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ドラゴンハンター  作者: ラルゴ
双子のドラゴンハンター
12/19

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閲覧ありがとうございます!


車底付近にある機関室には、機関を冷却するための外気を取り入れる空気口と、熱された機関室内の空気を排出するための排出口がある。

排出口の縁に、鉤のように内側に曲がった指が引っかかっていた。

通風管を上ってきている者がいる。


「せぇいっ!」


指に力を入れて、彼は体を一気に持ち上げた。


「クハァー……はぁ、死ぬかと思ったぜ。」


現れたのは、茶色いバンダナを頭に被った男だった。

彼は排出風に吹っ飛ばされたが、通風管の途中で指を引っかけることで落下を防ぎ、さらにそこから這い上がってきた。

執念によりなせたのか、死への恐怖がそうさせたのだろうか。


「クソ熱いな……」


機関室は、長時間いるには厳しい場所だった。

バンダナの男は車内に通じる扉に手をかけた。

扉は内側からロックされていた。

鍵穴は見つからなく、パネルがある。

暗証番号を使う扉のようだ。


体当たりで開くだろうか、いや、無理ではない。


彼は深く息を吸い込んだ。


「・・・象突!」


男は呼び動作のほとんどない体当たりで頑丈な扉をぶち開けた。

重厚な扉は、人間の体当たりで壊せるものではない。

しかし、普通ではない彼にとっては、不可能なことではなかった。


激しい動きでバンダナがゆるみ首までズレ、男の頭から顔が完全に露出した。

青い瞳の眼光は鋭く、精悍な顔つきをしていた。

髪は混じりけのない金だ。

だが、一番の不思議なのは微かだが彼の頭上に光る輪が浮かんでいるのだった。


光る輪が消え、バンダナを被り直してから車内通路に出た男は、人目につかない場所……潜伏場所を求め、ソロソロと歩きだした。



※※〇※



レインは荷物を自分の部屋に置いた後、カイン、サナ、娥梨子、藺達四人と食堂で合流した。

食堂には参加者の3分の2以上が集まっていた。

目当てはデカイ装甲車から見下ろせる外の風景だ。


装甲車の後部に位置する食堂の大窓からは、装甲車の後方の景色を見ることができる。

サナは獲物を見つける獣の如く眺望のいい席を見つけ、五人の中で誰よりも早く座った。


「アタシ、いっちば~ん!」


「ふ、まだ幼いなサナは……ウチは二番だ。」


「自重してくださいねサナさん……私は三番。」


「あんたら、人のことを言えねぇだろ!?」


もう遅いが、ツッコミ担当は自分しかいないのではないかと思ったレイン。


「まぁまぁ、落ち着いて。外を見なよ、いい景色だよ。」

とサナ。


極東支部……その姿が徐々に小さくなるのが見える。


「外から見てみると、よくあんな小さな支部が最前線で戦っていけるなぁと思うよ。」


「・・・そうだね兄ぃ。」


「見た目で判断するな。ウチが所属している極東支部のドラゴンハンター支部は三人の偉大なる人物が作り上げた最強の砦だぞ。」


その三人とは……

ドラゴンハンターの作り上げた最強の男 ケチ、全魔術の知識を持ち、扱える魔術師 アルベルト、現在にある全ての科学に精通し新たな技術を生み出した天才科学者 栗原 淳樹。

この三人は特殊合金ドラゴダイトを造り上げたのだ。

特殊合金はドラゴンハンター支部で使われている。

もちろん装甲車にもドラゴダイトは使われておりありとあらゆる衝撃にも耐え、熱や寒さにも耐える強度を誇っている。



俺達は、探検を無事遂行できるのか……


ついに見えなくなった極東支部。

ここから先は、未知なる領域、人類が奪われた竜の楽園ユーラシア大陸。




ドラゴンハンターとは竜を狩る者達である。


竜は強者である。

それ故、ドラゴンハンターは常に危険が伴う。


ドラゴンハンターは孤独である。


竜に襲われ、ハンターが全滅しても……誰もこのことを知りえない。


恐ろしいことだ。


だがそういう孤独で、リスクの高いとしても人類のために旅をする。


それがドラゴンハンターの仕事の一つだ。



※※〇※



後衛学科【00】の教室へ出向かうと、担任教官ハーツマンが空中に投げ出した的球をゴム弾を当て、床に落ちないようにしながら、レインが来るのを待っていた。


的球かかが落ちる気配は無い。

同じ年齢なのに、実力の差を感じてしまう。


「来タネ。デハ授業ヲ始メヨウカ。」


ハーツマンはゴム弾を連射して的球を圧壊させ、二丁の拳銃を器用に回しながらガンベルトに納めながら教壇に立った。

レインに一人分しかない席についた。

他の机や椅子は、出発前に撤去されてしまったようだ。


「ドウスル?カリキュラム通リニ指導シテモイイケド……」


「ど、どんなカリキュラムだか知りたいです。」


「イイヨ。最初ハ体作リ、海兵隊……」


「すいません、教えないで結構です!」


海兵隊ワードは嫌な予感しかしない。


「ナニカ覚エタイモノガアレバ、優先シテ覚エサセレルヨ。」


「例えば?」


「銃格闘術、闇射チ、蜂ノ巣、忍ビ足、偵察、索敵、偽装工作、情報操作、イーグルアイ、トラップ設置ニ解除………コングライカナ。」


指折り数えてハーツマンが言う。

意外と種類があることに、レインはビックリしていた。


「じゃあ……早くマスターでき、かつ未開地で役に立つやつをお願いします。」


「トラップ関係ガオ薦メダケド……作ルニセヨ仕掛ケルニセヨ、(ちから)ガイルカラマッチョミタイニナルケドイイカナ?」


「よくない……って教官はできるんですか?筋肉あんまりついて無さそうに見えますけど?」


「ヒドイナ~。ジャア、腕相撲デ勝負スル?」


ハーツマンがレインの机まできて、右腕をセットする。


見た感じ、ハーツマンの腕はそこまで太くなかった。


・・・俺だって毎日、筋トレしてるし……


レインはハーツマンのニコニコしている顔を見る。


なんか、この優男に負ける気がしない。

リア充になんて、負けない!


「わかりました。相手さしてもらいます。」


レインも右腕をセットした。

互いの手を握る。


「ジャア、3」


「……2」


「1」


「「ファイトッ!」」


トン。


レインの右手の甲が机についていた。


・・・・・あれ?秒殺?負けたの俺?


「も、もう一度いいですか?」


「イイヨ~。」


「では、3」


「……2」


「……1」


「「ファイトッ!」」


トン。


レインの右手の甲が机についていた。


「現実なのか!もうちょっと粘るかと思ってたのに!?」


脳内スローで見てみよう。


「「ファイトッ!」」


この瞬間、レインの右手を掴んでいたハーツマンの右腕の筋肉が膨張していた。

そして、なんの抵抗も感じずレインの右手の甲を机に押しつけていた。


「ば、化け物か!?」


「ハーツマンダヲ。」


ダヲっ!?



※※〇※



前衛学科【01】の訓練室には、大剣を学びたい学生が集まっていた。

百人以上いるのではないかという人数で、その中にカインの姿もあった。

他の前衛クラスの授業に比べると、男女人数はバランスがよかった。


訓練室の壁には、大量の安っぽい大剣が立てかけてあった。

授業で使うためのものだ。

戦闘とはスポーツではない。

命をかけた殺し合いだ。

演習だろうと本物を使う。

それが当たり前のことだ。


攻撃の〝斬り込みの五要素〟の指導が終わると、教官と学生で組み手を行うことになった。

教官は補佐役を含めても十人足らずしかいないので、九十人以上の学生が壁際に座りこむなどをして休憩がてら、自分の番が来るのを待たされていた。


・・・兄さん、今頃何してるかな?


学生として乗り込むことになったようだが、後衛学科のどことは教えてくれなかった。

レインが隠しごとをするなんてまれにあったが、カインは不思議に思っていた。


「カインくんって、すご~い力持ちだね!」


両手でしっかりと大剣を持っている、カインのクラスメイトの女子が言った。


「・・・それほどでもない。」


カインは小枝を振り回す領域で、頭上で大剣をブンブンと旋回させながら言った。


「謙遜しないでよ。さっきからお爺ちゃん教官、ありえないものを見る目でみてるよ。」


大の大人五人分の重さがある大剣を片手で難なく振り回す力が「それほどでもない」わけがなかった。


「・・・俺、注目されているのか?」


カインは目立つことが気にならないので、呑気に大剣を振り回していた。


「そこ、大剣を使って遊ぶのをやめなさい!危ないぞ!」


お爺ちゃん教官が、厳しい声で言う。


「・・・遊んでいない。」


カインは大剣を振り回すのをやめ、天井に届きそうな高さまで跳び上がった。


「オオォォォオッ!」


カインは空中で体を弓のようにしならせたのち、訓練用に用意されている等身大の竜人形に向かって大剣を振り下ろした。

大剣が通過した空間が、真空波を巻き起こし、唸りあげる。

風圧で近くにいた学生が吹き飛び、お爺ちゃん教官は腰を抜かした。


人形の頭から股間までを一刀両断した大剣は、床すれすれで停止。


カインは静かに大剣持ち上げ、ユラリと教官を見て、言った。


「・・・戦闘訓練中です。」



※※〇※



藺の目的は、ユーラシア大陸の記録を録ることである。

物質や竜だけではなく、ユーラシア大陸にもし生き残っている人間がいるのならば、その生き残ることができる技術や文化は必要なデータとなる。


「さてさて……一体この先に何がでるのか、ですね。」


自室の机に肘をつきながら、机の上に広げられた書類に目を通す。


「義父様は書類に記録をしない人ですから、情報がたりませんよ。」


ブツブツ独り言を言いながら、一枚の写真を取り出した。


写真には藺と幼なじみの少年が写っている。


「コイツ、来ると思ってたんですけどね。」


「なにニヤニヤしてんだ藺?」


「キャァァァァァッ!?」


いつの間に部屋に入ったのか、娥梨子が後ろに立っていたのだ。


「な、なに勝手に入ってるのですか?」


写真を隠し、娥梨子を睨む。


「いや、ウチはノックしたぞ。いないのかと思い、扉に手をかけたら開いてたから入っただけだぞ。」


「立派な不法侵入です!」


「まぁ、それより……」


「それよりって、プライバシーの問題がありますよ!!」


とツッコミながらも枕の下に写真を隠した藺であった。


その後、藺は娥梨子に連れられサナのいる中衛学科【03】を訪れた。


「あ、藺ちゃんに娥梨さん。何かアタシによう?」


「それがなサナ、藺が」


「アアァァァアアッ!娥梨子さん、黙ってくれませんか?」


藺が慌てて娥梨子の言葉を遮る。


「なるほど……理解したよ。」


「嘘ッ!?」


理解したとでもいうように満足な顔をしたサナに驚愕な顔で見つめる藺。


「・・・用がすんだなら私、帰りますよ!」


「娥梨さん、このメンツで集めた意味、あるですかいね?」


「ああ、たしか………あれ?藺をイジって楽しんでたら忘れたな。」


「イジ…………帰ります!!」


藺は小走りで教室を出て行った。

追わなくていいのかと、サナは娥梨子を見つめたが余計なことをしないほうがいいと判断し、追わなかった。




「五明丸さん、いるんですよね?」


藺が走っていった先に、曲がり角からユラリと五明丸が現れた。


「貴方は私のボディーガードですよね?」


「・・・まぁな。」


「さっき私、軽くいじめられたんですけど……」


「ああ、見てたから知ってる。」


「なら、助けろよってかんじなんですけど……」


藺が五明丸に詰め寄るが、五明丸はあくびをしていた。


藺、大人ぶりたいのはわかるがな。」


詰め寄る藺の頭をゴシゴシと撫でる。


「まだガキなんだから、もっと気楽にしろよ。」


「・・・な、慰めになってませんよ!」


頭を撫でる五明丸の手を振りほどいて藺は自室へと走っていったのであった。




「やれやれ、子守りとは面倒なことを受け入れちまったもんだ。」


藺が走り去ったのを見届けて、五明丸は前衛学科が使う訓練室へと足を運んだ。


訓練室ではちょうど剣の型を整えるために行われる素振りの訓練中だった。


「よーし、やめいっ!」


五明丸が入室するのを見た教官が号令をかける。



「楽しそうだな。」


壁にかけてあった木刀を掴み取り、生徒に向けて木刀突き出す。


「これから実戦授業だ。いいよな?」


「え、いや……その……勝手すぎでは?」


「上には許可が出てる。いいよな?」


五明丸の気迫が教官を包み込んだ。


「・・・は、は、はい!わかりました!!」


「それでいい。」


五明丸は教官にそう言って生徒達に再び木刀を向ける。


「かかってこいよ。俺が直々に稽古つけてやる。」


「・・・・・・。」


五明丸の気迫に押されてか、誰も前に出ようともしない。


「おい、来ねぇのか?」


五明丸がおもしろくなさそうな顔をする。


「やる気ないな、お前ら。来ないなら、俺から行ってやるよ!」


五明丸が生徒達に歩み寄り、一人の男子生徒前で立ち止まった。


「おいお前、名前を言え。」


「え、はい!ぼ、僕の名前……ブグヌッ!?」


「えっ?ぎゃあっ!」


「ちょっ、うわぁぁ!?」


「不幸だぁぁぁっ!!」


木刀の刀身が男子生徒の顔にヒット。

男子生徒は木刀で殴られた勢いが止まらず、三人の生徒を道連れにして壁に叩きつけられた。


「戦闘中に名前を名乗のはバカだろ。」


ひ、ひでぇっ!!


ほとんどの生徒がそう思ったのであった。


「次は」


「オオォオッ!」


一人の生徒が五明丸に殴りかかってきた。


「お、そう言えばお前のクラスだったな娥梨子。」


鋭く放たれる拳の突きを、木刀で軽く受け流す五明丸。


「どうもです五明丸さん。ウチと手合わせお願いします。」


「お前の得物が素手でも手加減しないからな。」


「本望っす!」


薙ぎ払われた木刀を拳のメリケンで娥梨子が受け止め、素早くしゃがみ屈伸した姿勢で五明丸の腹に蹴りを入れるが、木刀の柄で受け止められた。


「五明丸さん!」


「なんだ?」


「この勝負、ウチが勝ったら………ウチと…」


娥梨子の顔が赤らみながら、五明丸の刺突を拳と拳で挟み止める。


「勝った時に言いな。俺は勝者に従う。」


「・・・ま、マジっすか!」


娥梨子が目を輝かせて、挟んでいた五明丸の木刀を弾き、懐に入ってがら空きになった胴に拳を放つが五明丸の持ち上げた脚に受け止められてしまった。


「さすがに強いな娥梨子。姉貴の指導が効いてんな。」


「花子師匠ほど強い女性に学べて最高っすよ。」


二人の激しい攻防の中、取り残された教官は


「・・・・とりあえず、自習……」


と言い、教官補佐を連れて出ていってしまった。


新キャラ増やしすぎたかなぁ?

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