19.また、濃いのが……
「なんだぁ! そうだったんですね!」
『ナディア』の正体が人化したアディアだと伝えると、ユリアはあっけらかんとそう言った。それを聞いて、どこか緊張した様子であった聖剣はポカンとする。
「それだけ、なのですか……?」
「うん? それだけって?」
首を傾げるユリア。
それに対して、アディアはどこか焦りさえ感じられた。
肩透かしをくらったのだから、そうなるのも仕方がないのかもしれない。
「私があの剣だったのですよ? 怪しんだりは、しないのですか……?」
聖剣様はユリアに訊ねる。
するとお孫様は、なにを言っているのか、といった風に答えた。
「疑うわけないよ~? だって、リクさんも同じこと言ってるんだから」
「い、いえ! それにしても……」
「それに、家族だもん!」
「え……?」
食い下がるアディアが、一言で沈黙する。
満開の花を咲かせる、ユリアの『家族』というワードで。その言葉が指し示すところは、いったい何なのか。アディアは知りたそうな顔をした。
すると、当たり前のことのように、ユリアはこう言う。
「だって、一緒に仲良く暮らしてるから、家族でしょ? アタシは、家族の言葉を信じるよ!!」
ただ、明るく。元気に。
それを聞いて、アディアは肩を震わせた。
金の瞳を潤ませ、頬を一筋の涙が伝っていく。それは、きっと安堵のそれ。
「ありがとう、ございます……!」
受け入れてもらえた。
その事実に、安心と感謝をする涙であった。
和やかな空気が流れる。
しかし、その時間はあっという間に過ぎ去り……。
「ま、魔族だぁ! 魔族が出たぞぉ!!」
その悲鳴が、俺たちの間に緊張感を走らせた。
◆◇◆
が、しかし。
「オラァ、この祭りは俺たちが乗っ取っ――あばぁ!?」
「テメェ、この前の奴だな! 今回は――ごふぅ!?」
「あ、オレ様は用事を思い出した――ぶっふぉ!?」
例によってダイジェスト。
聖剣モードのアディアさんと共に、峰打ちのオンパレード。
そうすると間もなく積み上げられる、オラオラした魔族の山である。
「はい。お疲れ様、アディア」
『お疲れ様です。リクさん』
そして逃げていく残りの魔族を見ながら、アディアさんは人化した。
「二人とも、お疲れ様です! さすがは村の用心棒だね!」
「いや、今回は少なかったからな。とりあえず魔族の山、村の外れに持っていくよ。放っておけば勝手に目を覚まして、どっか行くだろ」
「そうですね! それじゃ、お願いします。リクさん!」
「あいよ~」
というわけで、俺は以前もそうしたように魔族を担いで運ぶ。
今回はどの辺りに捨て――もとい、放置しようか。それを考えながら俺は歩いた。そんな感じで適当に場所を決めて、作業を開始。
そして、もう少しですべてを運び終えようとした。
その時であった。
「ふざけんじゃないわよ――――――――――――っ!」
そんな、幼い少女の叫び声が聞こえたのは。
「……ん? なんだなんだ」
俺は運んでいた魔族をその辺に放り投げ、その声のした方へと向かった。
すると、そこにいたのは……。
「だぁれが、ヒャッハーして村をおそいなさい、ってめーれーしたのよ!?」
「いやぁ、すみませんナタ様。あっしら根っからのアウトローでして……」
「というか、ナタ様も乗り気だったじゃないですかい?」
「だとしても、ヒャッハーしろ、とは言ってなーい!!」
一人の魔族の少女。
そして、数体の無個性な配下と思しき者たちだった。
「あたいは、お祭りのてーさつをしろ、って言ったのよ!?」
「ぷぎゃあっ!?」
少女は少し長めの桃色の髪を、右上で一つにまとめている。
黒のゴスロリドレスを身にまとい、背中には小さな黒い翼があった。
勝ち気な目をしており、魔族特有の赤い瞳が、その性格をさらに際立たせているように思える。そんな彼女は今、配下の魔族を足蹴にしていた。
「落ち着いてくだせぇ、ナタ様。今回はたしかにあっしらがミスりました」
「そーよ! あたいは、ちょっと祭が楽しそうだな、って言っただけ!」
「そ、それと出来たらほしいな、とか……」
「うっさい、口ごたえするなぁ!!」
「ふにゃあっ!?」
ナタと呼ばれた娘は、カリカリとした様子で配下を責め立てる。
そして、配下の魔族は必死にそれをなだめていた。
「でも、ナタ様だって知ってたでしょ? アコ村には最近、メチャクチャ腕の立つ用心棒がやってきたって……」
「知ってたわよ! でも、ここまでとは思わなかったのよ!!」
「いや、あれだけの配下が逃げ出したら普通……」
「うっさぁい!」
「ぶふっ!?」
なにやら漫才をしている。
とくに実のある話でもないので、ここは退散しよう。そう思った。
パキリっ!
が、そこで俺は枝を踏んでしまう。
その音に、ナタおよび配下の魔族たちは反応した。
「……! だれ!?」
「あぁ! アレはアコ村の用心棒!?」
配下の一人が俺を指差して叫ぶ。
それを聞いたナタは目を見開き、俺の顔を見るのであった。
「あ、あははぁ……どうも~……」
俺は仕方なしに姿を現す。
するとナタが、俺の目を見てこう言った。
「よーじんぼーって、魔族なの!? そんなの聞いてないわよ!!」
「あっし、報告しましたよ!?」
「え、マジ……?」
そして、また始まる漫才。
俺はもう帰りたくなったので、とりあえず声をかけることにした。
「あ、あの~……」
「!? あ、あたいの名はナタ・ツィート!」
すると、何を勘違いしたのかナタは自己紹介をするのである。
薄い胸を張って、どこか高圧的にこう言うのであった。
「いだいな、いだいな……まおーぐんの、かんぶ様よ!」
俺はとりあえず「お~」と、声を漏らす。
どうやらまた、なかなかにキャラの濃いのが現れたようであった……。
この次からは不定期更新になります。
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