第二話 落としてから上げる
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜わお」
落ちろ、落ちたな。落ちている。天から。何がすごいってリアルな落下感……。スカイダイビングの経験をしてしまっている。頼んでもないのに。怖いよぉ、おねーさん……。あ、名前聞いてなかった。まあいいかあんなAI。聞いても刹那で忘れるからなあんなAI。
《レベルが下がりました》
貴様ッ! 見ているなッ!
《●》《●》
メッセージウィンドウで遊ぶな! くそっ、俺は常にAIに監視されているのか……! いいこと思いついた。
《通報しました》
ハハッ、AIに人権があるわけ……え? ないよね?
《……》
いや〜〜〜〜現実ならともかくここビジターだしな〜〜〜〜。しかも違法フルダイブVRMMO。帰っていい?
地上が見えてきた。アジアの海沿いの村って感じだ。アジア知らないけど。ダンジョンからスタートしなくてよかった。それで死んだら死にきれないからな。
ところで着地ってどうするの? いや、予想落下地点海だから着水なんだけど。
《液体には落下ダメージがありません》
「スーパーマリオ64ーーーーーー!!」
ドボォ。
◇◇◇
「ハアハア……酷い目に遭った……」
久しぶりに泳いだ。服脱がなきゃやばいかと思ったけど、そこまで鬼畜設定ではなかった。脱がなきゃならなかったら本当にやばかった。『空から落ちてきた変態痴漢魔と名乗る裸の不審な男が海から上がってきた』
こうだからな。ハードモードでスタートするところだった。
さて、RPGの始まりだ。とりあえずここがどこかを聞こう。
海から上がってしばらく歩くと、村が見えてきた。高床式の伝統的な住居だ。ここから俺の伝説が始まる……。目標は最前線で戦うグループに入ることだ。攻略組ともいう。いや、このゲーム痛覚あるし人が死ぬのか。痛いのも死ぬのもやだなあ。でも外に出たいしなあ。他のゲームもやりたいから。
とりあえずここでしばらく金を稼ごう。金がないと他の街に行けないからな。では村の中に入っていこう……。
「何者だ!」
「怪しい奴め!」
「捕えろ!」
これが現実。
◇◇◇
「お前は誰だ。何故我らの村に許可なく入ってきた」
「怪しいものではございません。ただの一冒険者でさあ。許可なくと言っても門番みたいな人いなかったし……」
「またあいつか! 今度は減給じゃ済まないからな!」
「ですからあっしは悪うございません。ただ廻り合わせが悪かっただけでさあ」
「……ふん! 癪だが解放してやる! お前が怪しいことには変わりないがな! だがお前をこの村に置いておくわけにはいかん! さっさとこの村を出るんだな!」
なんとか解放された。そして村を追い出された。名前も知らないけど。さようなら……。
まあいいや! 街はこの村だけじゃない! 切り替えて次の村に行こう!
俺は次の街へ歩き出した。
◇◇◇
《グレネードグラスホッパーがあらわれた!》
《ログアウトのこうげき!》
《グレネードグラスホッパーがかいふくした!》
《グレネードグラスホッパーのこうげき!》
《ログアウトはけがをおった!》
《ログアウトはにげだした!》
◇◇◇
「はあ……はあ……」
死ぬかと思った。死ぬかと思った! 何? このクソゲー。敵回復してんぞ? バグかな〜〜〜〜(震え声) どこも行けないのだが。ちなみに怪我を負ったが、凄く痛かった。突っ込んできて爆発したぞあいつ。血ダラダラでワロタ。なんとか逃げ帰って自分を殴ることで回復することができたが。自分を殴り続けて流血してるやつに見えただろうな。とにかく最初の村まで戻ってきた。自分を回復することができたのでヒーラーとして入れてもらうしかない。
「誰だ! ……またお前か。お前をこの村に入れることはできない」
「実はァ……あっしは回復術師でェ……怪我した人を治療することができましてェ……」
「なんだと! なぜそれを先に言わなかった! ついて来い!」
「あ……落とされてから上げられるのって嬉しくなっちゃうな」
ログアウトはちょろイン。
◇◇◇
「兵長! 回復術師を連れてきました!」
「なんだと! 本当か!」
「ログアウトです」
「お前……! なぜ名乗らなかった!」
「いやァ……新米というかァ……さっきなったばっかというかァ……」
「いいからついて来い!」
俺は連れて行かれた。落ちたな。
◇◇◇
「さあ、早くお前の力を見せてみろ!」
「えーと……大層お綺麗な方でいらっしゃるが……どちら様で?」
「俺の妻だ」
「はあ。それで一体全体どこを怪我してらっしゃるので?」
「怪我ではない。長い間病を患っていてな……」
ちょっと雲行きが積乱雲って感じなんだけど……
「いや、あっしは怪我の治療専門で、病はちょっと……」
「なんだとぉ……!?」
「ひゃい! やってみます!」
俺は兵長の奥さんに話を聞いてみることにした。
「ログアウトと申しまスゥゥゥゥゥ」
「ユ、ユーリアです……」
「どこが悪いですか? ぽんぽんですか?」
「ぽ、ぽんぽん? いえ……一日に何度も胸が苦しくなって……」
「そうですか。胸が悪いのですか。ではお身体に触りますよ……」
そっと胸に手を置いてみる。何も分からないが、分かったふりをしよう。
「あ〜〜〜〜これはいけませんなァ〜〜〜〜」
「わ、私、長く生きられませんか……?」
「おい! 本当に治療なんだろうな!」
奥さんは泣きそうになっている。NPCだが、気の毒だなあ。
「では治療を行います!!!!」
「ひゃいっ!?」
「男女平等パァンチ!!!!!!」
「えやっ!」
病人の顔面を思い切り殴ってみた。こういうのは一息にやるのが愛ってもんだ。若干スッキリはした。ちなみにダメージが入らないので痛みはない。
「貴様ァーーーーーー!!!! 殺す! 今すぐ殺す!」
「兵長! 落ち着いてください! 殺すのはまずいです!」
「最後の一撃は、せつない。」
「こいつを捕まえておけ! ユーリア! 無事か!?」
「あなた……! 胸が苦しくないわ!」
「は?」
「ほら! こんなに動けるように!」
「……ぉおおおおお! ユーリア!」
「あなた!」
いやぁ〜〜〜〜いいことすると気持ちがいいなぁ〜〜〜〜。うん。え? なんで治った?
《勝手に初期ステータス下げたら怒られたので特殊効果つけさせられました》
《今後素手での攻撃には回復効果と状態異常の治療効果がつきます》
《あ、MPの消費もおまけでつけときますねw》
最後のはいらないし、単芝は死ね。
まあラッキーなのでいいや(ピース)
「それでェ……報酬の方はァ……」
「いやあよくやってくれた! 今までの非礼を詫びる! すまなかった! まさかお前が高位の回復術師だったとはな! ガハハ! 今日は宴だ!」
報酬は……? まあいいや、この村で活動する見通しが立ったからな。ここでレベルを上げよう。
その後は回復術師として村中に紹介されることとなった。それは別にいいのだが、他の体調不良者の治療までさせられてしまった。主にジジババだが。年寄りの顔面を殴ってまわる男。サイコだな。ところで治療代は? え?
夜になると宴が始まった。エスニックな楽器でエスニックな音楽がドンチャカ演奏された。踊り子もエスニックな踊りを披露して、エスニックな料理を頂いた。エスニックエスニック。
エスニックな酒を飲まされてVRのはずなのに酔ってしまった。現実では飲んだことはない。そしたら同い年くらいの女の子がお礼と言ってほっぺにチューをしてくれた。初めて会ったので家族の爺か婆か牛を治療したのだろう……。だが俺は途中から記憶がなくなってしまったので、その後はどうなったのか知らない……。




