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第四話:肉肉肉林

 レン君達はもう焼き肉広場かな、ずいぶん時間たっちゃったから食べ終わってるかもしれない。


「お待たせー、やっぱもう始めてるよね。まだある?」


 焼き肉広場には数グループがそれぞれ集まって、さながらバーベキューパーティーみたいなノリだ。

 誰が始めたのか、売ってもそれほど値段にならないし、どうせならみんなで味わおうぜ! と始まったこの広場は、今では常設となっている。網を片付けてもすぐ誰かが持ってきて肉を焼き始めるからきりが無い。


 しかし食品を扱うデリケートな問題から、協会はこの広場のことを公認してはいない。起こる問題は自己責任でというわけだ。


「ウサギ肉取ってありますよ。今差し入れでもらった蛇肉と鶏肉の食べ比べです」


 見渡せば蛇肉を初めてな人は恐る恐る口にし、過去に食べた人は「食べれなくはないが、鶏肉には勝てないな」みたいな品評を行っている。


「新人に蛇肉は難易度高くない?ウサギ食べた後だとそうでもないのかな?私からも差し入れあるから、みんなで分けちゃって。少ないけどね」


 買い取りに出さなかった1kgのうち500gmのブラウンピッグの肉を渡す。ウサギ肉のお礼だ。あとここに居る人達への餌付けか。


「豚肉!?いいんすか!」


「あんまりないから、喧嘩しないようにね」


 めざとく何の肉か察した者達が寄ってきてヒソヒソ話してる。


「やべ、初めて見た」「一度食べたことある、マジでヤバイぞ」「一切れほしぃ」「あれがグラム六千円の……」


「チハルさんの差し入れだぞー。騒ぐとみんな寄ってくっから、こそっと一切れずつ分けるぞ」


 肉の写真撮ってる人まで居る。後で誰かに自慢するんだろうか。


 みんな分けて貰った肉を無言で焼く姿は異常だ。まるで祈りを捧げる聖職者のよう。

実際は少しでも最適な加減を見逃さないため肉をガン見して俯いてるだけという絵面だ。その瞳には「もういいんじゃ?いや、まだか。もう少し!」そんな感情がうかがえる。


 一人が肉を口にすると皆一斉に食べ始め、しばらくすると不気味な笑いが聞こえ始めるる。


 わかる、最近は良く持ち帰って家で食べるから感覚が麻痺してるけど、笑っちゃうくらいおいしいんだよね。買い取り価格でグラム六千円、市場価格だと一万を超えて提供されるレベルの肉のおいしさは半端じゃない。

 まだ提供量が少ない分プレミア的な価格付けだけど、十分その価値はあるくらいのおいしさなのだ。


 ウサギ肉もおいしい、久しぶりに食べたけど弾力のある歯ごたえで臭みの無い肉の味が強くてカレーとかにも合いそう。


――今度から帰りに少し狙ってみてもいいかも。



「やばっ、こんなウマい肉ってあるんだ」「豚肉って何階?」「ブラウンピッグは5Fだよ」「やべぇ、遠い」「でも行く価値あるぞ、コレは」「武器強化必須だけどなー」


 今日ツライ思いをした新人達も、これを糧に頑張ってほしい。


「レン君達は食べ慣れてたかな、でもおいしいっしょ」


「いやぁ、初ドロップ品を分配して食べて以来、全部換金してますからね。久々です」


「そうなんだ?そうだ、今度引率で何教えれば良いかちょっと教えてよ。さっき初めての引率依頼受けちゃってさ」


「さっき呼び止められてた件ですか。そんなの言ってくれればすぐ教えますよ」


「じゃぁお願いね。チャンネル開けとくから、応答無かったらテキストで送っといて」


「僕の場合、武器の選択とかは参考にならないと思うんで端折って送りますね」


「うん、武器はね。ダイジョウブダヨ」


 斧女子獲得チャンスだ、それすなわち斧の知名度向上につながる。この機会を逃す手はない。


「あ、なんか悪い顔してますよ!ちゃんと説明して本人に選ばせないとですからね!」


「わかってるって!引率の件、忘れやすそうな要点だけでもいいから、お願いね。私そろそろ帰るからヨロシクー」



 広場から逃げ出して駐車場へと向かう。


 今日は朝一からダイブしてたから、一番近い駐車場に止めることができたから楽だ。


 昼過ぎとかだと、日によっては第二駐車場の方になっちゃうからね。その場合ちょっと不便な距離にある。


 18の誕生日前後は忙しかったなぁ。第一陣ダンジョン探索許可に運良く合格しちゃったからその講習と自動車学校と学校の授業。かなりハードだった。


 3ヶ月かかってやっと免許取れたとき、一陣の先行もあって稼ぎもそれなりにあったから新車を買った。協会認可レベルのセキュリティ付き軽ハイトワゴン。


 おかげで武器ケースを車内に置いたまま買い物とかで離れられるし全周カメラで車庫入れも楽ちんってね。助手席を倒せば長柄の武器も楽々収納できそうだから、もし今後目メイン武器を乗り換えた際も安心。


 帰る前に連絡入れておこうかね、この時間なら弟はもう家居ると思うし。


「あ、もしもし?今から帰るけど、何か買って帰るモノある?夕飯まだならどっか食べに行ってもいいよ」


「なんか機嫌いいね、なんかあったん?夕飯はカレー作ってある。他に食べたかったら何か買ってくるか、帰りに食べて帰ってきてもいいよ。カレーなら明日にも回せるし」


 ダイバーは帰還直後の食にこだわりが強い。長時間ダンジョンに潜る時は事前に食事調整や飲水制限して、ダイブ中は簡易食しか食べないからだ。


 帰還途中に地上に出たらアレを食べたいとか強く思うと、それを食べないと気が済まなくなったりする。そのあたりを把握して夕食まで作ってくれる弟はホント理解あると思う。


「カレーか!わかってるぅ!豚肉持って帰るから、カツカレーにして一緒に食べようよ」


「またあの豚肉?まぁ別にいいけどさ、それなら卵だけ買ってきてよ」


「反応薄いなぁ~、みんなが泣いて喜ぶグラム六千円のお肉だよぉ?」


「そりゃ知ってるけどさ、ねーちゃん頻繁に持って帰ってくるから有り難みが薄れてるんだよ」


「わかったよ、今度違う肉も持って帰るから。多分3~40分ぐらいで着くから」


「気をつけてね」


 そうか、みんなが言葉を失うほどの肉でも慣れてしまえばこんなもんか。弟も結構舌が肥えてるからなぁ、もしかしたら普通の豚肉食べられないんじゃ?ちょっと心配になってきた。


 今度から豚肉は換金してウサギや鶏肉持って帰ろう。そうしよう。



 福岡の運転マナーはホント悪い。なんでウィンカー出さないの!?馬鹿なの!?死ぬの!?


 右折専用車線に直進車線から割り込むんじゃねぇ!ふぁっきゅー!



 くそっ、バスが電車みたいに連なって一車線潰してやがる!どうなってんのこの町!




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