臆病者と不器用①
ちょっと時間は前に戻りましてキング発表が11月だったのですがその約1ヶ月後ぐらいの話。
しかも、主人公がでてこない。
光と恋ペアのお話です。
まずは光視点。
奥橋真は面白くて可愛らしい性格だ。
誰に対しても同じように優しくて人に頼まれたことはすぐに引き受けてしまう。
でも、自分でやると決めたらまっすぐ前を向いて進み出す。
僕が真に「可愛い」と正直に伝えると動きが固まって顔を赤く染める。
こういう反応は他の子達と変わらないけど、何故か真がすると僕は嬉しい気持ちになる。
この感情は今まで持ったことがないから最初は戸惑った。
でも、顔には出さなかった。いや、出したつもりはなかった。
なのに、僕は予想もしていなかった人物にある日唐突に言われた。
「真のこと好きでしょ?」
そう言って僕を見つめる(睨みつける)真っ赤な瞳。
最近決まった僕のペアである赤姫恋だった。
恋はあまり話さない。
でも、真のこととなるとまるで人格が変わったように口がまわりだす。
真が大好きでたまらないということを恋は隠していない。
まぁ、僕はそのことに関してはあまり突っ込まないようにしようとは思っている。
そんな真大好きな恋がある日僕に「真が好き?」などと聞いてきた。
僕は一瞬答えに困ったが、いつも通りの表情でまだ自分の気持ちなどわからないけど答えてみる。
「そうかもしれませんね」
「……腹黒い」
「そんなはっきりと本人に向かって言わなくてもいいじゃないですか…」
恋はそれには何も返事を返さずにふいとそっぽを向いた。
……なんてわかりやすい拒絶反応。
やりにくい相手だな。
僕はこれから先どうしようかなと本気で困った。
しかし、ペアで授業の時間の度に僕は赤姫恋への印象が変わっていった。
恋はあまり話さないが慣れた人には少しだけ饒舌になる。
僕らの担任である城戸響先生(通称キドリン←強制)は良くも悪くも生徒とフレンドリーだ。
そんな城戸先生だからこそ恋は少しずつ心を開いてきた。
だが、僕のことはまだまだ警戒しているみたいだった。
12月の初め頃のことだ。
いつも通りの授業が始まる。
「今日は実戦テストすっぞ~」
そう言って城戸先生は地面に手をつける。
週に一回こうして抜き打ちで実戦テストがある。
僕と恋は身構えた。
城戸先生のオズは土を使う。
だから、今日は森だったのかと今更ながら気がつく。
実戦テストのルールは簡単で城戸先生に勝てばいい。これまでテストは三回程あったが、僕らは一度も城戸先生に勝てていない。
怪我は勿論するが、恋は治療にかけては学園内で右にでる者はいない程の腕前を持っている。
だから、心配はしていない。
だが、その日恋が気がゆるんだのか城戸先生の攻撃をまともに受けそうになった。かなりの勢いで恋に迫っている土の刃を見て、僕は心臓がどくんと跳ねる。
恋の姿が過去の誰かに見えた。「恋!」
氷で盾を作ることを考えたが間に合わないことは頭でわかっていた。
だから僕は反射的に恋を抱き締めて自分の身体を盾にして庇うことにする。
勿論、飛びついた形になったので攻撃を受けることはなかった。
が、僕はすぐに恋の無事を確認するために声を掛ける。
「恋!大丈夫ですか?」
「…うん……」
ここで僕は驚く程安堵している自分に気づいた。
「光…?だいじょ」
「あぁ、すみません。まだ実戦中でしたよね」
僕は抱き締めていた恋を離して一緒に立ち上がる。
「な~にお前ら独身男の目の前でイチャイチャしてんだよ!羨ましいぞコノヤロー!!!」
城戸先生が空気をまったく読んでいない発言をしたので僕は少し苛ついてしまった。
「キドリンうるさい」
「キドリン黙ってください」
「おぉう、冷たい目×2は流石にこたえるな…」
城戸先生はそう言ってから少し顔をひきつらせて頭を掻く。
そして、何故か突然実戦テストを終わらせたのだった。
「あ~ぁ、どーせ今日もお前らは俺に勝てねぇだろうから今日の実戦テストは終了~」
「まだ一時間程しか経っていませんが?」
「一時間でも十時間でも今のお前らじゃ結果は変わんねぇよ」
「今の私たち…」
城戸先生は僕と恋を交互に見つめてからニヤリと笑う。
「ちょうどいいな。
お前ら、今日から二人でお互いのことを話し合え。暴露しあえ。んで知れ。それが新しい課題だ。期間は3日間。勿論、授業は別で行うがな。んじゃ、今日は自習ってことで解散!!!また明日~☆」
そう言うが早いか城戸先生はさっさと姿を消した。
「………」
「………」
沈黙。
話し合う、か。確かにまだペアになって日が浅いのでお互いの事を知る良い機会だろう。
僕は構わない。でも…
チラリと恋の方を見ると案の定口をパクパクと動かして顔色が悪くなり始めていた。
恋は人見知りだということはキングメンバーなら誰もが知っている。
今は同姓に対しては話せているが異姓となるとまだまだ怯えているようだった。
特に僕と拓斗には警戒心が強い。
拓斗は恐らく真を狙っていることが明らかだから気にくわないのだろう。
そして僕も真を好きかもしれないと言ったので拓斗と同じ警戒対象者として入れられたのだろうことはわかっている。
警戒対象者の人物とお互いのことを暴露しあうなんて恋にとっては地獄なのだろう。
まぁ、でも、今後嫌でも関わる相手なのだから我慢してもらうしかない。
「恋」
名前を呼んだだけで恋は身体をビクリと跳ね上がらせる。
そんなに僕が怖いのだろうか。
僕は恋のことは嫌いではない。恋は真と同じように面白くて可愛らしい性格だと思うし僕に対しても誰に対しても怯えながらも正直な意見を述べる態度は見ていて尊敬するくらいだ。
「恋、取り敢えず場所を移動しますか?それとも、ここでいいですか?」
「………え?何が?」
「えぇと…話し合うのが、です」
「………」
何故か恋はその言葉を聞いて大きな瞳を更に大きく見開いて僕を凝視した。
何か変な事を言っただろうか。
僕は首を傾げつつ恋を見つめる。
すると、恋がハッとした顔になってから慌てて僕から目を逸らす。
「は、話し合いは…ここ、で、大丈夫です」
「そうですか、じゃあ、座りませんか?」
「…うん」
ということでお互いのことを話し合うのは森の中(正確に言うと訓練場の一つであるので室内)となった。
何故か、恋が目を逸らしたとき胸がズキリとした。
何故だろうか。
「こ、光!!!」
「は、はい」
突然名前を呼ばれて少し驚いてしまった。
「さっきは……助けてくれて、ありがとう」
「いえ、大怪我がなくて何よりです」
「……」
やはり、というべきかそこから会話がなくなった。
さて、何を話そうかと考えていると驚くことに恋が先に口を開いた。
「私は、人見知りです!!!あと、治療が得意です!」
「……は、はい」
「あ、あと、口が悪いです」
「え、」
「あとは…あ、真が大好きです!でも、琴音も愛奈も大好きです!まだ、キングメンバーの男の子達とはあまり話すのが苦手です、で、でも、仲良く…なりたいとは思って、ます、これから。…あとは…植物、とかも、大好きです!」
段々声が自信なさげに小さくなっていったが恋がこんなに僕に対して話したのは初めてだった。
僕は少し固まっていたが、真っ赤な顔で一生懸命話してくれた恋を見て思わず吹き出した。
すると、恋は頬を膨らませて此方を睨みつける。
だが、その姿は僕から見たらただ可愛らしいだけだった。
「すみません、馬鹿にしたわけではないんです。ただ、可愛らしいなと」
「か、かわっ!?」
僕は本心を言ったのに何故か恋は先程よりもキツく睨みつけてきた。
「……」
「本心なんですが…」
「…つ、次は光の番!」
「はいはい、わかりました、…僕も恋と同じで口が悪いです。ある意味で。あと、演劇部に入部しています。キングメンバーの人達とは僕も仲良くやっていきたいです。オズは氷を主としています。読書が好きです。あと、音楽も好きです。……短所は結構、何事に対しても無関心、ということです、ね」
そう自分で言ったあとに無性に胸が痛んだ。自分で自分のダメなところを言うのはこんなに苦しい事だったっけと僕は思う。
僕が言い終わるまで恋は真剣に此方を見つめていた。
そして、何故か無表情になり、僕の顔に自分の顔を近づけてきた。
人見知りで僕に対して警戒心がある恋が自ら僕に近寄っていることに驚き僕は固まってしまった。
「れ、恋?」
「………嘘」
「は?」
「光は無関心じゃない」
恋の瞳は真っ直ぐに僕の姿をとらえてそう言った。
真面目にゆっくりとした声でそう告げる恋は僕の瞳の奥を覗き込むかのように見つめていた。
僕は思わず言葉をなくす。
僕は学園に引き取られる前である五歳までは家族と暮らしていた。
父と母と兄と四人家族だった。
少しの間しか一緒に暮らしていないがとても幸せな時間だったと思う。特に兄とは仲良しだった。
そんな幸せな時間と同時にトラウマとなる出来事も起こった。
兄が、僕のせいで命を落としたからだ。
悪魔が襲ってきた時に僕はオズを使って倒そうとした。
その時大丈夫だと言ったのに兄は僕を心配して安全な場所から出てきてしまった。
僕は慌てて兄に戻るように言った。
その一瞬の隙を悪魔に狙われたのだ。
「光!」
兄は僕を突き飛ばした。
そして、僕が立っていた筈の場所に代わりにいた兄は、目の前で悪魔に刺された。
僕のせいで兄が死んだ。その事実は僕の心臓をギリギリと締め付けた。
両親は僕を慰めてくれた。でも、僕はわかってしまった。僕は学園に行ってしまうのでほとんど兄が一人息子のようになる予定だった。なのに、その一人息子を奪われたのだ。
父と母の僕に対して向ける瞳は隠すことのできなかった憎しみの色が浮かんでいた。
そして、見てしまったのだ。夜に母が「オズの子なんて産まなければよかった」と泣いている姿を。
僕は考えた。どうしてこんなに苦しいんだろうかと。
そして、後悔が押し寄せる。
どうして兄を死なせてしまったのだろう。
どうして両親が悲しい思いをしなければならないのだろう。
もし、僕が兄と最初から仲良くしていなかったらよかったのだろうか。
もし、僕が家族に愛されたいなどと思わずにいたらこの胸の痛みは防げたのだろうか。
それから僕は相手にあまり興味を持たなくなった。
もうあんなに胸が痛い思いをしたくなくて逃げ出したのだ。
このままではいけないと思い、相手に不快感を与えないために笑うことを覚えた。
そして、いつの間にかここまできていたのだ。
根本的な部分である自分が傷つきたくないという気持ちは変わらずにここまで生きてきた。
その筈なのに、今、目の前にいる人物に僕は近づこうとしている自分に気づいて迷っていた。
「光は無関心じゃないよ」
再び恋がそう言ってから僕の頬に手を伸ばす。
僕は反射的にその手を握りしめた。
「僕は、無関心、ですよ」
そして恋の手を放した。
「……っ」
恋は立ち上がってスタスタとどこかへ足早に去って行った。
僕は逃げてしまったのだ。
「馬鹿、だな」
一人になってから僕はポツリと自分に対してそう呟いた。
ここまで読んでくれてありがとうございます!!!




