自傷癖な少年は休暇をもらった-1
みなさま、お久しぶりです
更新遅れまして申し訳ございません
今回の戦闘で大きな戦果を挙げたことで僕らの軍団幹部は各個ささやかながら休暇をもらった。
羽を伸ばすため向かった先は国立図書館。
本はいい、前世からの数少ない趣味だ。
幾人もの先人たちが遺した記録の集合体、しかもそれが無料で読める。
ここ以上に簡単に知識を満たすことができる場所を僕はまだ知らない。
それにしても大きい、前世の5倍はありそうな敷地と三つの書館。
館内に入り、魔法パスをかざす。
「いらっしゃいませ、リア・サモネン様。先日のご活躍お聞きしました。それで本日はどちらの書館へ」
「特別棟を頼む」
「ランクの確認や説明は……必要なさそうですね」
届かない羽を伸ばして頭を搔こうとするカラスはどこか抜けているように見え、普段の真面目な言葉遣いとのギャップ萌えする人も多い。
一応、これでも彼はこの図書館の館長、「ヴィリオ・クロウ」なんだけど。
「それでは、リア様。こちらとなります」
羽根でビシッと方向を指すクロウ館長の頭をもふっと撫で歩き出す。
後ろを向くと館長が敬礼をしていた。
羽が目にかかって邪魔な気がする。
ここの書館は防犯魔法の一種で属する階級によって閲覧可能な書籍量が異なる。
僕の場合は国軍準佐クラスの書籍まで読むことが可能だ。
もちろん、一般庶民でも膨大な数を読めるが軍に所属するとそれとは比較にならないほどの本が開放される。
特に四族……魔王の血がより濃いとされる者たちは専用の書を読むことができる。
竜族には【竜の書】と呼ばれる更なる能力を引き出す方法が描かれたモノ。
使役されるはずの存在ながら知能を持った一代だけの希少な合成獣族には【合成の書】即ちより強大なキメラを生み出す秘術が述べられた本。
獣人族にはそれぞれに与えられた野生の本能を覚醒することが可能な【本能の書】を手に取れる。
そして、僕が生まれ落ちた種族、不死族。
無限に生成可能な不死兵を操り敵を状態異常に落とす冥界からの使者。物理防御と引き換えに手に入れた大量の魔力を武器に戦う僕らにもたらされた書の名は【不死兵の書】だ。多族には不可能な上位アンデットを召喚できる。長く暗い書架の間を縫うようにし、やっと目的の場所に立つ。
「楼門よ、開きたまえ」
手をかざすと中心から血が溢れ、下の盃が鈍く光る。
邪なる力が満ち、重たい扉から声がした。
『汝よ、我は待ちわびたり。この先は我が生み出したサモネンの【奇術の間】なり。汝が罪を背負う覚悟があるのなら左へ恐れをなしたのなら右へ赴くがよい』
迷わず左に歩を進める。
後ろで扉が閉まる音。
目の前の黒かった空間に通路が浮かび上がった。