03
ども筆者のラルゴです。
読んでくれたらいいなぁと思っています。
この世界では旧文明から引き継がれる「飛行機」やらの機械がある。
皆無に等しく失われた人類の歴史の産物だったがドラゴンハンター協会の技術班の努力によりいくつかの歴史産物は蘇っている。
そんな飛行機も蘇った一つでハンター達はそれで各ドラゴンハンター支部へと移動してる。
空に、黒い影が映っていた。
初め小さな点だった影は、徐々に大きくなり、流線型の形状へと変化した。
何かが飛んでくる。
学生寮の瓦礫回収をしていたレインは空を見上げた。
後光が射していた。
太陽を背負っているのだから当たり前なのだが、なぜか酷く神秘的に感じられた。
それは、レインにとって始めて見るものだったからかもしれない。
流線型の戦闘機、黒いボディ、不思議な蝶のステッカー。
砂埃をはらんだ風が、流れるように着地した戦闘機からレインに向かって吹いてきた。
顔を背けたくなるほどの風を浴びても、レインは黒い戦闘機から目を離せなかった。
黒い戦闘機、蝶のステッカー。
レインは戦闘機について何もわからないが、不思議な蝶のステッカーでどこの支部に所属しているのは知っている。
黒い戦闘機のハッチが開き乗っていたハンターが姿を現した。
茶色い革のコートに頭に飛行眼鏡を乗せた。
ボサボサ頭の若い男だった。
服装や顔つきから、まさにベテランドラゴンハンターな雰囲気を醸すその男は、ドラゴンハンターとして場違いな格好をしているはずはないのに、なぜか執事やメイドの服を着た学生が多い学生寮の風景に馴染んでいなかった。
そう言えば、レインとカインの姿も場違いだ。
男は煙草をくわえながら颯爽と戦闘機から飛び降りると、レインのいる方に向かって歩いてきた。
歩幅が広いためか、あっという間に男はレインの目の前に着く。
男は周りを……至るところに崩れたりしている学生寮とその敷地を見ていた。
「この寮の設備、なっていないようだな。エルモア・カイン・ラツィオ。」
男はレインを見て言った。
傲慢な態度ではなかったが、やけに冷徹な物言いだった。
そのせいか、台詞から感情が読めない。
「すみませんが、カインは俺の弟です。」
とりあえずレインは訂正した。
男はあっさりと理解を示した。
彼はカインに双子の兄がいることを知っていたようだ。
「お前が小さき兄か。」
レインは見ず知らずの男に「小さき兄」呼ばわりされて、非常に腹が立ったが我慢する。
「あ、貴方は?」
「戦闘機を見てもわからないのかバカめ。前戦で竜と戦うハンター支部から来たハンターだ。バカめ。」
何だろう……とても腹が立つハンターだ。
「兄ぃ、どうしたの?」
前日の岩竜暴走事件で比較的無事だった学生何人かを引き連れ、カインがやって来て言う。
レインの後ろに現れたカインを見て、ハンターは「丁度いい。」と呟いた。
ハンターはカインに殴りかかったが、拳はカインの顔、薄皮一枚手前で制止した。
ゴォォォッ!
爆風が発生し、カインの髪がオールバックになる。
「確かに、報告書通りの肝が据わったガキだな。」
「え?なにこの展開!?」
戸惑うレインをよそに、確認が取れて、ハンターは心なしか満足げだった。
「・・・この人は?」
髪を戻すカイン。
「カインの知り合いじゃないのか?」
ハンターはカインについて書かれた報告書の顔写真を確認しただけで、直接の面識はなかった。
「俺は、お前を迎えに来た。」
カインの前に立って、ハンターは用件を述べた。
「・・・大陸の探索の件ですか?それなら俺、お断りしたはずだけど?」
大陸の探索と聞いて、学生達がざわめいた。
最前戦のさらに向こうにある竜の世界、竜が現れる昔はユーラシアと呼ばれた大地。
未だ一人を除いて人類では到底太刀打ちできない神龍と呼ばれるクラスの化け物達の生息域と伝えられた世界。
これまでに何人かのドラゴンハンターが行ったが、すぐに引き返してきた者を除いて、ある人物以外一人も帰ってきていない。
竜の現れた後に産まれた世代には、最前戦から先には、今は大陸は竜に破壊され無くなり海しかないやら砂漠しかないと思っている。
レインとカインもその世代に産まれた。
でも、もしかしたら……最前戦から先にも、生き残った人類がいて、ドラゴンハンターとして竜と戦っているかも知れない。
それを確かめるためか、最前戦で戦う支部を率いる支部長であり、ドラゴンハンターの発案者であり、未開地の最深部まで足を運んだ「ケチ」が、全ドラゴンハンター支部から優秀なハンターを募った。
「お前は、兄が参加しないことを理由に、未開地の探索の参加を断ったそうだな。」
「・・・いけないのか?」
「フン、別にいけなくはない。ただな、お前の参加を推薦する声も多いのも事実だ。そこでだ、俺達はお前の兄に、特別に探検への参加権を与えてやることになった。」
「俺に!?」
「そうだ。」
ハンターはその鋭い瞳で、品定めするような目でレインを見た。
レインはこの場に居づらく感じ、モゾモゾしていた。
「・・・・戦闘力……のゴミか。」
「ゴ………………ッ!?」
レインの能力値は、どれもカインより貧弱だった。
パワーだけだぞ。
知力とか俺の方がカインより上だぞ!!
「お前ら、本当に兄弟か?」
「もちろんだ……兄ぃと俺を見てわかるだろ?」
「・・・兄弟だとしても、兄と弟が逆だと思うんだが……」
確かに、顔を見た感じは似ている。
だが、双子としてこの身体の成長が違うものなのだろうか?
「・・・まぁ、いい。これでお前が参加しない理由はなくなった。」
ハンターはカインを見て言った。
「・・・・兄ぃ、どうする?」
カインはレインを見て言った。
「カインはどうしたいんだ?」
レインはカインを見返して言った。
「・・・どっちでもいい。兄ぃが決めて。」
「おいおい、決めてって言われてもなぁ……」
カインにとっても、重要な選択だ。
それを俺が決めていいのか?
「探索の参加を拒否した者は、お前の弟ぐらいなものだったぞ。」
カルデラに通っている学生やそれ以外のドラゴンハンターを含む多くは、未開地の探検に憧れを抱いている。
遠い昔に奪われた地平線を求めている。
そういった者が、探索に参加することを拒む理由がない。
「期間は約一年を予定してる。参加者には各々が所属している支部またはカルデラの一年分の働きと単位を付与する。まぁ、留学みたいなものだな。かかる費用は、一切をドラゴンハンターギルド協会が負担する。参加者が支払う金額は0。つまりタダだ。」
こう言われると、裏があることを疑いたくなるくらい、うまい話に聞こえた。
「タダといっても、参加するドラゴンハンターは、いろいろな係りに就いてもらい、それぞれ仕事をしてもらう。そこは、持ちつ持たれつだ。」
ハンターは簡単な説明を終え、返答を待つ姿勢は「さぁ、早く言え。」という、返答をせかすかすかな声なき声が、レインには聞こえた。
「父と話し合わせてもらえませんか?」
レインはあまり乗り気ではなさそうだ。
変わった学生もいたも……いや、コレが普通の人間の考えかもな。
とハンターは思った。
「・・・お前の親父には、既に話をつけてきた。お前の意思で決めろ……いや、お前の意思で決めるべきじゃないか?お前はもう、それなりの年齢だからな。」
それは、十代後半という、子供と大人の境界線にある少年の心をくすぐる言葉だった。
「・・・わかりました。参加さしていただきます。」
断れる雰囲気ではなかった。
粘るのが面倒くさくなってきて、レインは微かにうなずいてみせた。
「それでいい……さぁ、乗れ。」
間近で見る戦闘機は、まさに鉄の怪鳥といった感じだった。
「・・・・とうっ!」
カインが一人で先に梯子を使わないで戦闘機に飛び乗った。
「はん。元気がいいな。」
続いて、ハンターがカインの前に腰を下ろした。
「・・・あの~、俺はどこに乗ればいいのでしょうか?」
戦闘機の操縦席は二人がせいぜいで、三人乗るには無理があった。
「お前はここに入れ。」
ハンターが指差した場所にレインが目をやると、戦闘機の腹の部分が開いていた。
「・・・・・。」
もしかとは思うが、あそこは本来、爆撃のために爆弾やミサイルやらを入れている所ではないだろうか。
「今日は積んでないから、中は空いている。そこに入れ。」
いやいやいやいや、無茶言うなよ!
確かに、レインはカインに比べて小柄だが……なんか悲しくなったレインであった。
「準備できたか?」
「いや、ちょっと待って、閉めないでください!」
畜生っ!やるしかない。
と決意を固め、レインは戦闘機の中に入った。
戦闘機のミサイルやら爆弾を格納するスペースは暗くて狭い。
・・・・・まるで、棺桶の中に入れられた気分だ。
『おい聞こえるか?ちょうどお前の頭の所に小型無線機が貼りつけられているだろ?これで言いたいことを話せ。』
確かに、無線機が天井にガムテープで貼りつけられていた。
「すいません。ここ、なんか寒いんですけど。」
『そりゃ、隙間が空いてるからな。』
「えッ!?」
『安心しろ、勝手に開きはしない。そこの隙間から外でも見とけ。』
ハンターは戦闘機にエンジンをかけて、離陸するために走らせ始めた。
「うわ、ちょ………痛ッ!?」
当然、シートベルトもしていないレインは中で頭やら腰やらをしこまた打っていた。
気づくと、戦闘機は地を離れ、空へと舞い上がっていた。
「・・・オオッ!」
戦闘機の中でカインが感激の声を漏らし
「痛ぇぇぇぇッ!」
戦闘機の腹の中でレインが体をぶつけて、悲鳴を漏らした。
・・・・・こうして、愉快なデコボコ兄弟の長い冒険が始まった。