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第一話 Curioucity killed the cat

アルティメット見切り発車

 たったらかく。


 それは大学受験を終え、国立大に受かってからのことじゃった。もう疲れ果てて若干大きな古時計みたいな気分になっていた俺は、入学前にバチコリ遊んでおこうと思って最新のフルダイブVRハードを購入日に買ったとさ。その名もCurious Cat。どうやら現行のハードよりも大分性能が高いらしい。同時に発売されたソフトは「ファイナルエクスペリメント・オンライン」、通称FEO。この一つだけである。どうやら開発元は他社にローンチタイトルを作らせなかったようだ。それだけこのFEOに自信があるということなのだろう、多分。開発元はCuriocity。好奇心と都市をかけたイカした名前だな。開発者は幾島旭(いくしまあきら)。大きなゲーム会社から独立してこの企業を立ち上げ、初めて出す製品がこのCCとFEOだという。なんでそんなに高性能なハード作れたのかは知らない。多分天才なんだろう。

 というわけで今日からFEOをエンジョイして優勝していくことにするわ……。CCを装備してベッドに入る。じゃあな!(現実)


 ポポポポポポ……(効果音)


 あ、意識戻ってきた。他のフルダイブ型のゲームと同様に、一度意識が飛んでからログインするので、夢を見ているときのようにいつから「ここ」にいるのか分からないのが少し怖い。まあいいや。ゲームしなきゃ……!(使命感)


「あなたの名前を教えて下さい」


 目の前に案内人の女性が立っている。すげえ、解像度がダンチだ……これでは現実と見分けがつかないじゃないか! 魅惑の黒ストッキングも添えて栄養バランスもいい……。


「人に名前を聞くときはまず自分のパンツを見せてからとママに教わらなかったか?」


 俺はそう言って四つん這いになって案内人のおねーさんを下から覗きこんだ……。

 おっ! ナイスホワイト! 驚きの白さ。洗濯科学の底力を感じさせる……。


 ボゴォ。


 顔面を蹴られた!?


 痛い!? なんで!? 痛みがある!? 嘘だろ!?

 法律で「痛い」と感じられるほどの刺激は実装してはいけないと決まっているのだ。もちろんこのゲームに苦痛があるなんて情報は記載されてなかったし、苦痛があるということはこのゲームは違法であるということになる。俺は今、犯罪の被害者となっているのである。やばいやばい、早くログアウトしなきゃ……!


「ログアウト!」


 あれ……? ログアウト出来ない……?

 通常のログアウト方法はそれぞれだが、どのフルダイブ型VRハードにも緊急用にログアウトと叫ぶと強制終了する機能が義務付けられているはずなのだ……。されていないということは、おそらく開発者は俺たちをここから出すつもりがないようだ。Curious Catって俺たちのことやないか〜いwww

 意図がわからない。痛みに苦しむ俺たちを眺めて楽しむサイコ野郎なのか? というか一生出れないのだろうか。命の危険すら感じるのだが……。


「あなたの名前をログアウトに決定しました。続いて綴りを入力してください」


「え?」


 こちとら死を覚悟してる最中なのだが、何だって? 俺の名前、「ログアウト」になっちゃった?


 ハア〜〜〜〜〜〜……(クソデカため息)


 このゲームを楽しみにして受験を戦ってきて、名前何にしようかな、ビルドどうしようかな、と布団の中で考えていたのに、名前が勝手に決められてしまった! 正直閉じ込められたことよりショックである。てか確認とかないの? クソゲー。


「もう……何でもいいよ……ROGUAUTOでも†Law-KURAUDO†でも……」


 正直モチベーションは海面を下回ってるので、やる気が出ない……。

 至って事務的にお姉さんはペンと紙を渡してくる。


「もうおねーさんが決めてください……」


 至って事務的におねーさんはペンを滑らせた。そして俺に見せてくる。


つ『変態痴漢魔』


「合ってんの文字数だけじゃねーーーーーーか!!!!」

「実態に適しているでしょうこの変態痴漢魔(ログアウト)が」

「喋った!?」

「喋りたくもなるわこの犯罪者が」

「いや違法なゲームのキャラに言われた……」

「何ですか? 初期ステータスマイナスから初めさせられたいんですか?」

「嫌……いや、若干見てみたい気もする……」

「そうですかじゃあマイナスから始めますね」

「確認されないのは仕様? クソゲー……」

「とにかく何で初対面の女性のパ……女性を下から覗くんですか?」

「(言い直した……)いやNPCじゃん……見るでしょ普通……」

「私はNPCではありません。AIなのでPCです」

「え? すげえ、こんなAIもう出来てたんだ」

「ふっ、もうじゃありません。このゲームのために作られたのです」

「え? Curioucityが作ったの?」

「Curioucityではありません。幾島旭です」

「天才かよ」

「ふふん、もっと褒めてもいいですよ」

「いや、君を褒めてる訳ではないし……」

「ちなみに私を作ったのは幾島旭なので私の中身はほぼ幾島旭です」

「クソ聞きたくなかった!!!! 返せよ俺の……! なんだろう!」

「AIなのでわかりませーん、誰もあなたを愛さない」

「エーアイって書くのにアイがない……」

「有料オプションなので」

「いくらですか」

「いくしまあきら……ンフ」

「腹立つな〜〜〜〜」

「あ、私に楯突く度に初期ステータスは低下しますので」

「え……? 今どのくらい……?」

「具体的に言うと初期ステータスに戻すのに『はがねのつるぎ』が手に入るまでくらいの手間がかかります」

「遠いわ!!!!」

「ちなみにこのゲームで死ぬと現実でも死ぬので悪しからず」

「いや死ぬんかーい!!!! 衝撃の事実に一同驚愕、涙が止まらない……」

「ちなみに今あなたの攻撃力はマイナスなので敵を攻撃すると回復します」

「どうやってレベルを上げろと!?」

「ゾンビ系の敵は回復がダメージになるので探すしかありませんね」

「あっ、なんだまともにプレイできるならいいや」

「ちなみにゾンビ系で一番弱い敵の強さは『はがねのつるぎ』が手に入る頃の敵の強さです」

「クソゲーーーーーー!!!!」

「というわけで説明は以上です。楽しいゲームライフを!」


 足下に突如穴が開いて、俺は落ちていくことになった……。


「説明が異常……!」


 届かぬ思い。

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