あの時のぼくたちも、青かった 4
スタッフがチャペルへの移動を呼びかける。
自分が式挙げるときの参考にしなきゃ、と優は気合を入れていた。
「まずは祝福するのに気合入れろよ」
「そういえば、あっくん式挙げた?」
優はぼくの忠告を華麗に無視した。
「いや、金もかかるしなーっつって挙げてない」
「えぇー!」
ものすごい非難の叫びが優の口から飛び出した。
「奥さん、式したいって思ってるよ多分! わかんないけど絶対!」
多分なのか絶対なのか、という問いは野暮というものだろう。
「それ、お前がしたいだけじゃないの? うちは嫁の方から、お金ないから式しなくていいとか言ってるぞ」
ぼくの受け答えが、優に火をつけた。
「これだから男は! 家計を気にして遠慮してんじゃん! いっぺんドレス試着だけでもしに行ってみ?」
「んー、分かった」
勢いに押されたまま頷いておく。これが功を奏した。
後の話だが、優のアドバイスに従って、ドレスなんていいよと言う嫁を引きずって試着をしに行った。その結果、式を挙げようということになった。いざドレスを着ると嫁がその気になったのもあるが、それ以上にぼくが美しい花嫁姿に惚れ直してしまったのだ。優にはまたもや感謝だ。
「優は? 式いつ?」
「まだちゃんと決まってない。そのうち招待状送るから。あとで住所ラインして?」
「……呼んでくれるのか?」
「呼ばれたくない?」
「馳せ参じましょう」
「よろしい。ご祝儀三億円ね」
「あ、急用が入った」
優がぼくの肩をぽこっと殴った。懐かしさと、そして少し物足りなさを感じたのは、彼女が手加減を覚えたからだろう。
目の覚めるような緑の芝生庭園の真ん中にガラス張りのチャペル。一本の石畳を歩いて入場し、ぼくたちは並んで着席した。
日の光がチャペルに差し込み、そして主祭壇の向こうにはキラキラと輝く青い海を望む。
門出にふさわしい日だった。
fin.




