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藺と別れを言い五人はサナが開錠した扉をくぐり、甲板に出た。
下の草地に警備係の学生やハンターが何人かうろついているのが見える。
地上から見た甲板は、高層建築ビルの屋上に匹敵する高さがあり、甲板から見下ろした草地を歩く学生やハンターの姿は、ほとんど点、ゴミにしか見えなかった。
「まるで人がゴミのようだ」と言う台詞が似合いそうだった。
「レインガ墜落シタノハ、向コウノ方ダッタテ聞イタヨ。」
ハーツマンが指差したのは、炎上している飛行機が墜落して、煙が上がった方角だ。
しかし、五人は知らないだろうがレインの落下地点はそこではない。
そんなけととは露知らず、五人は飛行機の落下地点を目的地にした。
落ちた所が違っていても、ハーツマンにしてみれば、多少の誤差でも問題なかった。
後衛としての能力、イーグルアイがあるからだ。
イーグルアイとは、その名通り、空を飛ぶ鷲のような視界を得る能力のことだ。
空の上から小さな餌を見つけ出す鷲の視力は、人間よりも遥かにいい。
だが人間には超人と呼ばれる人物以外、人の眼は鷲の眼にはなれない。
だが、脳の情報処理能力を上げれば、人間の限界を超えた、鷲に近い視界を得ることができるだ。
通常のハンターは約半径二㎞見ることができるようになれのだ。
だが、ハーツマンのイーグルアイは通常のハンターの数倍優れている。
ハーツマンのイーグルアイは約半径十㎞の範囲を見れるのだ。
「サナチャン、今ノウチニ。」
「任して、伸びろ如意棒!」
サナの掛け声に反応して、如意棒が素早く伸び始めた。
数秒もしないうちに、如意棒の先端は草地に突き刺さっていた。
長い滑り台の完成だ。
「よっと。」
サナはスカートがめくれ上がるのも構わず、如意棒に跨がった。
「乗って。」
言われてカインと五明丸とハーツマン、娥梨子も飛び乗った。
落ちないよう、前の人の肩に手を置いた。
「このまま滑って行くのか?」
「そうっすよ!」
「如意棒ッテドコマデモ伸ビルナラ現場マデ伸バセバヨカッタンジャナイノ?」
「・・・てへ。」
サナは舌を出して頭をかいてみせた。
「とりあえず草地に下りて、装甲車から離れようぜ。」
娥梨子の提案に異論は出なかった。
警備係の見ていない隙を狙って、五人は甲板から如意棒に乗って滑り降りた。
「・・・先、行く。」
草地に足がついた瞬間、カインが飛ぶように走り出した。
「おいカイン待……チッ、面倒な奴だな!」
「五明丸さん待ってくれよ!」
「ミーモ走ルゾ!」
五明丸もカインに続いて走り出し、娥梨子とハーツマンが後に続く。
「サナ、俺達はカインを追う。追いつけそうにないなら装甲車に戻れ!」
どんな経緯であれ協力を請け負った以上、五明丸はハーツマンと娥梨子を別としてカインとサナを無事に装甲車に帰さなければならないとう考えを持っていた。
「アタシにはまだまだ移動方法がありますよ。行くよ、筋斗雲!」
サナはポーチから小さなカプセルを取り出し投げると、カプセルが割れ、人ひとりが乗れる薄い雲のような物が現れ、宙に浮いていた。
サナはそれに飛び乗り、身を屈めると筋斗雲が加速し、移動し始めた。
筋斗雲の速さは、カインと五明丸達に劣らぬ速さまで加速した。
五人は草地に蔓延る虫型、獣型などの竜どもをぶっちぎり、無傷のまま森に突入した。
※※〇※
樹海に落下したレインだが、何層にもなっている枝葉と柔らかい土がクッションの役割を果たしたおかげで、怪我という怪我もなく着地していた。
装備していた防具にも救われたのだ。
熱に強く、魔力を弾く繊維でできていたので、爆発を浴びたレインの体が燃え上がることはなく、受けた衝撃もだいぶ緩和されていた。
ただ、過剰な恐怖のせいで情けないことにレインは気絶してしまった。
決して漏らしてはいないぞ。
レインが目覚めたのは深夜の森の中だった。
目覚めて最初は辺りをキョロキョロと見回したレインは自分に起きた出来事を思い出し慌てたが、まずは状況把握するのが一番だと思い行動に移した。
近くにある手頃な木に登り、遠方で人工的な光を発している装甲車を見つけだした。
龍を警戒して進路を変更していないかもしれないと思っていたので、装甲車を見つけた時は心の底から嬉しかった。
装甲車の位置がわかったのだから、そこまで歩いて帰ればいい……が、それは簡単な話ではない。
かなり距離があることと、今が夜であることが問題だ。
視界状況が悪く、視覚動物である人類には、危険な時間帯である。
嗅覚や聴覚も人間より発達している竜の方が、夜間は強い。
レインは基礎で習った初級魔法で光を生み出し、暗闇の中に光りを照らした。
奇襲に備えて、ホルスターから引き抜いたグリモアを手にしたまま、レインは手元の光を頼りに進んだ。
「な、なんだあれは……?」
レインは木々の枝が含まれる空を見上げた。
空の一部が黒く蝕まれていた。
飛竜の大群だった。
醜い姿を連想させる形の影が連なって、月光を遮り、地上に漆黒の闇をもたらした。
恐ろしいな……まったく。
樹海の奥地で一人きりでいるだけでも辛いのに、次から次へと竜が現れる。
レインは後衛学科【00】で教わった忍び足、イーグルアイ、それに持って生まれた特殊な視覚を生かして竜との遭遇を避けていたが、一度も交戦せずに装甲車までたどり着ける自信はレインにはない。
飛竜が去っていき、レインはひとまず、安堵の息を吐いた。
「きゃあーッ!」
遠くから甲高い声が聞こえた。
レインは思わず身をすくませた。
ひ、人の声だと……
竜の鳴き声とは考えづらい。
人間(?)いる……しかし、それを素直には喜べなさそうだ。
「た~す~け~て~!!」
さっきの悲鳴とは別の声だ。
そのまんまだが、周囲に助けを求めているようだ。
どうする……?
直接、助けを自分に求められたわけじゃないが、放っておく気にはなれなかった。
レインは声のした方へと走り、適当なところで木の陰に隠れ、そこから様子を窺った。
ぬおっ………。
数人の子供が、植物型竜の群れに追われていた。
この竜は、身体中から生えた蔓を使って走り、葉っぱみたいな鱗に包まれた手を伸ばし、粘つく牙を糸を引かせた口で、人を喰らう。
追われている子供達は、葉や樹皮を蔓で繋ぎあわせた、原始的な服を身につけていた。
おそらく、現地民というやつだ。
幼い子供は装甲車には乗車していないのだから、支部の人間ではないので現地住民だと判断した。
しかし、レインは現地住民だと思われる子供達は自分が知っている人間と違うところがあることに気づいた。
なんと、彼らの額に角が生えているのだ。
人かどうか怪しい。
いや~参ったな……
放っておけないから来たはいいが、人間かどうか怪しいし……そもそも自分の戦闘能力では何もしてやれそうになかった。
植物型竜の数は圧倒的で、数えきれない。
一体や二体をグリモアで撃ち倒してただけでは、どうにもならないだろう。
下手に首を突っ込んで無駄死にはしたくはない。
レインは、何も見なかったことにして罪悪感があり、悪いとは思っているが再び装甲車への帰路につこうとした。
レインが振り返ると、既に植物型竜に囲まれていた。
「ゲゲゲっ!」
「ゲゲッて言いたいのは俺の方だよ……」
植物型竜は、ジワジワとレインを包囲する範囲を狭めてきていたのだ。
レインはイーグルアイで、もっとも敵の密度が低く、突破しやすい場所を探しそこへ猛然と突撃しグリモアを連射した。
恐怖が一周して冷静になったおかげか、普段のレインにはない思い切った行動ができた。
「オオオオッ!」
適当に撃った弾丸が、植物型竜を一発で脳を撃ち抜いた。
レインは倒れる竜を蹴飛ばして、範囲を突破した。
よし、三十六計逃げるに如かずッ!
強大な敵に会ったときのハンターの基本にして極意である。
だが、逃亡は失敗に終わった。
レインの逃げた先に、先ほどの角が生えた子供達がいたせいだ。
「あっ!ヒトだよぉ!」
「ホントだ!うぁぁぁぁぁぁん!」
「そこの……、たすけて~!」
おい最後のやつ、その空白の中に入るのはお兄さんだよな?と言える場合ではなかった。
「「「ゲゲゲっ!」」」
子供達の後ろから来る群れと、レインの後ろから来る群れが合流し、植物型竜は、おびただしい数の大群と化した。
まるで植物型竜の巣に迷い込んだような心地だ。
レインは強烈な植物型竜の青臭い口臭に顔をしかめた。
右を向いても左を向いても植物型竜。
逃げ道はなく、突破口も見つからなかった。
正確に言えば、単身ならば、突破できたかも知れない……が、子供達に裾を掴まれていることを無視して走れるほど、レインは血も涙もない性格をしていない。
このままでは子供達もろとも、全滅だ。
そうなるくらいなら、子供を置き去りにしてでも逃げた方が……いやいや。
レインは心の中で葛藤する。
『困っているようだな。力を貸してやろう。』
ドラゴン図鑑
【植物型竜】 地竜種/植物
分布:未開拓の大陸
体長/体重:2m/300kg
未開拓の大陸、昔で言うユーラシア大陸にて目撃された。
その体は蔓科の植物で口は蠅取草のように見える。
背にはラフレシアのような花を咲かせているのが特徴。
明るい昼間は光合成のため動かないが夜になると集団で行動する。
二足歩行。
主に昼は日光浴による光合成で栄養を得るが、夜になると肉食による栄養摂取を行う。
昼間は日光浴により動かなく危険は無いが、夜になると動き出し肉という栄養を求め凶暴となる。
集団行動する竜であり、そのチームワークは自分より大きな竜を狩ることができるほど高い。
卵では無く種で繁殖する珍しい竜である。
その繁殖力は強く、水と土と日光さえあればどこにでも種から芽が出て数日で成体と育つ。




