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Bush Pilot  作者: フラップ
第四章
19/27

4-6


 大学連合第七首都大学、Alley mur mur事務所は暗い雰囲気に包まれていた。

 「自衛隊は?」紗彩は叫ぶ。

 モニターに、F-35のカメラが映し出される。隣に、レーダーの画面も3D表示される。

 らーだーには、そのF-35。そして、画面の三分の一を覆い隠した黒い塊。

 「おい!嘉手納だ!火山灰の中に突入する、援護しろっ」

 「馬鹿野郎!死ぬ気か!?」支援センターからか、殆ど音が割れている声。

 「命令だ!自衛官として、突入は許さん、待機しろ!」別の自衛官の声。

 「くそったれ!」

 「電波はどうだ?」

 「真っ暗だ。全く通らない」混乱したような声。先ほどの飄々とした態度から一変している。「少しも通らない。一ビットもな。あと、悪いニュースだ。コンパスがさっきからずれている」

 「磁気か?」

 「ああ、衛星情報で何とかしているが……」

 「向こうは、電波が届かない、か」

 「あいつらが積んでる燃料は?」

 「あと、四十分だ」

 「氷川、聞こえますか?聞こえたら返事を!」

 事務所の中を見渡す。

 レナが呆然と立ち尽くしている。

 リオンがその肩を抱いている。

 誰もが、画面を凝視している。

 時が止まり、空気が凍っている。

 誰も動いていない。これは拙い。

 「みんな!」叫ぶ。泣きたい気持ちを雁字搦めに縛り上げ、机を叩いた。「情報を整理する。レナ!」

 レナが、黙ってこちらを向く。泣きそうな顔。リオンがこちらを睨む。「黙れ」と顔に書いてある。怯まずに続ける。「いい?まだ死んでるわけじゃない、死体が見つかったわけじゃない、残骸が出てきたわけじゃない。死んだのか、生き残ったのかは後で決める、今は助けることだけ考える」

 ようやく、時間が回り始めた。

 それぞれが、ようやく別の動きをし始める。

 「仕事が分からない人はこっちに」

 組織は、血を廻さなければ死ぬ。必要なのは、電気ショックだろう。

 「飛行中の電子戦支援機、聞こえますか?」

 「嘉手納だ。どうした?」

 「火山灰は低空まで覆っているのですか?」

 「最初の方は大丈夫だったが、もう降灰が始まっている」

 「逆に、上は?」

 「危ない。駄目だ。それに、この機体は余り下方向の電子支援に強くない」

「分かりました。よろしくお願いします。えっと、FCSの方ではどうなっていますか?」

 「北芝ナツだ。FCSの責任者だ。何?」

 「火山灰の中から、生還する方法は?」

 「無い」

 「本当にないんですか?」

 「無理だ。無動力の飛行機で、視界ゼロの中をどうやって逃げる?しかも、乗っているのは足の遅いピタラス・ターボポーター。旅客機とか、抵抗の低い速い機体なら真っ直ぐ進んでいればかなり進める。重いから、気流の影響も少ない。ターボポーターじゃ無理だ」

 「分かりました。不時着している可能性は?」

 「嘉手納が言っていたように、最初の方は低空だけはクリアだった。こっちの松本がレーダー情報を解析したけど、降下率と大きさから考えて、飛行機が正常な状態で降下した物体は無かった」

 「つまり?」

 「吹き飛ばされた岩か」彼女はそこで切る。溜息が聞こえてきた。「空中分解した、機体だ」

 「……わかりました。ありがとうございます」

 沈んだ気持ちを切り替え、第一大の報道に情報を回す。

 「もしもし?報道の北村だ」

 「もしもし。何?」紗彩は答える。

 「今回ってきたソースは?」

 「自衛隊、FCS。ドキュメンタリーの取材でFCSには伝があった」

 「今晩、そこに人を回す。紹介状を用意しておいてくれるか?」

 「分かった。ちょっと待って」受話器から口を話す。「リオン!そういうの得意だよね、よろしく」

リオンが片手を上げた。「OK。メッセージで回す。他には?」

 「新しい情報は?」

 「ない」

 「分かった」

 「生きてたら、電波が飛んでくる」

 通話が切れた。

 リオンが書類を作成しようとタブレットを起こす。作業に入る前に、心配そうな目でレナを見た。

 「お姉ちゃん……」

 無表情で、息の摩擦音だけ残し、「よぉし」とこぶしを握る。

 「編集長!」

 「副、ね」

 「何すればいい?」

 「いま、報道に全部任せっぱなしだから、映像が来た場合に備えてテンプレートを作っといて」

 「オッケー」

 溜息をついた。

 「帰ってきてよ……」顔だけモニターに向けて、そっと呟いた。目は、どこも見ていない。「頼むから………………」

 それは、彼女が、彼女に許したたった一つの弱さだった。

 一瞬後、彼女は既に「リーダー」になっていた。

 きっと、生きていたら返答があるはずだ。


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