるには?」
「強い敵と戦うことですね。格上の敵を倒すと明らかに強くなるそうですよ。あとは強くなくても硬いだけとか素早いだけの敵とかも倒すと強くなったり……。技術を磨くのもいいですね。強い人に戦い方を教わったらどうでしょう? あとダンジョンの中は強くなりやすいって聞いたことがありますね」
「そっか。じゃあ君のことが知りたいな」
「私ですか? 私はミロスラヴァ・スラヴィツカー。村長の孫です」
「変態痴漢魔です」
「? 知ってますよ?」
綴りは書かないと通じない。
「好きな食べ物は?」
「牛のおにくです」
「嫌いな食べ物は?」
「ちょっと待ってください。あなたのことも知りたいです」
「好きな食べ物はモツ煮。嫌いなものは納豆」
「ナットー……? 嫌いな食べ物は……内臓ですかね」
「趣味は?」
「知りたいことを勉強することですね」
「俺は今が趣味」
「?」
「今したいことをしてるから楽しいってこと」
「いいことです」
「歳は?」
「十六です」
「俺は十八……俺のが歳上だな」
「残念です」
「どういう意味だろう」
「どこから来たんですか?」
「空から落ちてきた……」
「空?」
「というか落とされた」
「カンリシャに会われたのかもしれませんね」
「管理者?」
「神様みたいな方です」
「いやー神様っぽくはなかったけどなー」
「でしたら『迷子の予言』かもしれませんね」
「『迷子の予言』?」
「各地に『ある日突然外の世界からの迷子が多数現れるだろう』といった予言があるんです」
「はー……じゃあそれでいいや」
「それでいいんです」
「将来何になりたい?」
「召喚士ですね。強くて、才能がいらない職業だと聞きました」
「俺は……そうだな。ライバルより強くなりたい」
「ライバル?」
「名前も顔も知らないが、たくさんいる……その中で一番になりたい」
「一番ですか」
「人は楽しむために生まれてきたんだ。一番が一番楽しいに決まってる」
「楽しむ……」
「ミロスラヴァは何で強くなりたいんだ?」
「私は……楽しむためです!」
「楽しいのが一番だ」
「はい!」
「…………眠くなってきたな」
「疲れちゃいましたか? では私はこれで……」
「いや、眠るまでここにいてくれ」
「わかりました」
眠った。




