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自傷癖な少年は転生した

新連載です

亀更新ですがよろしくお願いします

青く浮き出た血管の上を鈍く光る刃が滑る。

いつからこんな行為に手を出すようになったのは覚えていない。

小さい頃の僕はヒーローだった。

成績優秀でしっかり者の頑張り屋。

国内でも有数の進学校に進学した。

僕がいい子だった間は家族間の衝突もおきず父も母も表立って大きな喧嘩はしなかった。

それも僕が高校生になるのと同時に終わりを告げる。

自分の才能は所詮、作り物でしかなかったのだ。

高校最初の中間テストでの成績は学年で五本の指にギリギリの入る程度。

もし、僕が愛された家の子なら十分褒められるのだろうか。

とにかく僕は一番になれなかったのだ。

その日を境に家は変った。

父の飲む酒の量が極端に増えた。

まるでは「飲む」より「呑まれる」と言った方がしっくりくるかのように。

妹は父の小さなカウンセラーだった。

毎晩父は妹を部屋へと招く。

寝るときに聞こえるのは大切な妹の望まない情事の悲鳴。

不幸にも彼女は母に似ていた。

ヒーローでなくなった僕には止められる術はない。

母は外に男を作り家を出てしまった。

現実を忘れたくて、僕は今日も手首を切る。


その電話は唐突だった。

日課のように自傷を繰り返す日々を誰かに知られるのは恥ずかしいとヒーローのなり損ないが囁く。

その声に気を取れていたのが悪かったのだろうか。

いつもより数センチ深く刃が皮膚を貫いていた。

これはまずいと急いで果物ナイフを引き抜き止血を試みる。

だが時既に遅し、血は止まらず赤く赤く木の床を濡らして行く。

痛みを訴えていたはずの傷口もいつしか無感覚になり意識がブラックアウトし始める。

誰かに身体を優しく抱きしめられるような気がする。

こんなに暖かいのは何年ぶりだろう。

もし生まれ変われるのなら、次は。


「優しい家族のお家がいいなぁ」


この願いは傲慢だろうか。


***


とかいう忌々しい記憶がいきなり流れ込んできた。

脳がショートしかけ自分が誰なのか、ここがどこなのかを忘れそうになる。


「リア様、大丈夫ですか? リア様にはサモネン家のお世継ぎとしてお元気でいてほしいのです」


専属メイドのソフィアが心配そうにこちらをのぞき込む。

目の前にある大きな机の上には今にも崩れてしまいそうなほど積みあがった魔導書。

対称年齢は十三歳ほど。

今の自分の年齢より三つ上だ。

それでも書かれている魔法は簡単に習得できた。

理由はシンプルに僕の保有魔力が高いから。

ここ魔界の中でも有力貴族五族の一つ、「不死族」の長であるサモネン家の長男。

「不死族」と言っても自身が不死なわけではない。

師匠に教えられた通り、土の床に魔法陣を描く。

それに手を乗せるとムクムクと不死兵アンデッドが召喚された。

その数はおおよそ三十体で結構グロテスクだ。

前進させてみるが上手く制御できない。

木の向こうにいる小さな女の子に襲いかかろうとしている。


「危ない!!」


悲鳴が届く前に横から吹き出した焔がアンデッドたちを消し炭にする。

驚いて火が発射された方を向く。

そこにいたのは顔立ちがよく似た男女のダークエルフ。

男の方が打ち出したのだろうか、肩で息をしている。

まだ生き残った三体アンデッドたちは腕が焼けているのに構わず歩き出す。

女の子は意を決したかのように襲来者を見つめ叫んだ。

彼女の爪がアンデッドを切り裂く。

魔力が付与されているかのようにあっという間にアンデッドは倒れた。

「大変だったな」とダークエルフの男がつぶやく。


「ああ、君たちがいなかったらあの子は今頃冥界送りだった。ありがとう」


立ち去ろうとする背中に声を投げかけた。

「名前は何ですか?」



緑の髪がこちらを振り向き愉快そうに青色の目が細められる。


「俺はレノックス。こっちはマリア」


さっきの魔力は只者じゃない、両親とレノックスたちに頼み込んでうちに住んでもらうことになった。

横では担架に乗せられた女の子が運ばれていく。

蒼銀の髪はぐったりし、彼女の手はまるで獣のように鋭い爪と髪と同じ色の毛で覆われてた。

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