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ついてもいい嘘。

作者: 東条李禹&風祭トキヤ

こんにちは!

風祭トキヤです!

東條李禹先生との二回目のコラボ作品になります!

東條先生の方であげている「どちらが大切か」の続編となっております

東條先生には中を、前後は僕が担当しました。

桜の花が満開になった春。僕は中学生に進学した。小学生の出来事は忘れたわけではない。あの清水凌駕しみず・りょうがと仲が良かったこと、喧嘩して絶交したこと。様々な出来事は主に小学4年生に集中していた。

 絶交以来、僕と清水は口を聞いていない。というか、あの後に清水は遠くの小学校に転校した。


◇◇◇


「今日から中学か...」


 目を開けたとたんに僕は気付いた。僕は4年の時から身長が結構伸び、170cm位になった。過去のトラウマを消すためにダイエットをして体重も落とした。イケメンとまではいかずとも、ルックスも平均レベルにはなっただろう。


「今日入学式でしょ?お母さんちょっと準備遅れるから先に行っといてくれる?」


「分かったよ母さん。また後で」


 母とは未だに仲が良い。反抗期というものはまだない。僕は玄関のドアを開け、マンションのエントランスへと向かった。


「あ〜おはよう。みっさん」


 後ろから話しかけてきたのは6年で友達になった鈴木隆聖すずき・りゅうせいだった。彼とは6年までほとんど関わりがなかったが、とあるきっかけで同じマンションに住んでいることがわかった。そっからは鎖縁というやつだった。


「よぉ隆聖。おはよう」


 僕は何故か三田の頭文字を取ってみっさんと呼ばれている。理由はよくわからないが気に入ってるらしいので放置している。

 そして、僕は自分の癖も改善した。さん付けをやめたのだ。隆聖曰く、さんを付けるとどうにも絡みにくいらしい。ついでに、僕もやめようとも考えたが少し考えてやめた。


「今日から中学だね。みっさん」


「うんそうだなぁ。同じクラスになれたらいいな!」


 いつものように普通の会話をしながら歩いていたらあっという間に到着した。

 今日から通うこの中学校はたくさんの小学校から生徒が集まる。そのため、全校生徒も1000人近くはいるだろう、と聞かされていた。

 到着してまず目に入ったのは人数の多さと公立とは思えない校舎の広さだった。噂以上であろう。校門では名簿を配る先生や上級生がいた。


「よろしくね〜」


「うっす」


名簿を渡す先輩に軽く返事をして紙を受け取った。


「何組だ?」 


あまりの組の多さに一つ一つ確認をしていると10組めで自分の名前を見つけた。


◆◆◆


10組・男子


1番・相澤爽太

2番・宇陀隆弘

3番・加藤正樹

4番・児玉源太郎

5番・清水凌駕

6番・須藤翔也

7番・田辺純一

8番・中井浩介

9番・葉山零太

10番・松崎篤人

11番・三田孝之

…………


◆◆◆


「……」


 5番の名前を見るなり絶句した。そこにあったのは清水凌駕の文字。一番の親友であり、一番の理解者だった男の名だった。

 僕と清水はクラスメイトになってしまったのだ。


「釜太刀小学校から来ました。相澤爽太です。よろしくお願いします」





「東星小学校から来ました。清水凌駕です。えっと‥よろしく」


 5番目の清水の自己紹介は適当であった。やる気の欠片も感じない。多分、僕がいることを知っているのだろう。さっきからチラチラこちらを見てくる。


「次は‥‥三田。自己紹介を」


 そうこうしているうちに自分の番だ。第一印象は大切だ。


「神聖小学校から来ました。三田孝之みた・たかゆきです。えっと‥よろしく」


 しまった。これでは清水と変わらない。またイジメコースまっしぐらかよ。


「清水、三田、お前たち元気ないなぁ。緊張しているのか?」


 自己紹介の元気のなさに、先生が場を盛り上げようとする。『はっはっはっは』などの笑い声が聞こえることもなく、シーンとした空間が続く。


「ま、まあいい。次は武藤、自己紹介してくれ」


◇◇◇


 自己紹介と軽い説明だけでこの日は下校となった。


「みっさんみっさん!クラスどーだった?」


 隆聖がカバンを持ってこちらに向かってくる。久しぶりの再会に困惑する僕と違って、隆聖は早くもクラスに溶け込んでいることがわかった。


「まあ普通かな…」


 まあ◯◯。この定番コメントは大体の会話を終わらせる常套手段だ。本性ははっきりいって最悪だ。清水凌駕がこの学校に来るなんて知りもしなかった。


◇◇◇


次の朝早速清水の席の周りには女子が群がっている。


「ねえねえ!清水くんってなにかスポーツやってるの?」


「まあ、サッカーをな」


「清水君ってあの十年に一人の逸材の!?」


「テレビではそう取り上げられてるらしいな」


 キャーキャーといって、クラス中が女子の声が響き渡る。女子の質問に対して一言で答える凌駕には腹が立つ。なに?あれがカッコイイと思ってんの?バカじゃねぇの?とでも言ってやりたい。逆に僕は話しかけられもしないけれど…。

 

 そして、突然自体は起こった。


「おい。三田、俺のこと覚えてるか?」


 清水が僕に向かって、声をかける。僕は無視をし、廊下に出た。水飲みやトイレを済まして帰ってくると女子全員から睨みつけられていた。どうやら、僕の態度がお気に召さないらしい。女子というものは怖いと久しぶりに実感した。


◇◇◇


 帰りの学活が終わり、僕たちは下校の準備に入る。僕たちが入った中学は部活が盛んで入部率が全学年で90%を超えていた。いまは仮入部期間で自由に部活に参加出来た。『仮入部』というのは体験入部みたいなものでその1日だけ部活に参加することが出来る。もちろんどの部活に期間中であれば何回も参加できた。

 僕は運動部にはあまり興味が無かったが、隆聖が同好会を教えてくれた。この中学校には、珍しく、同好会が何個かあり、かるた同好会、武道同好会、漫画研究会など様々だ。

 そこには『ライトノベル同好会』というものがあり、隆聖は二次元の絵を描くためにラノベ同好会に入った。

 一方。僕は周りの目が怖かったので、テニス部に仮入部した。体育着に着替え、荷物を置き、校庭に出た。


「ん...あれは?」


 同じクラスの中井と一応同じ小学校だった小見山の姿があった。知り合いがいて、良かったと思う気持ちもあるが一人がよかったと思う気持ちもあった。


「まずサーブから練習を始める。一年は校庭30周だ」


『はいっ!』


 勢い良く返事をして一周300メートルある校庭を走り始めた。

 ぜぇぜぇ。はぁはぁ。さすがにきつい。約9キロメートルを初日から走らされると思うまい。こんなことなら、隆聖と一緒に同好会に入ればよかった。


◇◇◇


「気を付け...礼」


「ありがとうございましたー」


 きついトレーニングが終わり帰りの支度に入る。汗に塗れた部活着を見て、久しぶりの運動に達成感を抱く。

 制服に着替えて、荷物をまとめて外に出る。校門には隆聖の姿が見えた。


「待っててくれたのか」


「まあね」


 僕たちは家に向かって歩き出した。空はオレンジ色になっていて、少し眩しい。


「俺、少しよってくとこあるから。みっさん先帰ってて」


「分かった。じゃあな」


 二本の分かれ道で、隆聖は右に曲がり、僕は左に曲がった。

 用事があるなら先に帰ってよかったのに。そんなこと思いながら道を歩く。


10分歩いただろうか。家まで目前というところで、公園で清水凌駕が自主練している姿が見える。僕は何も話しかけず素通りした。

 すると目の前にボールが飛んでくる。それは僕と清水が小学校時代に使っていたボールだった。そのボールはもう古臭く、汚かった。けどそのボールからは清水の汗と涙と努力が見えたような気がした。


「おい。なんであの時無視した」


 声変わりした大人の声で僕に問いかける。僕は沈黙した。


「久しぶりだね。清水」


「もう『さん』じゃないんだな」


「まあね。もうあの頃には戻りたくないからね」


「孝之、お前に謝りたいことがある」


「なに?僕は謝ったじゃないか、おばあちゃんの容態はどうだい?」


「…おれのおばあちゃんはとっくのとうに死んでる。俺が産まれる前に死んだんだ」


「え?」


 口から言葉が出ず、どう返していいか分からない。今まで長い時間かけて反省してきたことが自分のせいじゃなかったのだ。再びの一瞬の沈黙の後に、怒りが込み上げてくる。


「何言ってるんだ!お前がああ言ったから僕は…僕は…」


「俺は嫌われて欲しかったんだ。お前に」


「はぁ?嘲笑っていたじゃないか!」


「だから、嫌われて欲しかったんだよ!」


ー何故?ナゼ?なぜ?ー何故?ナゼ?なぜ?ー何故?ナゼ?なぜ?

 

 途轍もない虚無感だろうか。何とも知らない感情が僕を襲う。つまりは、僕の考え抜いたこの数年間は清水凌駕の嘘だったのだ。あいつが悪いと考えながらもそれは違うと自問自答した日々は嘘だったのだ。


「どうしてそんな嘘を言う?言わなければ僕は…自分の責任で入られたのに!」


「すまない。そんなに追い詰めていたんだな。俺はお前と遊ぶ約束を放ったらかして親を説得していたんだ。引越しをやめて欲しいって…。けどそれは無理だった。それが辛かったんだ。今までで一番楽しかったあの時間はもう蘇らないと思っていた…」


清水が僕に初めて涙を見せた。あんなに強気だった清水が僕に…僕が清水に見せていたものを僕は今見ていた。


パンッッ!


僕は清水の頬を引っぱたいた。


「ふざけんなよ!なにが苦しいだよ!僕は親友に裏切られたと思ってた。けど僕も同じ気持ちだよ!初めてできた親友だから...だから僕は清水と離れていても親友だと思ってるよ!絶対に忘れないよ!」


僕も泣いた。2年ぶり位に泣いた。僕たちはあの時した握手をした。

それは昔が蘇ったとはいえないが、気がつくと僕たちはボールを蹴っていた

次は...は何編になるか分かりませんがまたコラボするのでぜひ読んで下さい

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