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非道徳的交渉先入観似非同情差別

scene:革命

作者: 紅羊


scene:革命


 新聞の一面には暗殺の二文字が目立ち、テレビのニュースも件の現場近くを映し出している。ラジオもネットも、殆どのメディアは世界を震撼させるほどの事件の報道を挙って伝えていた。渦中の国の政府は無関係と無実を訴える一方で、暗に異世界の亜人が起こした事だと発表している。関係諸国と連携し、事件の全貌を究明し、且つ実行犯を含む関係者を捕まえると告げていた。が、現状、公式な宣言を発表するだけが精一杯なのは明らかだった。

 国連の安全保障理事会の常任理事国の一角も担うロシアは、先のアシクジによる中東、及び東欧、南欧で規模を拡大するテロ組織への攻撃に対して否定的な態度を見せていた。アメリカ、イギリス、フランスは、自らの手を下さずともテロ組織を壊滅に追いやっている状況は、誰であろうとも在り難いものだった。国内で扉に関連した内政の不安が見られ、また異世界への進出を企てていた都合、無駄に戦力を導入する必要性がなくなったからだ。対して中国はアシクジらの侵攻を歓迎するような態度は見せなかったものの、否定的な言動もなく、静観する立場だった。

 が、ロシアだけは東欧諸国との関係もあり、露骨とは言わないまでも、状況を静観出来ない状況にあった。勿論、既存の資源をめぐる既得権益や歴史的な背景の他、21世紀から始まった、かつての共産圏を主導した強いロシアになろうという政治的な方針――昔の冷戦のような対立関係を言い表したものではなく、ユーラシアでの新たな経済圏の設立などを説き、リーダーシップを発揮しようとした結果の誤謬だ――の影響も大きかったと言える。既に同スローガンを掲げた大統領は代わり、今は協調路線を打ち出しているが、同スローガンを掲げた前大統領の一番の支持者でもあったロシアの不動産王シャムシュロヴァの暗殺は極めてセンセーショナルな出来事だった。

 ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)内に近年設置され、急速にその規模を拡大しつつある、異世界との諸々の交渉が任された異界連邦講和局に所属するエメリヤノフは、部下のヴァシリチェンコと、お目付け役としてGRUの別部署から送られてきたクラスニコフと共に、北西部のとある地方都市を訪れていた。そこはしがない人材派遣会社。と言っても需要なんてない。ただ居心地の良い老人達のたまり場と化しているらしい雑居ビルの一室は、むしろ法律にまつわる相談所となっていようだった。部屋の奥には老人達の嗄れた声に耳を貸す中年の女性がいる。横柄な態度が見て取れるが、険しい表情は真摯な事の現れだろうか。見た目は三十歳よりも若そうに見えるも、既に四十は優に超えていると筈だった。

 「おや、懐かしい顔がいるねぇ」

 エメリヤノフの訪問に気付きつつも、老人達の話がひと段落付くまで敢えて視線さえ寄越さなかったジアーナが、然もいま気が付いたと言いたげに片手を上げた。

 「久しぶりだな」

 昔馴染のよしみかエメリヤノフの屈託のない、だが、やや棘のあるような口上は、多少なりとも二人の事情を聞いていたクラスニコフからすれば想像に難しくない対応に見えた。が、過剰なような気もする。とは言え、プライベートな部分も含むいざこざに首を突っ込むつもりもないクラスニコフは、二人が揉めない事を祈りつつ、エメリヤノフらに代わって訪問の事情を改めて説明した。

 「それでシャムシュロヴァの暗殺について何か情報はありましたか?」

 ゴシップやインターネットの他、国営のテレビ報道でほぼ全ての事情は把握出来る。一応、助言と協力を願い出る建前か、エメリヤノフらの組織はかつての同志に情報を提供しているものの、内容に政府お墨付きの保証がある以外に違いはなかった。

 「色々な噂は耳にするよ。でも、政府のエージェントが知らない話とは思わないけどね?」

 ジアーナは遠回しながらエメリヤノフら政府機関の意図を質すと、ヴァシリチェンコが少し困ったような表情で申し開いた。

 「憶測は憶測です。ですから、我々が知らない情報や、確かな証拠を得たいと――そう、多角的な検証をですね……」

 「まぁ、ただのビジネスとしてなら断る理由はないけどね」

 不毛な遣り取りは好まない。ビジネスとして話を進めようとするジアーナがクラスニコフの建前を遮った。

 「いるかい?」

 急にそっぽを向いたジアーナが部屋の奥に視線を向ける。

 「おいで、ノーツ」

 「いるよ、ずっと」

 部屋の影に二つの光が浮かぶ。暗闇に影が重なり、僅かな濃淡から徐々に凹凸が生まれる。ぬるりと這い出るように黒が分離したかと思えば、そこには全身を黒い衣装に包んだ亜人らしき少女が立っていた。

 「な、……まるで気配がなかったぞ?!」

 驚いた様子のヴァシリチェンコは現れた少女を見つめる。少女は小柄だ。実際の年齢は定かではないが、単純に体格から推し量れば十代の前半と思われた。フードを被り、顔だけを露出させている。その顔はほぼ人のようだったが、唇がやや猫のように割れている。目もよくよくと観察すれば、光彩の形が四角だった。若しかすると、フードの僅かな盛り上がりは角なのかも知れないと想像される。

 「当たり前だよ。そう云う事に長けた種族だってんだから」

 ジアーナが扉より迷い込んだ亜人を囲っていると言う噂……情報は早々に入っていた。どのような仕事の手伝いをしているのかは定かではない。先ほどのようにプロを以ってしても気付けないほどのスニーキングやストーキングの技術を目の当たりにすると、詳細が知れないと言う諜報部の適当な報告も納得出来る。

 「ほら、例の資料」

 手の平を返したジアーナに、ノーツと呼ばれた亜人から一本のUSBメモリが手渡される。

 「本音を言えば、アンタらは事を知った上で行動していると思うんだけど……そこんところはどうなんだい?」

 「仮にそうだとしたら?」

 「政府に喧嘩でも売るつもりかい?」

 「さぁ。――――少なくとも機関名に恥じない事をしたいとは思うよ。祖国の為にも」

 USBメモリを受け取ったヴァシリチェンコがタブレットに内容を表示させる。律儀に報告書らしい体裁を整えてあるPDFのファイルが中に保存されていた。

 「噂じゃ、政府の自作自演だって説が主流だよ」

 「何のメリットが?」

 「何のって……」

 思わず失笑を漏らしたジアーナが徐に机の中を探り始める。

 「この国は広い。それなりに資源もある。けれど、豊かとは程遠い。先の大統領は、こっち側で奔走してたけど、次代は向こう側だろ。強硬派なんだと言われてるけど、むしろあっち側を信用出来ない、だから、アジアで、引いては世界で協力しようと言う考えだったように思うよ、私的には」

 「これは何処から?」

 何枚かの画像に興味を惹かれたエメリヤノフがその出所に付いて問い質した。

 「企業秘密に決まってんでしょ。これが食い扶持になってるんだから」

 「面白い人物と会ってますね」

 クラスニコフはタブレットの画面を拡大させる。そこにはシャムシュロヴァと亜人らしきシルエットの何者かが握手を交わしているシーンが映し出されていた。

 「ヤクギですよ。ナカンダカリの眷属です」

 「そいつ、強い」

 「らしいよ」

 ノーツの発言をジアーナが擁護した。

 「今の大統領から講和局の予算が増えたんだろ?」

 報酬は弾んで欲しいと茶化したジアーナ。小切手やらカードの端末にも使えそうな妙な機械を用意する。

 「兎に角、それが全部だよ。私らが確認出来たのは。ほら、一応、曲がりなりにも商売なんだから、依頼が終わった証拠にこの契約書にサインくれる?」

 突き出すように契約書をエメリヤノフへ渡したジアーナが古めかしい万年筆を貸し出した。

 「古いけど、良いペンだろ。書き易いんだよ」

 「ペンに拘りはないよ。書ければ同じだろ?」

 万年筆を取ったエメリヤノフが一行を代表して契約書にサインを認める。指揮棒でも振るうかのような勢いで書かれた癖の強いサインは、見慣れていても名前が書いてあるとは思えない代物だった。

 「……どうも」

 奪い取った契約書を机の中に放り込んだジアーナが溜息を吐いた。

 「そんなに大変な仕事だったのか?」

 「まぁ――――かも知れないねぇ」

 ジアーナはゆっくりと両手を上げる。その手には拳を握れば隠せるほどに小さい拳銃が握られていた。

 「殊勝だな。何時、気が付いた?」

 「確信を持ったのはその万年筆。一応、思い出の品なのよ」

 「動くなよ、ノーツとやら」

 根拠に耳を傾けつつも、一方でエメリヤノフはノーツの機先でも制するように手の平を向けていた。そこには不思議な刺青が彫られている。

 「術式……使うのか?」

 「使える。≪○-|≫と≪#&$≫の違いだな。≪○-|≫は魔王のような少数の異才しか術式は使えないが、≪#&$≫は皆が使える。とは言え、こっちでは原資が不足しているから、そう大きな術式は使えないが――……人ひとりくらいは殺せるさ」

 「お前も動くなよ」

 「は、……え?」

 ヴァシリチェンコがクラスニコフの横っ面に拳銃を突き付ける。

 「そっちのお嬢ちゃんはお仲間じゃないのかい?」

 「彼女は本当にGRUからの出向だ。勿論、我々も異界連邦講和局の一員ではあるが」

 「こちらも一枚岩じゃないと言う事ですよ」

 拳銃を下げるヴァシリチェンコ。エメリヤノフは手の平こそ開いたままだったが、今度は何故か両手を上げる。

 「別に敵対するつもりはない。本当に情報が知りたかったんだよ」

 エメリヤノフとヴァシリチェンコが間合いから遠退くようにジアーナらとの距離を空けた。無抵抗と誠実を表したアピールだった。

 「今の当局に所属する≪#&$≫には二つの派閥があり、各々に問題を抱えている。真面目な話、シャムシュロヴァの暗殺で幾つか明るみに出た事実から混乱も生じている。その所為で当局に雇われてる≪#&$≫がクーデターを起こそうとしている疑いも掛けられた。それをなんとかしたくて上で止まっている情報が知りたかったんだ。どうしても」

 「信じる道理はないね」

 両手を下げ、開き直ったジアーナがノーツとクラスニコフを側らへ呼び寄せる。

 「そもそもどうして元旦那の顔をしてるんだい?」

 「その方が貴女も気持ちが良いと思ったんだ。それに警戒心も解けると……すまない、他意はない。気分を害したのなら謝罪する」

 「喧嘩別れの離婚だって情報はなかったのかい?」

 何度目かの溜息を吐くと、ジアーナは腹を括った。

 「一応、聞くけど元旦那は無事なんだろうね?」

 「えぇ。無事ですよ――。人質にするも何もメリットがないですから」

 不敵としか例えようのない言い回しに猜疑心が残るものの、エメリヤノフの潔白を前提にジアーナは話を進めさせた。

 「先ずは異界連邦講和局に所属する≪#&$≫の派閥から説明したい」

 エメリヤノフ……改めガノンと、ヴァシリチェンコ改めイーラが語る異界連邦講和局の今は、文化や文明なども含む全てに於いて対等を主張する革新派、権利的な対等と文化的な保全も優先すべきと考える慎重派に分かれているそうだ。ガノンとイーラは慎重派。クーデターの疑いを掛けられているのは革新派だ。元々は扉からの亡命者や難民の人的資源の有効利用と、及び異世界との融和を謳い、異界人らを雇っていたが、各地で扉の現出と世界的な周知が起こり、主流が異世界との共存の方へ傾き始めると同時に、こちら側の手法を適応した、一見すれば分からない植民地化の流れも生まれてきた。

 例えば昔の中世に近い王制や貴族制の多い向こう側では、領地以外の所有者は曖昧だ。仮に充分な法整備に伴う権利の設定が行われれば、土地の所有を訴える事に倫理的な疑義はあっても、後々も法的な問題が生じない可能性は高い。言い換えれば、金で国土を簡単に広げられる方法が示された事になる。その急先鋒がかつての旧ソ連からの生き残った経済界の重鎮らやシャムシュロヴァのような大富豪の人々だ。

 だが、こちら側で経験を積み、知識を増やした≪#&$≫も愚かではない。それは体の良い侵略だと理解し、訴え、ひとつの組合を起こしたものの、主張を重ね、反論で説き伏せられる度に、組合は徐々に手法を違え、動機を変え、当初の目的を見失い、革新派と慎重派に分かれていった。

 「所詮、我々は未開の世界の住人であり、圧倒的な少数派に過ぎなかったんだ」

 崩れるように顔を伏せたガノンに続き、イーラが先を続ける。

 「が、革新派に妙な動きが出始めました」

 「それをお国は疑っている訳か」

 ジアーナは納得した。が、出来過ぎたストーリィにも見えた。

 「その辺の話は初耳です。革新とか慎重とかの派閥があったんですね」

 厳密に言えば異界連邦講和局とは無関係のクラスニコフも漸く落ち着いたのか、状況に慣れた様子で素直な感想を呟いた。

 「組合の考え方で、内々の派閥だからな。対外的にそう大きな意味を持つものじゃなかった筈……」

 「で、その後は?」

 「慎重派は訴えを続けました。が、革新派の一部は、それら計画の中心人物に接触を図ったようです」

 ほぉ。と頷いたジアーナは、先に調査していたシャムシュロヴァ周りの出来事を思い返していた。

 「ですが、その後の正確な足取りが掴めていません」

 「だから、貴女の力をお借りしたい」

 頭を垂れたのではなく、平伏してお願いするガノンに倣い、イーラも頭を下げる。上げようとはしない。誠実な態度も窺えた。

 「同朋の為ってやつかい?」

 「えぇ、同胞に犠牲は出したくない……」

 完全に信用する事は出来ない。最初に言った通り、政府に喧嘩でも売らなければこちら側で充分な権利を獲得する事は難しいだろう。手渡した資料が全てではないのも、最悪を想定した上で残した他の内容も鑑みれば、問題が複雑化する事は目に見えていた。

 「最初に聞いたけど、アンタらは本当のところ事を把握した上で政府に喧嘩を売ろうって訳じゃないだろうね?」

 「まさか、」

 驚いてみせるガノンは釈明した。

 「我々が置かれている状況を考えて欲しい――。今は≪○-|≫との戦争状態にある。貴女方の世界の協力は欲しい。先の魔王との戦いで、あそこまで被害を抑えられたのは貴女方の協力があったからこそだ」

 力説したガノンは、一方で力ない笑みを浮かべ、現状の疲弊した状況を訴える。

 「あの……」

 完全に手に余る上、管轄外の出来事へ強引に巻き込まれつつあるクラスニコフが口を挟んだ。

 「これって、どう上に報告すれば良いんですか?」

 「そのままで良いじゃないか。ま、アンタに責任はないんだろうし」

 「はぁ」

 困惑するクラスニコフが表情に何本もの皺を増やしながら、頷く以外のアクションを模索する。

 「で、状況としては財界人に接触を図った革新派の動向が、私らが調べた情報だと。けれど、どうやらその政府は……にしとこうか、は、それを隠している様だと」

 「あぁ。ヤクギとシャムシュロヴァが会ってたなど知らなかった。そのまだ見ぬ報告書には他にどんな事が?」

 「見て貰った方が早いんだろうけど、ざっと言ってしまえば、財界人が誰と会っていたかとか、金回りの動きだね」

 「ヤクギとシャムシュロヴァが会ってたのはどうお考えですか?」

 「簡単だろ。シャムシュロヴァが依頼したんだろうよ」

 意外な推理に食い付いたのはクラスニコフの方だった。

 「どうしてですか。そりゃ可能性とはあるんでしょうけど……」

 第一に挙げるとしても微妙なところである。むしろ誰かのメッセンジャーか、仲介役と考える方が妥当ではないか。いや、そもそもシャムシュロヴァがヤクギに何を依頼したのだろうと、ジアーナは言っているのかが分からない。情報が不足している事は否めないものの、ジアーナのそれもやや飛躍した発想のような気もする。

 「アンタらはまだ報告書を精読してないから分からないんだろうけど、結構、面白い人物が登場してるよ」

 保険として残しておいた資料には極めて興味深い人物が名を連ねている。本音を言えば、交渉や脅迫に使えるだろう内容は、ジアーナにとって大きな利益にもなる代物だった。

 「そうだね。例えばマルィチェフやドストエフスカヤが会合しているとかね」

 「マルィチェフ…ドストエフスカヤ?」

 政府関係者なら知らない筈がない人物だ。マルィチェフは連邦軍参謀本部の現参謀総長、ドストエフスカヤは鉱工業の財界人で、自由民主党から先の大統領選に出馬した人物でもある。

 「フーノルト」

 ぼそりとノーツが付け加えた。

 「ふ、…フーノルト?」

 「知っているんですか?」

 名前だけはどちらの世界の住人か分からないクラスニコフが、耳に覚えのあるらしいガノンやイーラにその人物が誰なのかと質問する。

 「≪;<#】≫でも名の知れた資産家です」

 表情の暗いイーラに代わって、ガノンが捕捉する。

 「が、その正体は誰も知らない。まさか、こっちでその名前を聞くとは……」

 「そんな凄い有名人なんですか?」

 「得体の知れない人物だ。何処かの国の王だとか、国際的な組織の名前だとか、何百年と生きている魔女とか……言われているような人物だ」

 「写真はあるんですか?」

 「そっちに渡した資料の他に。身の危険も考えて保険として取り置いたやつにね」

 机を離れたジアーナが先ほどまで老人らが座っていたソファーをひっくり返した。下の板張りの床に爪を立て、一枚、二枚と剥がしていく。剥き出しの基礎部の暗闇に手を突っ込み、下から小さなフィルムを取り出した。

 「アナログな」

 と呆れるクラスニコフにジアーナは言った。

 「デジタルは改変し易いから信頼度では劣るんだよ。覚えてときな」

 マイクロフィルムを受け取り、心許無い室内の蛍光灯に向けて当てると、よもや市街地のカフェテリアで会合するような人物ではない二人のロシア人と、フーノルトと思しき妙齢の美しい女性が三人もそこに映し出されていた。

 「この誰かがフーノルト?」

 「或いは全員だろ。噂通りに組織の名前ならね」

 ジアーナは写真の状況について説明した。確かにマルィチェフやドストエフスカヤは三人の女性を一様にフーノルトと呼称していた。女性らも然も自分がフーノルトと言わんばかりの対応していた為、フーノルトと言う言葉が名前かどうかの判断は出来なかったらしい。会話の内容も断片的に聞き取れただけだったが、行間を埋めるくらいは可能だったようだ。

 「フーノルトは、ロシア……いや、連邦軍と言った方が適当だろうね。彼らを取り込み、そっち側に召喚しようとしてるみたいだったよ。代わりに特別な資源の採掘権だとか、何とか……色々と話をしてたよ」

 「そうなると、シャムシュロヴァとの接点も幾つか想像出来る――。いや、まさか、一部の軍の離反、勝手の責任を我々の組合をフェイクに進めるつもりなのか?」

 ガノンは想像力豊かに国家レベルのカバーストーリィでも組み立てたのか、抑えがたい衝動に耐えるようにわなわなと肩を震わせ始めた。

 「クーデタ……あの噂は本当だったのか」 

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