婚約破棄をしてでも
初投稿です
一度書いてみたかったので投稿してみました
設定、構成甘々です
宜しくお願いします(_ _)
「レイン・フォン・グレウス!
貴方との婚約、今、この場をもって破棄させて頂く!!」
ああ、言ってしまった・・・
本当にやるのですね
なんて、愚かな方・・・
ここは16歳から18歳を対象とした国の貴族や、一部の優秀な平民が集まり、人脈づくりや、より高度な魔法や科学などの学習を目的とされた全寮制の学園である。
今日は私達の学年の卒業式
三年間緩みに緩まったアホ達の最後の羽目外しや悪あがきにはお誂え向きのイベントである。
とはいっても、本来ならば皆ここで気を引き締める。これから実家に戻りしごかれる者や、研究所などこれからやっと自分の夢を実現し、仕事につくもの、様々ではあるが未来を見据えて覚悟を決めている者ばかりだからだ。それぞれの保護者や王族も来るパーティーで本気で羽目を外すものなどいない・・・はずであった
「・・・理由を、お聞きしてもよろしいですか?」
「ふん、何を分かりきったことを!貴方が私の最愛の人を傷つけたこと、知らぬ存ぜぬでは済まさんぞ!」
今、私は誰を相手に喋っているのかしら・・・
普段の思慮深く凛々しい彼は影を潜めている
ああ、そうだ
彼は私の婚約者でこのアスガルド国の第三王子、ノース・フィル・アスガルド
この計画を進めると聞いた時は耳を疑ったし、もっと他にいくらでもやり方はあっただろうに・・・
本当にやるのですね・・・
「身に覚えがございませんね
その最愛の方というのも存じませんし、あなたを射止めた方は一体どなたなのでしょう」
「ふん、白々しい!
彼女の名はアデル・フィール
貴族でこそないが、あの『デンワ』を発明した天才発明家だ!」
ざわざわ
この騒ぎを遠巻きに見ていた者たちが一斉に話し始めた。
それもそのはず
ノースがいうアデルはこの場にいない。
『デンワ』を発明したアデルの名は、この世界ではとても有名だ
しかし、彼女の素顔を知るものはとても少ない。
彼女はこの学園に17歳の時に編入してきたとされている。
『デンワ』の基本理論を書いた書類をこの学園直属の研究室に持ち込み、実際に作りたい、材料と施設を貸して欲しい、と
その研究は魔法と科学が発展したこの国でも今まで実現できなかったものだ。
研究者たちは、我こそがとアデルと、その研究を自分たちのチームでと競い合った。
室長までも誘惑に負けそうであったものの、アデルの年齢や、何故かその姿を大きめのフードや、認識阻害の魔術で隠していることから、国の重大な研究も行っている研究所に置いておく事はできないと学園に研究室を作り、そこでの入学と、授業料免除、授業出席不要と、学園に籍を置くだけ、と異例の措置を行った。
もちろん、寮に部屋も与えられ、生活にも困らない程度の費用を研究費として与えられている。
なぜ、姿の認識出来ない彼女が入学を許されたかというと、研究自体の魅力と、認識阻害とはいっても髪の色や、瞳の色を変えている程度で、普通の女の子だと思われたからだ。
学園にはおしゃれということで、髪色などを変えているものも少なくない。
研究者もおしゃれをしたい年頃なんだと考えていた。
実際には骨格までも認識阻害がかかっていたとは知らずに。
そうして研究室を与えられた彼女は、なんと一年と二ヶ月という短い期間で『デンワ』のモデル機を作り上げ、実現してみせたのだ
そして、彼女の名はこの国で知らぬものはいないというほど、有名になっていった。
名前だけは、ね
何を隠そう、その研究を行ったアデルというのはレインその人である。
ちなみにこの事はノースも知っている。
アデルは確かに一人でこの研究を始め、研究所に持ち込んだ
姿を隠したのは、貴族の子女という立場で研究者になることは難しいと考えたからである。
まさかアデルとして入学し、二重生活を演じるとは思っていなかったが、アデルは授業を免除され、レイン自体も学園での授業範囲など、入学前にはすでに学んでおり、ほとんど出席していなかったため、生活にそれほど苦労はなかった。
しかし、その研究に興味を持ったノースが、研究室を訪ねて来たのである。
会いたいというものがあとをたたず、基本は面会謝絶なのだが、あまりにもしつこく面会の申し出をしてきて、受付の方も困っていた事、王子という立場だったことから、一度だけ会うことになったのだ。
認識阻害の完成度には自信があったし、今まで誰にも気づかれた事はなかった。
念の為、声色も変えておいた
でもこの王子、気づきやがった
コホン、何故バレたのか?
白を切っても絶対にレインだと自身をもって言い切るノースに根負けして、尋ねてみたが教えて貰えなかった。
ノースは二人きりだといつもこんな調子なので、知ることは諦めた
そして、彼は度々この研究室を訪れて来るようになったのだ。
一度、一人でこんな所に来て大丈夫なのかと尋ねた事がある
仮にも王子だろう、と
ノースは、何だ、二人きりは嫌か?と茶化していたが、いくら婚約者とはいえ、今はアデルである
体外的には婚約者以外の女性の所に王子が足繁く通っていると見られても仕方がないだろう。
研究に興味があると言っても、ノースは研究者ではないので、三日に一回は来ているのはいくらなんでも来すぎだと。
正体をバラす気はないが、信用出来るお付きくらい、連れてきた方がいいのではないかと提案した。
しかしノースは、今のこの感じで気楽に過ごしたいからと断って来た。
あと、すでに遅い、と
もう噂になっていて今更だと
最近は研究室にこもりきりで気が付かなかったことに、このときばかりは焦った
貴族の子女として、王子の婚約者として、噂には敏感になるべきだし、それができていると自負していた。
研究に熱中するあまり怠っていたと反省し、対策を練ろうと考えた
ノースにもお付きを連れて来て欲しいと伝え、いつもではないものの、連れて来るようになった
貴族子女、研究者を両立し、開発も順調に進んでいた
ノースも知識をつけてきて、よく討論もしていた
研究室ではお互い、気兼ねなく、何でも言い合い、外では貴族として凛々しく過ごす
それが、私達の日常だった
そんなある日、ノースが言い出した
「レイン、婚約を解消しよう」
「は?」
聞き間違いかと思った
ノースは続けた
「伝わらなかったか?
俺とレインの婚約を解消したい」
「・・・伝わってるわ
理由を、聞いてもいいかしら」
なんとなく、分かってはいた。
ノースは『デンワ』の開発に協力的過ぎたのだ。
まるで、自分が一番活用すると分かりきっているように、使い勝手に関する時は積極的に意見をくれた
『デンワ』の開発も順調で、すでに試作機も出来上がっていた
あとは大量生産の効率化や、微調整を残すのみ、効率化については国の研究機関に丸投げしてもいいくらいだ。
つまり、あとは公表するだけ
すればアデルの名は国中、いや、世界中に届くほど有名になることだろう
そして、アデルの研究はこれが最初で最後の研究になる。
私は研究が好きだ
私は開発が好きだ
発想が、工夫が、考えを妄想を実現出来るここが大好きだ
でも私には研究者としての寿命がある
自由に出来るのはこの学園の中だけ
卒業後は貴族に戻らなければならない
それは、ノースも同じだった
彼は、王子であり、その才覚もカリスマも、資質も全て持っていた
しかし、彼のやりたい事はそこにはなかった
「俺はな、王子であることが嫌なわけじゃないんだ
王族として生まれ、教育もしてもらい、全てを与えられた
俺はそれに感謝し、答えなければならない
その義務があると考えている」
「なら、何で・・・」
私との婚約を破棄することは、この王命に背くこと
最悪、王族の資格を取り上げられ、国外追放だってあり得る
「俺は、この国の外に行きたい
王族としてではなく、一人の旅人として
世界中を見てみたいんだ
そして、見たものをこの国に持ち込み、この国をより発展させたい
それが俺の夢なんだ」
「そんなの・・・
この国にいたって出来るじゃない
外交官になったり、留学したり、貴方ならなんだってなれるじゃない!」
「でもそれじゃ、君が幸せになれないだろう?」
!
「俺と君が結婚したら、君は王子妃だ
いくら俺が許しても、今まで通り研究が出来るはずがない
君の研究はこの国に必要だ」
「だからって・・・」
「心配するな
俺は表ではこの国にはいられないが、この国の暗部の一人として、世界中を回るつもりだ
そのために、『デンワ』の開発を急いだ
『デンワ』さえあれば国に戻らずとも情報を伝えられる
俺がいなくなれば、君は自分の好きな研究がいくらでも出来る
結婚だって婚約破棄でケチが付いてしまうのは申し訳ないが、君なら十分魅力的だ
いくらでも相手はいるさ
気になる相手がいるなら、俺が裏から手を回そう
協力は惜しまない
仮にアデルと君が同一人物と公表しても大丈夫さ研究は続けられるそれだけの結果は残している
どんな結果も君次第だ
思うように出来るさ」
何が大丈夫よ
そんなの、許されるはずがない
なんだって、一国の王子が暗部の下っ端なんてやりたがるのよ
ほんと、馬鹿なんじゃないの・・・
「どうしても、なのね」
「どうしても、だ」
二人はしばらく見つめあった
お互いの考えを見透かすように
婚約した5歳からの付き合いだ
学園に入り、表立っての付き合いは減ったが、お互いの考え方はほとんど理解している
ノースがこうと言ったらきかないということ
レインがノースに甘いということ
「分かったわ
で、これからどうするの?」
だからこれは、ただの茶番である
魔法と科学が混在する世界
ヒロインは前世の記憶持ち
続きを書くかはちょっと分かりません
書きたい設定とか沢山あったけど、上手く盛り込めませんでした
次に活かして頑張ります!!